為替相場とは?初心者にも分かる通貨交換の仕組みを解説
近年、米ドルが円に対して上昇トレンドを築き、2024年4月29日にはバブル以来34年ぶりとなる160円台の高値をつけました。歴史的な円安を背景に、輸出産業の業績向上やインバウンド市場の活性化などが日本経済の追い風となる一方、消費者にとっては物価高による生活への悪影響をより直接感じているかもしれません。
世界には様々な通貨が存在するのと合わせ、通貨ごとにレートが存在します。そして、これらのレートは国内外の経済や政治の動向、景気、金利水準、市場の需要と供給、経済指標など、多くの要素によって影響を受け、24時間常に変動しています。
本記事では、私たちの通貨である「円」の為替相場にフォーカスし、基本的な仕組みや取引の実態について解説します。
為替と外国為替市場
為替とは?初心者でもわかりやすく解説
「為替」と聞くと、米ドルやユーロなどの通貨を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、実際の為替とは「現金を直接やり取りしない決済サービス全般」を指します。現金を持ち運ぶリスクを避けるため、銀行振込や小切手による決済なども「為替」と言われています。これらは「国内為替」として、私たちの日常生活で頻繁に使われる仕組みです。
一方、一般的に言われる「為替」とは「外国為替」のことを指します。これは異なる通貨間での交換取引を意味します。例えば、企業が海外から商品を輸入する際、代金を米ドルで支払わなければならない場合、円を米ドルに交換する必要があります。このとき、円と米ドルを交換する比率を「為替レート」と呼びます。この為替レートは日々変動しており、外国為替取引(FX)ではこのレートの変動によって利益や損失が発生します。
要するに、為替とは「異なる通貨を交換するための仕組み」であり、国内外の取引において欠かせない存在です。特に「外国為替」は、国際的なビジネスや投資の場で重要な役割を果たしています。
外国為替市場とは
外国為替は株式と違い、買い手と売り手が直接値段、数量などを決める相対取引(あいたいとりひき)が行われます。その取引を行う場所を総じて「外国為替市場」と呼びます。主な外国為替市場には、金融機関などの限定的な市場参加者が取引する「インターバンク市場(銀行間取引市場)」と、金融機関が輸出入業者や個人を相手に取引する「対顧客市場」があります。
外国為替市場の仕組み
為替レートを決めるクロスレートと通貨表記の仕組みとは
クロスレート
日本で為替取引を行う場合、「米ドル/円」や「ユーロ/円」のように直接円と外国通貨のレートを使っているように見えますが、実は、その裏側では基軸通貨である米ドルを介してレートが算出されています。例えば、ユーロ/円レートは、米ドル/円レートとユーロ/米ドルレートを掛けて計算されます。この2通貨の取引レートを算出する際に用いる別の通貨との取引レートのことをクロスレートと呼びます。
いったいなぜこのような回りくどい計算をするのかというと、クロスレートを用いない場合、膨大な数の為替レートの管理が必要になり、為替市場が複雑になってしまうからです。仮に100通貨のペアを考えた時、全ての取引レートが必要だとすると、「100×99÷2=4,950」種類のレートを管理しなければなりません。しかし、クロスレートを用いれば、米ドルと米ドル以外の通貨ペアの取引レートがあればよいため、99種類の取引レートの管理で済むのです。
参考為替取引
通貨表記
通貨ペアについては慣習として並び順が決まっており、「円/米ドル」や「円/ユーロ」とは表記しません。通貨ペアの左は基軸通貨、右は決済通貨と言われ、表記順序は、「ユーロ>英ポンド>豪ドル>ニュージーランドドル>米ドル>カナダドル>スイスフラン>新興国通貨>日本」の順です。この順序は権威性や歴史的背景を元に決定されています。ただし、日本円は例外で円の通貨単位が海外の通貨単位と異なる*ため、順序としては低く設定されています。
*米ドルやユーロなどの主要通貨は小数点以下の有効桁数が2桁(例:1ユーロ=1.12米ドル)ですが、円は0桁(整数)となります。
