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いつか景観になる看板をつくりたい(76/100回)

職業柄、街を車で走っていると看板を目で追ってしまいます。

ロードサイドの看板はとても大きく目立ち、車の中からでもすぐにお店を見つけられてすごいなあといつも感心してしまいます。

それだけ視覚的に訴えてくる力が強いので、疲れている時は情報が多すぎる幹線道路よりも、静かな裏道を通ることもあります。

訴求力が強い看板は役目としては正しいのかもしれませんが、場合によっては暴力的だなあと感じてしまいます。


僕が好きなのは幹線道路から一歩入った生活道路沿いの景色です。
随分減ってはしまいましたが、個人商店が軒を並べる路地や、昔ながらの景観を守るために看板に制限をかけている地区は見ていて楽しい。

その場所で実際に住んだり、商売をしてみれば大変かもしれませんが、街に個性があることは訪れる理由になるのだなと思います。

最近個人の住宅にお店を構える方が増えています。
自宅ショップだとか、プライベートサロンのような形態の小さなお店。

そんなお店からのご依頼の際によく言われるのが

「目立ちすぎませんか?」

ということです。

自宅ショップの場合、住宅地にあることが多いので、お店でありながら普段は家族の生活の場でもあります。

だからこそ幹線道路沿いのチェーン店が揚げる看板とは違うニーズがあるなと感じます。

看板は目立つことと集客のためだけにあるのではなく、景観でもあるからです。


ヨーロッパの古い街並みや、京都のような歴史のある街を見て感じるのですが、看板は時に街の風景になります。
地域の人々に愛されるお店は街に溶け込み、お店自体が地域を作ります。

歴史ある料理屋の店主が「お店があることでその通りが明るくなる。だから店を開け続ける」と言っていました。

店があることでただ電灯が増えるというだけでなく、人の通りが増え、話し声が聞こえることで街全体が明るくなる。
それがお店のたくさんある存在意義のうちの一つなんだと思います。


僕は看板を作る仕事をしながらも、大きな看板が好きではありません。
それは人の無意識に無理やり入ってくるような暴力性を嫌っているからです。

だからこそ景観になる看板作りをしていたいと思います。

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