男性社会の幸福な女性たち
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男性社会の幸福な女性たち

すもも

盛り上がるフェミニズム

 近年、日本におけるフェミニズムが盛り上がりを見せている。「#MeToo」(2018年)「#KuToo」(2019年)が「ユーキャン新語・流行語大賞」候補の30語にノミネートされたり、企業広告のジェンダー表現が次々と燃えたり、フェミニズム関連の書籍も好調のようだ。

漠然とした不満

 フェミニストたちの盛り上がりの背景には、日本社会を”ざっくりと”「男性社会」だと認識し、その中で生活することに対する漠然としたフラストレーションがあるように思う。

 統計的事実として多くの女性が日本を「男性社会」だと感じている。内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」では「それぞれの分野で男女の地位は平等になっていると思うか」という質問を様々な分野について訊ねている。「教育の場」以外の分野で、半数以上の女性が「男性の方が優遇されている」と回答している。

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 それでは、なぜ女性は「男性優遇」だと思っているのだろうか。内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」(2000年2月調査)で「男性が優遇されている原因」をみると、

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「日本の社会は仕事優先,企業中心の考え方が強く,それを支えているのは男性だという意識が強い」(62.7%)
「社会通念や慣習やしきたりなどの中には,男性優位にはたらいているものが多い」(59.2%)

 が半数を超えており、「男性目線で動いているように見える社会」に対する漠然とした不満があるようだ。

 一方、「男性優遇」の原因を「差別」だと考える女性は少数派であった。

「男女の差別を人権問題としてとらえる意識がうすい」(18.1%)

 また、ISSP国際比較調査でも、女性有職者が「過去5年間に就職・昇給・昇進など仕事上のことで差別を受けた比率」は、日本は21か国中17位と、女性が差別を受けた経験の比率が低い国であることが明らかになっている。

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 以上より、日本の女性が「男性社会」と言っている背景には、「女性という属性を理由に本人の意思に反して不当な扱いを受けた」という「差別」の類があるのではなく、「男性目線で動いているように見える社会がなんとなく気に入らないという、”漠然とした不満”があると考える。

 確かに社会の重要な意思決定をする政治家も、管理職も男性の比率が圧倒的に多いので、そのように社会が見えてしまうのは仕方がないのかもしれない。

”結果の差”は差別なのか

 フェミニズムの言説では、日本の「ジェンダー・ギャップ指数」ランキングの低さという「結果の差」をもって、日本の「女性差別」に結びつけようとする。

 「ジェンダー・ギャップ指数」とは、世界経済フォーラムがが毎年算出・発表しているもので、経済、教育、健康、政治の4つの分野の男女ギャップの数値を総合して順位が決まる。

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世界経済フォーラム「ジェンダー・ギャップ指数2020」より筆者作成
http://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2020.pdf

 日本の総合順位の低さには、「管理職の男女比」「政治家の男女比」の順位の低さが寄与している。

 「管理職の男女比」「政治家の男女比」の順位が低いのは、女性が差別されているからだろうか。

 「男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査(一般従業員調査)」(2012年)によると、一般従業員において、昇進を希望しない(役付きでなくてもよい)比率は、300人以上の規模の企業では、男性が25.7%に対し女性が68.9%と、女性は管理職になる意欲が男性よりもかなり低い

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「男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査(一般従業員調査)」(2012年)より画像引用

 また、女性を対象とした大規模なWeb調査(2020年)によると、「政治家になりたい」という女性はたった1割しかいない。(ただし、男性と比較する必要あり)

 「管理職の男女比」「政治家の男女比」の順位が低いのは、そもそも女性自身が「管理職になりたくない」「政治家になりたくない」という傾向があり、前述したように有職女性が差別を受けたと回答する比率も低いことから、「ジェンダー・ギャップ指数」を日本で女性差別が強いことのエビデンスとして用いるには無理がある


 以上をまとめると、近年フェミニズムは盛り上がっているのだが、その実は漠然とした「男性社会」(男性主導で動いているように見える)への怒りだったり、女性にも選ぶチャンスが平等に用意されていたにも関わらず選ばなかったことで生じた結果の差に対する怒りであり、女性は本当は切実に困っていないのではないのかという疑問が湧いてくる。

日本は世界一男性よりも女性が幸せな国

 もし、本当に女性たちが「男性社会」による「女性差別」によって切実に困っているのなら、幸福度は男性よりも低いはずである。

 世界価値観調査(2017~2020年)の幸福度(平均点:最小‐2~最大2点)をみると、女性の幸福度から男性の幸福度を引いた差は、日本は25か国中最も高く(縦軸)、日本は世界一男性よりも女性が幸せな国となっている。女性の幸福度の値(横軸)も先進25か国中8位と上位にある。

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 日本が女性に比べて男性の幸福度が低いという傾向は、世界価値観調査(2017~2020年)に見られる偶発的傾向ではなく、別の調査、別の時期においても繰り返し確認されている事実である。(下図表参照)

