闘争領域の拡大 M・ウェルベック

惡の華の書評を書こうとしたらとんでもない書籍に出会ってしまい、二日で読了してしまった。
書かれている内容は純粋な人には劇毒にしかならないものだ。

劇中で語られている闘争領域とは社会内における、競争の事である。
それは時代と共に多様化し、拡大していく。容姿、資産、仕事、セックス、愛、これらの獲得の為の「闘争」の中にいるのだーーと言う思想がテーマの作品だ。アメリカンサイコに少しテーマが近いかもしれない

文章がめちゃくちゃ分かりにくい
調べて見るとウェルベックは詩も書いてるらしい。詩は抽象的な物を文字と言う記号に置き換える作業だ。
めちゃくちゃ分かりにくいので、要点を絞ろう。

ヴェロニカと主人公の関係
ティスランと主人公の関係
主人公はどうなってしまったのか?について話そう

まず前提として主人公が「分析」を死ぬ程嫌悪してる点を説明しなければならない。
分析は精神分析の事である。分析は行動原理を特定し、個人に名称を与える事だ。
分かりやすい例を出そう
何故あんな事をしたのか?→「かまって欲しいから」
なぜかまって欲しいのか?→「寂しいから」
なぜ寂しいのか?→「幼少の体験が原因かもしれない」
あなたは「かまってちゃん」です。

精神分析はこんな具合で進む
さらに追求して行くと寂しさとは一体何だろうか?生物には何故寂しさと言うシステムが備わっているのだろうか?と言う思索に進んで行く。
正に社会に全く必要の無い知的探究である。

分析は自分の行動原理を理解する事により、そこにちょっとした改善を加えたりすることが可能になってくる。だが危険も孕んでいる

粘土を想像して欲しい。無限に広がる粘土。
これを箱に詰める。箱に詰めると粘土は形を持つ。だが、箱に詰めた事によって箱の中以上に広がる事はない。
ちょっとわかりにくいかな
要は窮屈なのだ。苦痛になってしまうのである。

もう一つ補足説明すると主人公は金も持ってて社会でもうまく行ってるお人だ。
人の顔色を伺って自分の立ち位置を計算し、演技する事が出来る性格の悪そうな人であり、その立ち位置は徹底して観測者である。そして病んでる。うまく行ってるが病みまくっている。

物語が進むにつれて、どうも主人公が病んでるのはヴェロニカと言う過去の女が原因の様だ。
二年前の女を引きずっている。それ以降彼女は出来ていないらしい。どうもとんでもない女だったみたいだ。だが、主人公はこの女を殺したい程愛していた。
おそらく、主人公が分析への嫌悪は勿論、闘争領域と言う発想を得たのはこの女が原因だろう。
人間がこの様な探究に没頭する原因なんて大体見当がつく。


さて主人公はクラブでヴェロニカを思い出して、世界を嫌悪し、誰でもいいからぶっ殺したくなるのだが、そこで物語の山場となるティスランに殺人を勧めるシーンになる。
ティスランはブサイク過ぎて、28歳なのに童貞の可哀想な人だ。作中で何度もナンパして失敗している。その度に死にたくなっている。このシーンで主人公はティスランに追い打ちを掛けて絶望のどん底に落とす。
何故こんな事をしたのかイマイチわかりにくいかもしれない。

要は主人公は観測者の立ち位置を崩したくないのである。自分がやるとマズイのだ。だから他人にやって貰う。後は観測結果が欲しいと言う好奇心。最低の人格だ。

ティスランは最後まで可哀想だったが、2部の最後で主人公はティスランに対して敬意を表す様な言葉を送っている。
ここで分かるのは、主人公とティスランが同種と言う事だ。二人は完全な絶望の土俵際でのこったのこったしている人間と言う点では同種なのだ。
そしてティスランは生命力を見せたーー自己保存欲求が強いのだ。これに主人公は敬意を表している。
この観測結果が主人公にトドメを刺す事になったかもしれない。主人公は土俵の外へと押し出されてしまう。


かつて世界に興味を示していた少年は闘争領域と言う真理めいたものを手に入れた。そこから得たものは虚無と苦痛だった。
主人公は全くの敗残者なのだ。
主人公は何の闘争に負けたのか?
それは愛の獲得である。主人公はヴェロニカと言う愛の化身を失った。今後女性関係があったとしてもその背後には越えられない壁があり、その壁の向こうにはヴェロニカが立っている。

闘争領域にしろ弱肉強食にしろ、その世界観は特定の現代人にはアレルギーになりかねない思想だ。
当然主人公は病む。病んで逸脱する。世界への関心は完全になくなり、あるのは虚無と死と苦痛の世界と、そこに存在するくっきりとした孤独な自分のみーーしかも自ら死ぬ事は出来ない。
まだ死ねたウェルテル君の方が幸せかもしれないーー
彼は死んだ様な状態で生き続けるーー

下手な悲劇よりよっぽどひどい。最悪なお話でした
#鬱 #欝 #うつ #メンヘラ #社会問題 #中二病 #精神疾患 #精神分析

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