秋のにおい

台風が完全に夏を連れ去り、秋を連れてきた。

久々に、「しん…」とした時間を過ごしている。


この「しん…」とした時間がわたしは本当に好きだ。

マスクを少しずらして、自転車で坂道をダダダーっと下りながら、秋の匂いを存分に脳天から足先まで取り込む。

「うーん」と小さく息を漏らしながら、伸びをする。

小さな幸せ。


この3ヶ月くらいは、悲しいことが多すぎた。

祖母、祖父、祖母と、みんな一気に天国に帰ってしまった。

コロナ禍で、外国に住んでいた祖父母とは会う事もかなわず、動画配信でお葬式を見守った。こんなお別れになるなんて、想像したこともなかった。

せめて頬に触れたかった、存分に涙を流させて欲しかった、家族と悲しみを分かち合い慰めあいたかった。何も、かなわなかった。

その他にも色々、ここに書ける事ばかりではない。

本当にたくさん泣いた。

誰にもわたしのことで心配させたくないから、1人で泣いた。

1人で耐えなければならないことが、多すぎた。


だけれども、その分、人の優しさも身に沁みた。

何か一つ仕事のオファーがあるたび、わたしはまだ打席に立っていていいんだと言われているようで、有り難かった。

わたしのラグを、買ってくださった人の気持ちも。

髪を切りに行ったら、ちょっとおまけしてもらえたことも。

友達が、長電話してくれたとき。

わたしが自分の身の上に起こったことたちを何か言ったわけじゃない。でも、感じ取ってくれているのかなんなのか分からないけれど本当に

一つ一つの人の優しさが有り難かった。


来年からは、きっとわたし自身が、もっとまるっと新しくなって、力強く生きていける、そんな予感に満ちている。だからこそ

今はまだ少し、小休憩。

秋風にそよぐ緑を、もう少しポケーっと眺めていたい。

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