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「試合を決めたトランジション」20-21 PL 第19節 アーセナル×ニューカッスル レビュー

今節でプレミアリーグも折り返しとなる第19節。アーセナルは前節クリスタル・パレス戦に引き分けたことで連勝はストップ。暫定順位は11位。今節で勝利すれば8勝3分8敗となりシーズン半分を終えた時点で星を五分に戻せる試合。
対するニューカッスルは、直近6試合で勝利が無く不調続き。ここまで17試合を消化し勝ち点19の暫定15位。アーセナルとしては、ここで勝利を収めてシーズン後半戦に良い形で入りたいところである。

■ チーム概要

【HOME】
・アーセナル(監督:ミケル・アルテタ)
フォーメーション:4-2-3-1
【AWAY】
・ニューカッスル(監督:スティーヴ・ブルース)
フォーメーション:4-4-2

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アーセナルは前節不在の影響が大きかったティア二ーが復帰。また、前節に途中出場で調整していたトーマスも遂にスターティングメンバー復帰した。更に前節から右SBをベジェリンからセドリックに変更して今節に挑む。

ニューカッスルは、不調続きということで今節は大幅にメンバー変更。前節から8名を変更することに。フォーメーションも通常採用している5-4-1の形から4-4-2に変更し、新たな試みで今節に挑む。

■ 前半:トランジションで優位に

アーセナルは数名の選手が前節から入れ替わったものの、ゲームプランはここ数節と同様。ビルドアップは、CBとCHが2-2、または3-1の形で行い、両SBを高い位置へ押し上げ。両SHがハーフレーンへ絞り、トップ下のスミス=ロウ、ワントップのラカゼットと共に5レーンで段差をつけつつミドルサードからファイナルサードへボールの前進を試みる。右サイドはスミス=ロウ、サカ、セドリックのコンビネーションを軸に突破を図る。左サイドは空いたスペースをティアニーが突破。左右で異なる狙いを見せるアーセナル。

ニューカッスルは、4-4-2のシステムのまま守備セット。基本はブロックを敷いた撤退守備で、2トップのプレッシングは弱め。中央へのコースは制限するものの前進そのものは積極的に遮るといったことはなかった。

アーセナルはCBとCHが2-2の形でビルドアップする際には、CH2枚がニューカッスルのFW-CHのライン間でCBからのボールを引き出す。また、ジャカが左落ちした3-1の形では、ニューカッスルのFW脇からボールを前進。ニューカッスルが撤退守備だったこともあり、ミドルサードへ容易に前進できていた。

撤退守備のニューカッスル。狙いはブロック守備からのカウンター。トランジションで極力簡単に前線の2枚にロングボールをあてて、セカンドボールを回収してボールをキープできればサイドが駆け上がる。フィニッシュでは大外からのクロスを高さのあるキャロル、ウィルソンに合わせる狙いが多く見られた。

ニューカッスルが徹底守備を選択したこともあり、アーセナルがボールを保持し、試合を優位に進めていく。そして、アーセナルが優位に立てたもう一つの理由がトランジション。ボールロストのネガティブトランジションではプレッシングの強度が高く、すぐさまボールを回収。二次攻撃三次攻撃へとつなげていた。プレス強度を高く保てたのは、前後左右の選手の距離感が近かったことも一つの要因。距離感が近く周囲の選手もサボらない。これによりネガティブトランジションで優位に立ち、ボールを保持し続けられていた。

また、ボールを奪取した際のトランジション、いわゆるポジティブトランジションでもアーセナルは一つの狙いを持っていた。それはニューカッスルの右サイド裏に空いたスペース。ここにオーバメヤンを攻め残りさせ、ボール奪取後すぐにこのスペースを狙う。特にトーマスが前を向いた際にはこのスペースを上手く使えており、ゴールへ迫っていた。

両方のトランジションで優位に立ったアーセナルが終始試合をコントロール。しかしファイナルサードの崩しの部分、フィニッシュ精度が不足しておりゴールを奪うまでには至らず。そのままスコアレスドローで前半を終えた。

■ 後半:実を結んだ前半の狙い

互いに交代選手はなし。狙いも前半と変わらず、似た展開で後半がスタートする。試合をコントロールするものの、最後の局面でもうひと押しがほしいアーセナル。そろそろゴールを奪っておかないと流れが変わりかねない。

