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プラモデラーより愛をこめて

  偏屈でひねくれ者の私がSDGsなんて耳にしても、どうせ地球もいつかはなくなるし、人類も氷河期やら未知のウィルスやらでいつかは絶滅しちゃうんでしょ?とか、人間も自然から生まれたのだから、人間が環境に与える変化なんてものも、自然由来のものじゃない?なんて考えてしまう。

  ある日、そんな屁理屈な私に未来の危機を伝えるものが現れた。そいつは何気なく訪れたゲームセンターに、まるでポストのように口を開けて鎮座し、ランナー回収ボックスと大きく主張をしていた。そのボックスは簡単に言ってしまえば、プラモデル用のゴミ回収ボックスで、プラモデルのパーツが繋がっている枠「ランナー」を回収してリサイクルをしようという取り組みの一環だった。

  そんな何気ないSDGsな取り組みの1つだったのだろうが、私にプラモデルの原料が枯渇しているのでは!?と一抹の不安を煽るには十分であった。そしてその不安は私にプラモデルのない世界を想像させる。もうみんなで渾身の模型を見せ合えなくなるのかとか、全部の模型が木製やレジン製になったら加工しづらいなぁとか、休日は何をして過ごせばいいんだ?などなど。そしてなによりもプラモデルがない世界を生きなければならない世代がいるかもしれないと思うと、とても悲しく申し訳のない気持ちになった。

   その日から私は2つのことに取り組むと決めた。一つはランナーをリサイクルに出すと言うこと。どうせゴミに出すのであれば回収ボックスに入れるのも変わりない。幸い近所に回収ボックスがあるのだから、それぐらいはプラモデラーのエチケットだ。そしてもう一つは、リサイクル製のプラモデルで事足りるときは、それらを買うこと。リサイクル製のプラモデルは色合いが黒一色だったりするのだけれど、どうせ塗装をせずにはいられないのだから、色分けされた新しいプラモデルは塗装をしない方々に譲ろうと思う。

  そんなことを考えていると、偏屈でひねくれ者の私は、そもそもプラモデルを作らなければ良いのでは?なんて極論にたどり着いてしまった。しかしそれは断じて否だとモデラーの私が言っている。私は愛しているプラモデルがない世界を悲しんで、取り組むのだ。愛しているものを捨ててまで行う取り組みは、初められてもきっと持続はできないと思うから。


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