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「前後半で入れ替わった主導権」20-21 PL 第21節 アーセナル×マンチェスター・ユナイテッド レビュー

前節でサウサンプトン相手に逆転勝利を収め、このままの勢いで連勝と行きたいアーセナル。ただ、今節の対戦相手は、今シーズン首位にも立ったことのあるマンチェスター・ユナイテッド。前節で最下位のシェフィールド・ユナイテッド相手にまさかの黒星を喫したものの、順位は2位に位置している上位チーム。そう簡単に勝たせてくれる相手ではない。チェルシー相手に快勝を収めてからここまで数試合、ボトムハーフに沈む相手に勝利を重ねてきたアーセナルとしては、久々の上位陣との対戦となるこの一戦。今のアーセナルがどれだけやれるのか。今後の試金石となる試合でもある。

プレミアリーグでの前回対戦時レビューはこちら

■ チーム概要

【HOME】
・アーセナル(監督:ミケル・アルテタ)
フォーメーション:4-2-3-1
【AWAY】
・マンチェスター・ユナイテッド(監督:スールシャール)
フォーメーション:4-2-3-1

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アーセナルは、ティアニー、セバージョスなど負傷離脱メンバーは前節に引き続き今節も欠場。また、オーバメヤンも家族の事情により離脱が続いており今節も不在。さらに、ここまでチームの中心選手として獅子奮迅の活躍を見せてきたサカが腰あたりに違和感があるとのことで大事を取って欠場となった。ティアニー、サカなど、ここ数試合の好調アーセナルを支えてきた中心選手を欠いてマンチェスター・ユナイテッドに挑むことになった。不安な点がある一方でポジティブなニュースも。レアル・マドリードからレンタルで獲得したウーデゴールが早速ベンチ入りした。

■ 前半:試合をコントロールした選手

互いに4-2-3-1のフォーメーションで試合に挑む両チーム。マンチェスター・ユナイテッドは、試合開始から積極的に前線からプレッシング。カバーニ、フェルナンデスがGK、CBへ激しくプレスを行いアーセナルのビルドアップに自由を与えない。アーセナルはジャカが落ちる3バック可でプレス回避からラカゼットやスミス=ロウへ縦パスを狙うものの、これをマンチェスター・ユナイテッドのCH2枚、フレッジとマクトミネイがチェイシングしてボールを奪取。トランジションからのセカンドボールもこの2枚がよく回収しており、アーセナルに前進を許さない。マンチェスター・ユナイテッドがボールを保持し、試合の主導権を握っていく。

マンチェスター・ユナイテッドのビルドアップは、CB2枚、CH2枚が2-2の形でボール保持。アーセナルがラカゼット、スミス=ロウの2枚でプレッシングからパスコースの制限を狙うものの、SBをCHの高さに置く2-4の陣形(左右それぞれに三角形を作る)でサイドへの逃げ道を作りながら前進を試みる。ここでもマクトミネイが周囲の状況を的確に判断し、ボールを循環させつつアーセナルのプレスを無効化することに一役買っていた。

ただ、ここまで攻守に渡って試合をコントロールし主導権を握る活躍を見せていたマクトミネイが体調不良を訴えはじめる。仕草から見るに腹痛だろうか。試合中に薬を服用するなど対応するものの、結局37分にピッチを後にすることになった。交代で入ってきたのはマルシャル。マルシャルは左SHに入り、左SHだったポグバがマクトミネイの代わりにCHへ移動する。

マクトミネイが下がったものの、勢いそのままに試合の主導権を握ったマンチェスター・ユナイテッド。ミドルサードからは左SHのポグバが中央へ絞り、右SHのラッシュフォードは前へ移動しWG化。2列目が全体的に右へスライドし、攻撃のタクトを振るうトップ下のフェルナンデスが右寄りにプレーすることで自然とそのサイドからの突破がメインとなる。それに対峙するのがマルティネッリとセドリック。何度かマークの受け渡しがうまくいかず突破からのクロスを許す場面もあった。また、特に危険だったのが逆サイドからのクロス対応。セドリックがボールウォッチャーになってしまうことが多く、32分にはワンビサカにフリーでヘディングシュートを打たれ、43分にはラッシュフォードにあわやフリーでシュートを打たれそうになる場面も。結果、アルテタは後半開始からここを手当することになる。

マンチェスター・ユナイテッドにボールを保持され、アーセナルは主導権を握れない。ただ、ここで崩れずにしっかりと守れるようになったのが今のアーセナル。撤退守備時はSHも割り切ってDFラインまで下がって5~6バック化。また、ただ守るだけでなく、何度かボール奪取からのカウンターで相手ゴールへ迫る。しかし、対人で圧倒的な強さを見せるマンチェスター・ユナイテッドのDF陣。結局、互いにゴールを割ることは出来ず、スコアレスのまま前半終了となった。

