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#10分で読める小説「童貞あるじ、大家族世帯主に」



第一章: 出会いのアプリ

30歳のサラリーマン、慎一(しんいち)は、仕事一筋の毎日を送っていた。彼は人付き合いが苦手で、女性経験も一度もないまま童貞を貫いていた。友人の勧めでマッチングアプリを使い始めたものの、最初はほとんど反応がなかった。

ある日、アプリの「おすすめ」機能で「アリス」という名前の女性とマッチング。プロフィールには「シングルマザー、24歳」とだけ書かれており、子どもについての説明も特に記載されていなかった。慎一は「ちょっと複雑かも」と思いつつも、メッセージを送ってみた。

第二章: 突然の引き渡し

アリスとのメッセージのやり取りが進む中、慎一は彼女との初デートを実現させた。初めてのデートでアリスは「実は、私がしばらく日本を離れることになって、あなたにお願いしたいことがあるの」と切り出した。慎一は驚きつつも、「何をお願いするんだろう」と耳を傾けた。

アリスはデートの後、慎一を自宅に招き、8人の子どもたちを紹介した。「これが私の子どもたちよ」と言って、一つ一つの名前と年齢を紹介した。慎一は目を丸くし、「急に海外に行かなければならないから、しばらくこの子たちをお願いできないかしら?」と提案された。

慎一は困惑しながらも、「これは一体どういう状況だ?」と思いつつも、アリスがさっさと準備を始めるのを見守った。アリスは「時間がないから、これから足早に出発しなければならないの。さよなら、慎一さん」と言い残し、子どもたちと慎一をそのまま自宅に残して、足早に消えていった。

第三章: 子どもたちとの生活

慎一は突然の状況に驚きながらも、8人の子どもたちと対面した。子どもたちは、どこか諦めた様子で「まあ、いつものことだし」といった態度で迎えてくれた。彼らは、母親がまた突然いなくなることには慣れている様子だった。

慎一は初めての子どもたちとの生活に苦戦しながらも、彼らとの関係を築くために奮闘した。毎朝、全員を起こして学校に送り、昼食を準備し、夜は宿題を見守りながら、彼らの問題を解決していった。特に童貞の慎一には子どもたちとのやり取りが一苦労で、育児に関する知識もほとんどなかった。

第四章: 新たな挑戦

慎一は、子どもたちとの生活を少しずつ学んでいった。彼は、子どもたちの個性に合わせた方法で接し、彼らとのコミュニケーションを楽しむようになった。例えば、長男のケンと一緒にサッカーをしたり、次女のミカとアートプロジェクトをしたりすることで、彼は少しずつ「親」としての役割を果たしていった。

それでも、最初は慎一の幼い育児のスキルに子どもたちは不安を抱くこともあったが、徐々に彼の誠実さや努力が子どもたちにも伝わり、関係は良好になっていった。

第五章: アリスの帰還

数か月後、アリスが日本に戻ってくると、慎一は8人の子どもたちとすっかり馴染んでいた。アリスは「おかえりなさい」と言いながらも、何事もなかったかのように子どもたちに接し、「本当に助かったわ。お礼としてこれを」と言いながら、慎一に少しのお金とともに「今後もよろしくね」とだけ伝えた。

慎一は驚きながらも、子どもたちと過ごした日々が楽しかったため、アリスが戻ってきたことで彼らと別れるのが少し惜しく感じた。アリスとの話し合いの結果、慎一は8人の子どもたちを正式に迎え入れる決意をした。

エピローグ: 新たな家族

慎一と8人の子どもたちの生活は、まさに新たな家族の形を作り上げていった。慎一はマッチングアプリで意図せず親になることとなったが、子どもたちとの絆が深まり、彼にとってかけがえのない存在となった。町中では「マッチングアプリで8人の子どもを育てる童貞男」として知られるようになり、その奇妙でシュールな物語が周囲の人々に笑顔と感動を届けた。

アリスとの関係は良好に保たれ、彼女もたまに子どもたちを訪れる程度に。慎一と8人の子どもたちは、楽しさと冒険に満ちた新しい家族としての日常を送り続けていた。


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