素敵なマダムの素敵なふるまい

先日、とある個展を見に行くために、

デパートを訪れた。

会場は9階なので、エレベーターに乗る。

扉を閉めて良いか、周りをキョロキョロ確認すると、

ベビーカーを押しているお母さんと、

シックな装いのマダムが乗ってきた。

「あら、2人いるのね！」

驚いたようにマダムがお母さんに話しかけた一言。

「そうなんです」とお母さんがにこやかに微笑む。

ん？と思い、ベビーカーをよく見てみると、

実は前後に1人ずつ、2人乗っていたのだ。

双子ちゃんかな。それとも年子くらいかな。

1人はとっても気持ちよさそうに寝ていて、

もう1人はきっとこちらが気になるのだろう、

じいっと見つめたり、お母さんの方を見上げたり。

その様子がなんだかとても可愛らしくて

「可愛いですね」と思わず会話に参加。

「本当に、可愛いわねえ」とマダムもにっこり。

お母さんもどこか嬉しそうで、

エレベーター内の空気がふわっと緩んだ。

2階でお母さんと子供たちが降りていき、

エレベーターの中にはマダムと私だけ。

すると、マダムはこちらを向いて

「とっても素敵なスカートね」というのだ。

思いがけない言葉に驚いて、でも嬉しくて、

ありがとうございます！と返すと、

マダムは微笑んで、次の階で降りて行った。

時間にすればほんの1、2分の出来事。

でも、たまたま乗り合わせた人たちに、

さらり、温かい言葉をかけてくれたマダムのおかげで

ほんの1、2分が、素敵な瞬間になった。

あんな風にふるまえる大人に、なりたいものだ。