#74 本の感想2024年3~5月

○『メメンとモリ』/ヨシタケシンスケ
絵本を通してこの言葉の意味は?この絵の意味は?と考えることになるとは思いませんでした。
読書会の課題本になったことがきっかけで手に取った絵でしたが、出会えて良かったなと思いました。
いろいろ考えた結果、そんなに難しく考えなくてもいいんじゃないかと思いました。
子どもが読んだら、単純に絵がかわいいとか、楽しかったみたいなシンプルな感想になると思います。
大人になるにつれていろいろなことを考えすぎてしまいますが、単純に楽しいとか面白いという感想で充分なのではないかなと。
絵本1冊でここまで考えさせられるのはすごいことです。

○『わたしに会いたい』/西加奈子
著者らしい生々しい表現が刺さる短編集。
『Crazy In Love』は自身の体験を書いたものなのかな。
気持ちに余裕があるときに読むのがオススメだと思います。
いつかは絶対に向き合うべき本です。

〇『訂正する力』/東浩紀
本書を読みながら、寛容な気持ちをなるべく持ち続けたいと思いました。
右とか左とかに偏りすぎると平和にはならないような気がします。

〇『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』/小原晩
ダウ90000の蓮見翔さんきっかけで知った著者のエッセイ。
仕事、家族、生活に関することが書かれていますが、結構大変な人生を歩んでいるんだなと感じます。
そんな大変な状況を著者は軽やかな文体で綴っているので、非常に読みやすいです。
決して自虐的ではなく、大変な状況を受け入れてどこか客観的に見ている感じでしょうか。
仕事をさぼっていつもの場所でいつもの唐揚げ弁当を食べようとしたら、「ここで唐揚げ弁当を食べないでください」という貼り紙を見つけて慌てて逃げ出す描写。クスッと笑える内容だなと思います。
著者の本はこれから読み続けていきたいですね。

○『橙書店にて』/田尻久子
熊本市で書店を営む著者のお客さんとのエピソードをまとめたエッセイ集。
村上春樹の朗読会が行われたり、常連のお客さんとの話があったりと自分も橙書店にいるお客さんの1人のような気分になります。
本屋の何気ない日常が実は特別だったり心に残ったりします。
熊本に行った際には是非とも立ち寄りたい書店です。

○『これが生活なのかしらん』/小原晩
著者2作目のエッセイ。
ひとり暮らし、三人暮らし、実家暮らし、寮暮らし、ふたり暮らしと章が分かれており、著者の生活遍歴が綴られています。
ちょっと癖のある家族、ブラックな会社を渡り歩いてきた話などには悲壮感はなく、どこかクスッと笑えてしまう文章になっています。
個人的にはブラックな職場の話が面白かったです。
文章に起こしてクスって笑える話に昇華させることで、大変なエピソードを浄化しているような気がします。
著者は文章を書くことで救われているのだと思います。
合間に出てくるゆる~い挿絵も良い感じです。

○『将棋界の超新人類 これがチャイルドブランドだ!』/田中寅彦
平成元年に発売された当時の将棋界の若手事情を綴った本。
メインに取り上げられている羽生善治、森内俊之、佐藤康光、村山聖の4人。
村山は若くして急逝しましたが、将棋界を超えて大きな影響を与え続けています。もちろんタイトル挑戦などの十分な実績も残しました。
羽生は七冠制覇やタイトル通算99期などで、現在は将棋連盟の会長。将棋に興味がない人でも名前は知っているレベルの人物。
森内は永世名人の称号を持つ超一流棋士。
佐藤も名人獲得や将棋連盟の会長を務めたこともあります。
当時天下を取るかもしれないと注目した4人全員が大きな実績を残していることを考えると、著者の先見の明はすごいなと感じました。
少し内容にクセはあるかもしれませんが、将棋ファンなら読んで損はない内容だと思います。

○『ラジオ・ガガガ』/原田ひ香
ラジオをテーマにした短編集。
『オードリーのオールナイトニッポン』『伊集院光 深夜の馬鹿力』といった実在する番組が出てくるところも興味深いです。
ケアハウスに入所している深夜ラジオリスナーの老女が主人公の『三匹の子豚たち』。
深夜ラジオの世界は一人でひっそりと楽しみたいけど、共有できる何かがあるのもまた興味深いことです。
老人になってもひっそりとラジオを楽しみ続けたいなと思いました。
ラジオはどんな人にも寄り添ってくれる特別な存在です。

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