平成の土俵の鬼

平成の土俵の鬼

ヒロ佐藤

平成の大横綱・貴乃花。

相撲一家に生まれ、兄とともに角界入り。まさに相撲に生きることを宿命づけられた男であった。

この貴乃花の名勝負といえば、時の総理大臣小泉純一郎氏が表彰式で「感動した!」といった武蔵丸との優勝決定戦だ。

この場所、初日から13連勝とまさに円熟期と思われたが、事態は一転する。

14日目、武双山戦で巻き落としを食らい、膝をケガする。花道で付け人の肩を借りて引き上げる横綱。千秋楽出場絶望とみられるも、出場に踏み切る。

そして迎えた千秋楽。相手は貴乃花を1差で追う横綱武蔵丸。

結果は突き落としで武蔵丸に軍配。足の出ない貴乃花。相撲が取れる状態でないことはだれの目にも明らかであった。しかし決定戦で奇跡が起きる。

立ち合い踏み込んだ貴乃花は、上手を引き、豪快な上手投げを決める。勝負が決まった瞬間、ものすごい形相で花道の付き人を見つめた。のちに『鬼の形相』と呼ばれたシーンである。

叔父の初代若乃花が土俵の鬼といわれたなかでその花田家の“鬼”が貴乃花に宿った証であった。

話はここで終わらない。鬼はまだいた。

この一番で負けた武蔵丸だ。

貴乃花への評価に反比例するように同じ横綱として武蔵丸の評価は地に落ちた。

あの手負いの貴乃花に負けるなんて…そんな意見が多くされた。弱い横綱というレッテルが貼られてしまう。

貴乃花もあの一戦の代償を大きく7場所連続休場。一人横綱として相撲界を支えた武蔵丸。

しかし、真の横綱になるために必要なことがあった。

貴乃花を倒すことである。

そして、その時は訪れた。

2002年9月場所。完全復活を遂げた貴乃花。迎え撃つ武蔵丸。

千秋楽横綱相星決戦。これ以上ない舞台。

会場全体は、貴乃花復活優勝を望むムード。

結果は、武蔵丸得意の右かいなを返しての寄り切り。一方的だった。館内は落胆の意味合いを含んだため息に包まれた。

ここで、実況が一言。

「もう一人、心を鬼にした横綱がいました。」


ケガを抱えた横綱に対して、武士の情けで勝負にいけなかった武蔵丸。それから不本意な評価を受け続けた。


そしてついに雪辱を果たしたのだ。
それも右かいなを返してという自身の得意技。まさに金棒で。


私はこの平成を彩った二人の“鬼”に感動した。


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ヒロ佐藤
物心つく前から見ていた相撲の魅力を伝えたくて始めました。 また、プロレスも好きで特に昭和プロレスに関心があるのでそれも発信しています。 プヲタ、好角家はもちろん興味ない人もご覧ください!