見出し画像

自己啓発本への違和感

 小説や哲学、大学の教科書などを読む。自己啓発本もたまに読む。前者は一生手元において置こう、何度も読み返そうと思うのに、後者に関してはそういう思いを抱くことはほぼない。どちらも知識を増やしたり、考え方を変えたりと役に立つ。自己啓発本の方が実用的であるため、むしろ何度も読み返すべきである。それなのになぜ何度も読もうと思わないのか。

これは内容への批判ではない。

1.分かりやす過ぎるから?

 一般的に分かりやすいことは良いことである。しかしながら、分かりやす過ぎる文章は一度で「分かった気にさせる」。分かりやすい文章であっても、それが腑に落ちるまでには、受け入れる下地が出来ていない限り必ず時間がかかる。

 例えば「挨拶が大事」という本があったとして、そこには挨拶をすることで関係が良くなるメカニズムであったり、挨拶をしたことで良いことが起きたという体験談だったり、そういうものが記載されている。それを読むと「ああ、挨拶は大事なんだな」と分かる。それは頭でわかって心で分かっていないのである。自身の経験によって、その知識が肯定されることで、心でわかる準備が整う。感情がついてこないとだめである。挨拶をしない人間に対し、「あいつは損をする」という損得的な感想ではなく、「人として当たり前のことをしろ!」と感情が伴って出てくる境地である(主張はともかくとして)。

 自己啓発本は含みを持たせない書き方ではないか?文章を読むだけで分かった気になってしまうことは、興味を持たせなくすることでもある。また、翻訳調の文章が多いのも原因かと思う。

古池や 蛙飛び込む 水の音

 これを「蛙が、古い池に飛び込んだ時、水の音がしました」とするのである。そこには広がりも何もなく、ただの事実だけが鎮座している。それ以上の何かをもたらさないのである。

2.テーマ以外に得るものがないから?

 例えば西田幾多郎の「善の研究」などを読むと、内容ももちろんだが、抽象的概念を生々しく捉えていることに衝撃を受ける。というのも、抽象的概念というのは、具体的事象で捉えられないから抽象的なのであるが、それを西田幾多郎は目の前にあるかのように、体の一部であるかのように語るのである。

 感覚としては「流暢にしゃべる」という言葉に似ているかもしれない。本来「流れる」という流体に使われる言葉を、しゃべるという行為に対して使っている。それも、しゃべるという行為の上手さや、その様子を表すのに使っているのである。これの何が似ているのかというと、しゃべるということに対しての評価、印象を、まるで流体のように、物理的に捉えているということである。

 人間は抽象度の違うものであっても類似を見つけ出すことが出来る。時間と、空間、現在では「時空間」と一つのものとして扱われることもあるが、昔はそんなことはなかった。それでも、「前」という位置を表す言葉が時間に適応されたり、未来や過去というのも、まるで道のように捉えている。

 話は戻る。自己啓発本では、そうした概念への理解が薄いのである。方法論や、分析としては一流かもしれないが、それを咀嚼し消化して自分のものにしていなのである。「生きた表現」というものがなされていない。

 この感覚がわかるだろうか。知識に対する生々しい臨場感。それを与えてくれる書物がある。長年費やして自分の中に定着させ、大事に育ててきた「思想」は、外に出ると生々しいのである。それは現在あふれている文章があまりにも無機質であるからかもしれない。

3.後々読んだ時に捉え方が変わるかもしれない

 自己啓発本であっても、どんな本であっても、再読することをおすすめする。全く分からないはずだった本が、いつの間にか読めるようになっていたり、逆に全て分かったつもりだった本から、新たな発見があったりする。

 本というのは世に出す以上、その人の人生が詰まっている。その人が歩いてきた道のり、考え方、癖、そう言ったものが浮き彫りになる。人一人の人生が詰まっているのであれば、自分には完全な理解、共感は不可能かもしれない。しかしながら、人一人以上の人生を体験できる可能性を秘めているのも本である。本は半受動的、半能動的である。知識は一方的に与えてくれるが、読み進めなければ何も得られない。

4.おすすめの本

4.1.本を読む本

 この記事を書いたあとに読んだ本だが、言いたいことと知らなかったことが詰まっていた。どうやって本を読んでいいのか分からない人に。

4.2.読書について

多読をする前に読んでおく本。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

勉強に使わせて頂きます!!

ありがとうございます○
11
某国立大数学科→社会人 数学/宗教/哲学/心理学/社会学/文学/芸術/音楽/その他

こちらでもピックアップされています

人生・哲学・宗教
人生・哲学・宗教
  • 1308本
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。