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「積み上げが消えた試合」20-21 PL 第9節 リーズ・ユナイテッド×アーセナル レビュー

インターナショナルマッチウィーク明けとなるプレミアリーグ第9節は、エランド・ロードで戦うアウェイのリーズ・ユナイテッド戦。プレミアリーグが休みだったとはいえ、代表選手が多いチームは逆にハードなスケジュールとなるためコンディションの調整に苦労させられる。アーセナルもそういったチームの一つ。
今節の対戦相手であるリーズを率いるのは戦術マニアとして知られる”エル・ロコ”マルセロ・ビエルサ。アルテタの師であるペップも師と仰ぐ名将だ。そんなビエルサが率いる注目のリーズだが、ここ2試合はいずれも1-4で敗戦しており順位もボトムハーフに沈んでいる。
互いにボトムハーフに沈む今の順位から抜け出すためにも勝ち点3が欲しい両チームの対戦となった。

■ チーム概要

【HOME】
・リーズ(監督:マルセロ・ビエルサ)
フォーメーション:4-1-4-1
【AWAY】
・アーセナル(監督:ミケル・アルテタ)
フォーメーション:4-2-3-1

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前節で負傷交代したトーマスは怪我からまだ復帰できず。そしてエルネニーとコラシナツはインターナショナルマッチウィーク中にCOVID-19陽性でこの試合は欠場。選手層が薄い中、なかなかに厳しい陣容である。そんな中、アーセナルは今までの3バックメインから4バックメインのフォーメーションに変更。ウィロックがトップ下に入りプレミアリーグ初出場。そしてオーバメヤンを1トップにした4-2-3-1で今節に挑んだ。

対するリーズは、前節で3-3-3-1のフォーメーションを採用したようだが今節は4-1-4-1を採用。中心選手の1人であるフィリップスが怪我から4試合ぶりの復帰となった。

■ 前半:がっちり噛み合うフォーメーション

アーセナルは今まで採用してきた3バックから4バックへの可変フォーメーションをやめて、守備でも攻撃でも4バックをベースとしたフォーメーションに変更。ビルドアップは2センターバックとジャカ、セバージョスの4人で四角形を作ってスタートする形。

対するリーズはマンマークディフェンスをベースに守る。ジャカ、セバージョスの2センターに対して、クリヒ、ダラスがきっちりマークにつく。リーズはインテンシティも高く、ネガティブトランジションでもチームとしての強さを発揮。ビルドアップから縦に入ってきたパスにも厳しくチェックしアーセナルの選手に前を向かせない。

中央の守備が固いリーズの守備に対し、なかなかボールを前に進められないアーセナルは、これまでのショートパスを軸とした自陣からのビルドアップを減らし、この試合ではゴールキックの際に前へ蹴る事が多かった。それだけリーズのフォアチェックの強度に怖さを感じていたのだろう。ショートパスから繋いでも中央は打開できないためサイドから迂回せざるを得ず、個に頼る単発の攻撃に終始していた。

リーズのビルドアップは、2センターバックとフィリップスが中心。両サイドバックを高い位置へ押し上げる。アーセナルの前線4枚のプレッシングはあまり機能せず、簡単にファーストディフェンスラインを突破されていた。ビルドアップから右サイドのハフィーニャを出口として前進。そのまま右サイドで押し込むか逆サイドへ展開してフィニッシュへ繋げる形が多く見られた。

前半15分を過ぎたあたりからは、リーズが徐々にボール保持率を高めゲームを支配し始める。アンカーのフィリップスを起点として左右にボールを散らしながらアーセナル陳内へ。右だとエイリングとハフィーニャ、左だとアリオスキとハリソン、そこに中盤のクリヒかダラスが絡む。左右それぞれ3人のユニットをベースとしてサイドを突破する狙いに見えた。

アーセナルは4-2-3-1で後ろが重たく、リーズは4-1-4-1で前後が同数。中盤とサイドがしっかりと噛み合うので自然と前に枚数が多いリーズの方が優位になっているように見えた。

アーセナルは、サイドを中心に攻めようとするがリーズと比べるとユニットの枚数が少なく連携もままならない感じ。何とか個で打開してファイナルサードまで進めてもウィロックの場所で詰まったり、サイドからはクロスが跳ね返されたりと単調な攻撃で終了する場面が多かった。可能性を感じたのはぺぺのカットインからのシュートぐらい。

前半も25分を過ぎたあたりからは、アーセナルはサイドを中心に押し込まれ終始防戦一方に。ボールの保持率もシュート数もリーズに圧倒されたまま前半が終了。アーセナルとしては何とか失点せずに前半を終えることが出来たものの、良いところなくハーフタイムを迎えることとなった。

■ 後半:数的不利でやるべきことが明確に

後半スタートからアーセナルは選手交代。ウィリアンが前半のうちに負傷していたようでネルソンと交代。ポジションはそのまま左サイドに入っていた。

そして後半が始まってすぐの49分、この試合の行方を大きく左右するジャッジが下される。アリオスキのマンマークにイライラしたぺぺが相手に頭突きをした事で一発レッドカードで退場に。アリオスキの芝居がかった大袈裟なリアクションもいかがなものかと思うが、相手の挑発に乗ってしまったぺぺの浅はかな行動はいただけない。チームとしてなかなか打開できない中で、ドリブルという武器を持ち、個で打開出来る可能性を秘めていたぺぺがここで退場となったのは非常に残念だった。