■ 後半:ひっくり返った主導権

後半のスタートからアルテタは、マルティネッリを下げてウィリアンを投入。前半で何度か決定機を作られた左サイドに手当を施す。結果、後半はこの左サイドから相手陣地への侵入に成功する頻度が増えはじめる。ただ、これはウィリアン投入による効果というよりは、マクトミネイが下がったことによる恩恵のほうが大きように見えた。

マクトミネイが下がったことでそのポジションに入ったのはポグバ。前半、アーセナルの縦パスに対して何度もボールを回収していたマクトミネイに対し、ポグバは縦パスに対しての反応が鈍くボールを回収しきれない。デュエルの強さやボールの扱いには秀でるポグバだが、守備面では準備不足だったり強度不足が目立ったこの試合。マンチェスター・ユナイテッドとしては、ここが一つの穴となっていた。アーセナルはこの穴を突き、ラカゼットやスミス=ロウがそのポグバの周辺でボールを引き出すことに成功。徐々に相手陣地深くまで侵入する回数が増える。

次第に試合の主導権はアーセナルへ。前半とは反対に、ボールを保持しながら相手陣地へ攻め込むアーセナル。それに対してカウンターからの一発を狙うマンチェスター・ユナイテッドという構図に。

ポグバの周辺に活路を見出したアーセナルだったが、そこからのもう一歩が足りなかった。特に左サイドは、ウィリアンが足元でボールを欲しがるタイプで、裏抜けが少なくDFラインを突破できない状況が多く見られた。それに加え、SBのセドリックは右利きのため左サイドだと逆足になり、オーバーラップを仕掛けても精度の高いクロスは期待できないことから大外を駆け上がる頻度も少なかった。結果論ではあるが、逆足同士の2人を縦に並べるよりも、ペペを左サイドに持ってきてセドリックと組ませたほうが良いように思えた。

結局、互いにゴールへ迫るチャンスを作り出した見ごたえのある試合だったものの、どちらも得点には結びつかず、このまま試合終了。スコアレスドローとなった。

■ 試合結果

Arsenal 0 × 0 Manchester United

■ 得点
なし

■ 交代
37分:マクトミネイ → マルシャル
45分:マルティネッリ → ウィリアン
80分:ラッシュフォード → グリーンウッド
83分:スミス=ロウ → ウーデゴール
90+4分:ラカゼット → エンケティア

■ 試合ハイライト

■ あとがき

前半はマンチェスター・ユナイテッドが主導権を握り、後半はアーセナルが主導権を握る。前後半で攻守が極端に入れ替わったこの試合。スコアレスドローに終わったものの互いにゴールへ迫り、少しのきっかけでどちらが勝ってもおかしくない好ゲームだった。

個人的に好印象だったのはペペ。特に守備面での向上を感じた。今までは被カウンター時に帰陣が遅かったり、パスコースが切れていなかったりと、守備面での穴になる場面が多かったが、この試合では違っていた。前線ではパスコースを切りながら強度の高いプレッシング、自陣では深い位置まで戻り何度もパスカットを成功させ、トランジションではプレスバックからボールを奪取し、何度もチームを助けていた。あとは得点さえ継続して取れるようになれば申し分なし。この試合でも何度か惜しいシーンがあったので、なんとかゴールの感覚を取り戻してほしいところだ。

また、この試合は何度もパスミスがあり、調子を落としている様子だったトーマス。彼のミスから何度かピンチを招いたシーンもあったが、彼がいることで中央から縦、または斜めに早く展開することに成功するシーンが多くあり、間違いなく攻守における軸となっている。ジャカとのバランスも非常に良く、この2人が今シーズン継続して出場できればチームとしても安定しそうだ。

アーセナルとしては、久々の上位陣との対決となり今後の試金石となる試合だったが結果は引き分け。内容も1試合をトータルで考えれば引き分けにふさわしかった。オーバメヤン、サカ、ティアニーなどレギュラークラスの選手を数名欠いた状態であることを踏まえると、2位のチーム相手に互角にやりあえたのは好材料と捉えても良いかもしれない。

ただ、強豪相手だと点を取り切れない、勝ちきれない、ということも現状を良く表しているとも言える。CL出場権獲得を目指すのであれば、こういった僅差の試合に勝ちきっていけるようにならなければならない。

次節は中2日でウルヴス戦。ハードなスケジュールの中で厳しい試合が続くが、1試合1試合しっかりと勝ち点3を積み上げていきたいところだ。


見出し画像 引用元:アーセナル公式HP
ハイライト動画:アーセナル公式 You Tube
フォーメーション画像作成:TACTICALista