通貨の取引割合や外国為替市場の主な取引時間帯とは
国際決済銀行(BIS)が2022年に公表したデータによると、世界の外国為替取引高は1日当たりの平均が7兆5,000億ドルで、その割合は米ドル(約44%)、ユーロ(約15%)に続き、日本円(約8%)となります。米ドルとユーロは通貨全体の約6割を占め取引量の多い通貨となります。
また、世界の外国為替市場は24時間取引が続く「眠らない市場」とも言われ、地域ごとで活発に取引される時間帯が異なり、補完し合っています。
日本時間の早朝5時、オセアニア市場より取引が始まります。その後、9時に日本市場が開けることで、日本円、オセアニア通貨(豪ドル、ニュージーランドドル等)の取引が多くなります。夕方、17時からは、欧州市場が開き、欧州通貨(ユーロ、英ポンド、スイスフラン等)の市場参加者が増え、最後に22時から米国市場が始まるといった1日のサイクルがあります。
中でも欧州市場と米国市場が重なる、22時~26時頃は市場参加者が増えるのと同時に、世界が注目する要人発言や経済指標もこの時間帯に集中するため、トレンドの発生やレートの振れ幅(ボラティリティ)も高くなる傾向があります。
為替相場によって得する?損する?為替リスクとは
為替リスクとは、為替相場の変動により生じる差益・差損を指します。外国資産への投資は多くの場合、「為替相場」の変動による影響を受けるため、為替リスクについても理解をしておきましょう。
例えば、1米ドル=100円の時に、外貨預金を1米ドル分行ったとします。レートがその後、1米ドル=160円になった場合、外貨預金の1米ドルを日本円に換算すると160円となります。つまり、60円の為替差益が生じることになります。逆に、米ドル/円レートが下がった場合、円換算金額は100円を下回り、為替差損が生じます。
そのため、外国資産に投資を行った場合は投資した原資産の値動きに加え、為替相場の変動も最終的な評価額に影響を及ぼします。外国資産に投資する場合は、為替リスクの存在を認識しておき、原資産の値動きと併せて為替相場も確認しましょう。
為替手数料とは 什么是兑换费?
外貨の両替や外貨預金、外貨建て金融商品の購入を行う際は「為替手数料」が発生します。為替手数料は、為替取引時に金融機関へ支払う手数料のことです。
当您兑换外币、进行外币存款或购买外币计价的金融产品时,将收取“兑换费”。外汇手续费是指进行外汇交易时向金融机构支付的费用。
上の図が為替取引時に手数料が発生するイメージです。
金融機関は外国為替取引をする際の基準となるレートである「仲値(なかね)」を決めています。その仲値を基準として、両替時の手数料を上乗せ、あるいは差し引いたレートで顧客と取引を行います。
円から外貨への両替時(外貨の購入):金融機関は仲値に手数料を上乗せしたレート(TTS)で顧客に外貨を売ります。 TTS:Telegraphic Transfer Selling rate
外貨から円への両替時(外貨の売却):金融機関は仲値から手数料を差し引いたレート(TTB)で顧客から外貨を買います。 TTB:Telegraphic Transfer Buying rate
またTTSとTTBの開きをスプレッドといい、スプレッドの比率が大きいほど取引コストが高いことを意味します。スプレッドの開きは金融機関や外貨の種類により異なるため、事前に確認することが重要です。
おわりに
いかがでしたでしょうか。私たちが寝ている間にも外国為替市場は24時間動き続けています。
世界中の多様な通貨は米ドルを基準としたクロスレートの仕組みがあるからこそ、合理的に管理することができ、そのルールを知っていれば基軸通貨の役割も理解できます。
手数料や為替リスクなども含め、為替相場の知識を正確に理解することは海外旅行だけでなく投資にも大きく役立ちそうです。外国為替市場は非常に巨大なマーケットであるため、予測や分析が難しいですが、基本的な仕組みを理解することが大きな第一歩になるでしょう。
いまや、投資信託を通じて外国の資産に投資することが一般的となりつつある中、本記事が「為替」の理解を深め投資の成功に役立てられることを願っています。