そんな心配をよそに、アーセナルが待望の先制点を上げる。
時計は50分、ニューカッスルのコーナーキックから多くの選手がアーセナル陣地にいる中、ニューカッスルのロングフィードからのセカンドボールをラカゼットが回収し隣にいたトーマスへ。トーマスは目前にいた相手選手をさらっといなして左サイド高い位置に残っていたオーバメヤンへ展開。前半から何度も見られた形だ。オーバメヤンはそのままドリブルで仕掛け、相手を揺さぶりながらペナルティエリアに入ったところで左足を一閃。これがゴールに突き刺さり、見事なカウンターからアーセナルが先制ゴールを奪取。今シーズン不調のオーバメヤンだが、良い状態のオーバメヤンを彷彿とさせる素晴らしいゴールが貴重な先制点となった。前半から何度も狙っていた形がようやく実を結んだ得点シーンだった。

さらに先制ゴールからわずが5分後、アーセナルが追加点を奪う。
ニューカッスルが久々のボール保持から攻め込んだものの右サイドからのクロスはそのままGKのレノの元へ。アーセナルはそこから素早くスタート。自陣で中央のトーマスから左サイドのオーバメヤンとつなぎ相手陣地へ前進。ニューカッスルの帰陣が遅れる間に縦のスミス=ロウへ。サイドで相手選手と1対1になったスミス=ロウがドリブルで仕掛ける。上手く相手の体重移動の逆をつき半身交わした状態から中央マイナスのスペースへグラウンダーのクロス。中央でフリーになっていたサカがゴールへ流し込みアーセナルが追加点。1点目と同様、きれいにカウンターが決まった2点目。また、スミス=ロウとサカのコンビネーションの良さも光る良いゴールだった。

2点のリードで余裕の出たアーセナル。さらに試合をコントロールし、パス回しもリズムよく、左右から深い位置まで崩し追加点を狙う。

そして77分、アーセナルがボール保持から右サイドへ展開。サカ、セドリックのコンビネーションで深い位置へ突破しペナルティエリアへ侵入。セドリックが早いグラウンダークロスを中央へ折り返し、オーバメヤンがこれを難なくゴールに流し込み追加点。アーセナルが試合を決定づける3点目。

試合はこのまま3-0で終了。ニューカッスルが対応する間もなく立て続けに追加点を奪ったアーセナルが見事に勝利。終始試合をコントロールした快勝のゲームだった。

■ 試合結果

Arsenal 3 × 0 Newcastle

■ 得点
50分:オーバメヤン(アシスト:トーマス)
60分:サカ(アシスト:スミス=ロウ)
77分:オーバメヤン(アシスト:セドリック)

■ 交代
67分:トーマス → エルネニー
69分:キャロル → マーフィー
78分:ロングスタッフ → ヘンドリック
79分:オーバメヤン → ウィリアン
81分:スミス=ロウ → マルティネッリ
87分:アルミロン → アンダーソン

■ 試合ハイライト

■ あとがき

前半は相手に深く下がってスペースを埋められ、相手DFを動かせずに苦労したが、後半にカウンターからのビッグチャンスを決めきれたのは非常に大きかった。どれだけ相手が引いても1試合に何度かは訪れるこういった数少ないチャンス。それをきちんとモノにできるかどうかは、勝ち点を積み上げていく上で外せないポイントになる。そういった点で、今シーズン不調により決定力が下がっていたオーバメヤンにゴールが生まれたのは今後にとって良い傾向だろう。

これでシーズン折り返し。好調な出だしと思われた今シーズンだったが、一度調子が下降しチーム崩壊も感じさせるほど不調に陥ったアーセナル。ヤングガナーズの活躍をきっかけに、ビッグロンドンダービーに勝利してから盛り返し、チームとして攻守ともに少しずつ形が出来てきたのは好材料。

さらに怪我から復帰し、試合にも出られるようになってきたトーマスやマルティネッリ、新加入選手でありながらシーズン前半戦を後ろから支えたマガリャンイス、そういった選手が現状のチームに加わってくることを考えるとこれからが非常に楽しみである。

反対に心配な点は、ぺぺ、ウィリアンといった調子を落としている選手。チームのゲームプランとしても上手く組み込めていない感じのする両選手。能力そのものはあると信じたいし、ここからのカップ戦起用を軸に復調してほしいところ。また、ティア二ー、スミス=ロウのポジションに適切なバックアップが不在なのも心配な点。ここは冬の移籍シーズンで獲得を目指して欲しい。

今節、勝利を収めたことでシーズン半分を終えて勝ち星も五分まで復調。順位も見事に暫定10位と真ん中に位置している。順位は低いものの上り調子でシーズンを折り返せたのは好材料。ここからの巻き返しを期待したいところだ。


見出し画像 引用元:アーセナル公式HP
ハイライト動画:アーセナル公式 You Tube
フォーメーション画像作成:TACTICALista