一枚少なくなったアーセナルは、トップ下のウィロックを下げてサカを投入。サカは左のサイドハーフに、ネルソンが右のサイドハーフに入り4-4-1の布陣に変更。今までフィリップスにマンマークでついていたトップ下が不在になった事でフィリップスに自由を与えることになるが、流石にそれは危険という事で、フィリップスにはフォワードのオーバメヤンがマークにつく。これによりアーセナルは全体的にブロックを下げて守る形に。

これで逆にやるべき事が明確になったアーセナル。ブロック守備でしっかり守り、チャンスがあればカウンター狙いに。逆にリーズは深く引いたアーセナルを崩すのに苦労し徐々に前がかりに。そんな中で輝きを見せたのは交代で入ったサカ。カウンターから左サイドを突破して数的不利な中であわやというシーンも作り出していた。

リーズはロドリゴ、ポベダと攻撃的な選手を投入してアーセナルゴールのこじ開けを狙う。しかし、マガリャンイスの体を張ったブロック、レノのビッグセーブもあり、なんとかゴールを死守するアーセナル。

終了間際、サカの負傷でメイトランド=ナイルズを投入。押し込まれる苦しい時間が続いたものの、何本かリーズの際どいシュートがゴールの枠に当たる幸運もあり、アーセナルは最終的に無失点に抑える事に成功。ゲームの結果はスコアレスドローとなった。

■ 試合結果

Leeds United 0 × 0 Arsenal

■ 得点
なし
■ 交代
45分:ウィリアン → ネルソン(負傷交代)
57分:ウィロック → サカ
70分:エイリング → ロドリゴ
80分:ハリソン → ポベダ
90+3分:サカ → メイトランド=ナイルズ(負傷交代)

■ 試合ハイライト

■ ペペの退場に想うこと

ペペの退場で良くも悪くも戦い方を変えざるを得なかったアーセナル。数的不利になってから方が相手ゴールに迫れていたのはなんとも皮肉なものだなぁと感じた。もちろんそれだけピンチも増えていたけども。

ペペの退場が無ければ勝ち点3を取れていたかと言うと、そう簡単な話でもなさそう。前半は終始押し込まれていたし、ボールポゼッションもシュート数もリーズに圧倒されていた。

ただ、ペペが前を向けた時にはアリオスキをあっさりと抜くドリブルも見せていたし、アリオスキのところはリーズにとってディフェンスの穴になっているように見えた。そのため、ここが一つの活路になっていた可能性はある。それだけにこの退場は本当に惜しまれる。

ペペには猛省してもらい、再起をはかってほしいところだ。

■ 積み上げが消えた試合

後半の頭に一人が退場。アウェイでの試合。という表面的なところだけを見れば勝ち点1は悪くない結果なのかもしれない。ただ、個人的にこの試合は非常に残念だった。

特に残念だった点は、今までの積み上げが見れなかったこと。

アルテタアーセナルになってから長く取り組んできた擬似カウンター。ゴールキーパーを含むディフェンスラインでパスを回しながら相手を引き出し、中盤にスペースを空けてそこから一気に加速するこの狙いがこの試合では見られなかった。

これにはワントップがラカゼットからオーバメヤンに変わったことも影響しているかもしれない。ラカゼットはゼロトップのように中盤へ降りて体を張りつつビルドアップの出口になることが多い。この試合ではオーバメヤンにゴール前でフィニッシュに絡ませるために4-2-3-1のフォーメーションを採用したように見えたが、肝心のトップ下に入ったウィロックがビルドアップの出口になることが出来ず、前後のリンク役が不在になってしまっていた。

また、リーズのハイプレス強度が想定よりも高かったこと、雨の影響で思うようにパスが繋がらなかったことなど、実行できなかった理由が他にもあるのかもしれないが、各選手たちが自身を持ってプレーしているように見えなかったのは残念だった。

■ あとがき

次節はミッドウィークにヨーロッパリーグのグループリーグを戦った後、ウルブス戦。さらにその翌週には、アウェイのノースロンドンダービーが控えており厳しい戦いが続く。アーセナルとしては、そろそろ調子を上げていきたいところだ。

無理矢理にでも良いところに目を向けるなら、前節は大量失点したものの引き続き守備の堅さはあり失点数は少ない。チームとしての戦い方はもちろんあるが、マガリャンイスの獲得が非常に大きかったと感じる。

ただ、少なくとも1試合に1点は取らないと勝ち点3は積み上げられない。今のアーセナルに足りないのは得点だ。引き続き土台から論理的に相手を崩した得点を狙い続けるのか、個の力を活かした得点を狙うのか、はたまた異なるゲームモデルを持ってくるのか。今後のアルテタの判断に期待したい。


見出し画像 引用元:アーセナル公式HP
ハイライト動画:アーセナル公式 You Tube
フォーメーション画像作成:TACTICALista