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本川 裕「世界120位「女性がひどく差別される国・日本」で男より女の幸福感が高いというアイロニー 男性優位社会で男が低幸福度のワケ」(PRESIDENT Online、2021/04/07 )より画像引用

 「男性よりも女性の方が幸福度が高い」ことは日本以外の多くの国にも共通するので女性特有の生物学的要因があるかもしれない。しかし、幸福度の男女差の程度が国ごとに違っているのは、国ごとの文化的要因の違いがあるからだろう。幸福度の男女差の女性超過が世界一である日本には、他国よりも「女性の幸福度を高くする(あるいは男性の幸福度を低くする)文化的要因」が強く働いていることが推測できる。

なぜ、日本において幸福度の性差が広がるのか

 そこで日本の幸福度の性差が大きいことの背景を探るために、各属性別に先進25か国平均との差をみることにした。
 女性の幸福度が先進国平均よりも高い属性をみると、「女性・70代以上」「女性・未婚」「女性・50代」などが挙げられる。
 一方、男性の幸福度が先進国平均よりも低い属性をみると、「男性・未婚」が突出していることが確認できる。

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 つまり、日本の幸福度の性差をつくっている大きな特徴として、日本の未婚男性の幸福度の低さがあると考えられる。

日本女性の配偶者選択における経済力重視傾向によって「弱者男性」が生み出される

 では、なぜ日本の未婚男性の幸福度は国際的にみてここまで低いのか。ISSP国際比較調査(2018年)のデータで各国の30~49歳の有配偶男性と未婚男性の収入格差をみると、日本の未婚男性は有配偶男性の約6割しか収入がない(19か国中16位)。

 つまり、日本の未婚男性の中には「カネも、パートナーもない」2重のつらさを味わっている弱者男性が多いのである。”結婚”と”経済力”、人生の幸福において最重要なこの2つの要素が欠如しているのであれば当然幸福度は低くなるであろう。私はこの点が日本の未婚男性の幸福度を低くしている最も大きな原因だと考える。

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 日本の未婚男性と有配偶男性の収入格差がここまで大きくなる原因は日本の女性の配偶者を選ぶのに経済力を重視している傾向が強いからだろう。

 例えば、少し古いが、アメリカの心理学者Bussの有名な研究(注1)によれば日本の女性は配偶者の選択で経済力を重視する傾向が他国と比べて強いことが明らかになっている。

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(注1)Buss, D.M. (1989). Sex differences in human mate preferences: Evolutionary hypotheses testing in 37 cultures. Behavioral and Brain Sciences,12,1-49.
https://labs.la.utexas.edu/buss/files/2015/10/buss-1989-sex-differences-in-human-mate-preferences.pdf… https://pic.twitter.com/VI6YmZHXOc

 また、国際比較データではないが、日本の未婚女性がアラサー未婚男性の1割程度しかいない年収500万円を「普通の年収」とみなして高望みしているという事実も、日本の女性が配偶者を選ぶのに経済力を重視する程度の強さを裏付ける。

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 その結果なのか、日本の男性の年収と未婚率の間に強い相関関係が存在してしている。しかも2007年から2017年にかけてさらに相関関係は強まった。言い換えると、”お金を持っていない男性が未婚になりやすい構造”がこの10年間でさらに強化されたである

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日本の未婚男性は怒っていい

 日本の未婚男性は約1,200万人と大規模な社会集団である。この大規模な社会集団がこのような幸福度の低い立場に置かれていることは、社会的に大きな問題だと言ってもいいはずだ。

 しかし「日本の未婚男性をなんとかしよう」という話は一向に出てこない。それは男性=強者/加害者、女性=弱者/被害者というステレオタイプがあるからだ。このステレオタイプの温存に一役買っているのがフェミニズムである。 

 例えば、女性憎悪がうかがい知れるセンセーショナルな事件が起こり、その背景に弱者男性問題がありそうなとき、フェミニズムは「フェミサイドだ」などと男性に加害者性のラベルをはって(あるいは、女性の被害者ポジションを強調して)、その根本にある「弱者男性問題」の社会問題化を実質的に覆い隠す方向に世論を誘導してきた。

 近年のフェミニズムは「あの広告はダメだ」「あの有名人の発言は許せない」「ジェンダーギャップが~」などと、実生活とはあまり関係のない机上の問題に日々怒っているが、本当に「怒っていい」のは実生活と直結する幸福度がここまで低い未婚男性の方ではなかろうか

 フェミニズムが本当にしなければならないのは、男性の年収に依存しようとする責任感の低い女性の意識をアップデートすることではないだろうか。女性の責任感が増すことは、ジェンダーギャップを改善するだけでなく、低年収男性の未婚率の改善につながり、男女の幸福度格差の改善にもつながるだろう。

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