私の世界

私の日常はあの日から色づきはじめた。


私はこの春、高校に入学した新1年生。

不安で胸がいっぱいだった内気な自分にも友達ができて今ではホッとしている。

「そういえば部活決めた??」

「私は中学で弓道してたからそのまま弓道続けるかな~」

「でもやっぱりサッカー部のマネージャーとか憧れるよね~」

「私はまだ迷ってるかな。。。」

人前に出たり、運動したりすることが苦手な私は中学校では部活に入っていなかった。

高校でもあんまりこれといってやりたい部活があるわけではなかったので、このまま部活に入らなくてもいいかなとも思っていた。

「明日の部活動紹介楽しみだね~」

「そうだね。」

思ってもいない相づちを返す自分があまり好きになれない。


そうしてやってきた部活動紹介当日。

新1年生は体育館に集まり、いろんな部活動のアピールを見る。

体育館の固い床に長時間座っているのは苦痛で、心の中で早く終わらないかなと思っていた。

部活動紹介も終盤にさしかかる。

部活動紹介にそこまで興味がない私も、自分の学校にどんな部活動があるかはある程度把握している。

もう少しで終わるはずと落ちてくるまぶたに言い聞かせながら、顔を前に向けた。

いよいよ最後の紹介だ。

すると在校生が忙しそうに窓のカーテンを閉め始めて、体育館内の照明も落とされた。

「暗くするってことはプロジェクターか何か使って紹介するのかな、凝った紹介だな~」

と感心する反面、

「真っ暗の今なら少しくらい寝ててもばれないよね」

と思う自分がいた。

いままで頑張ってきた私のまぶたも限界を訴えてきたので、静かにまぶたを閉じた。


「ん?」

なにやら音楽が聞こえる。吹奏楽部は終わったはずだし何部だろう。

そう思い、重いまぶたを開けて見た景色は信じられない光景だった。

仮装した人が楽しそうに踊っているのだ。

それも一人ではなく十数人。

魔法をかけられたような感覚。あっけに取られているうちに紹介は終わり、全体としての部活動紹介を幕を閉じた。

終わった後、友人に聞くとあれはミュージカル部の発表だったらしい。題目はハロウィーン。

自分には縁のない部活だなと思い覚えていなかった。


周りが少しずつ入部届を手に職員室に向かう中、わたしはミュージカル部の発表を忘れられずにいた。

「私もあんな風に変われるかな...」


放課後、気になってミュージカル部の部活を見学しにいった。

いざ見学しに入ってみるとボイストレーニングの途中だった。

あっけに取られていると一人の女子生徒が駆け寄ってきて

「新入生の子かな?」

「はい...見学してもいいですか?」

「もちろん!どーぞ、こちらに~少しお話しよっか」

内気な自分には初対面の人と話すのは緊張するなと思いながら空いているスペースに案内された。

「はじめまして、部長の佐藤です。よろしくね。」

「はじめまして」

緊張を隠せない私に彼女は語り出した。

「私ね。最初は他の部活に入ろうと思っていたんだけど、この部の部活動紹介に魅せられてこの部に入部しようって決めたんだ。人前に出たり、人の顔見て話すことが苦手だったから不安だったけど、周りにも支えられてなんとかやってるよ。今では音楽が流れたら踊りたくて体がむずむずするよ。ある意味病気だね笑」

照れくさそうに話す部長がとても輝いて見えた。

「部長ー!一回通しましょ~」

「わかった~、それじゃあ気の済むまで見学していってね!」

そういって佐藤さんは部の輪に混ざっていった。


内気な自分を変えたい。そう思った。

次の日、入部届を手に職員室に向かった。

放課後、部室に向かうと佐藤さんをはじめ、多くの部員が集まっていた。

「ようこそ、ミュージカル部へ」


2年後...


今日は部活動紹介。例年通り、ミュージカル部はトリ。

緊張で心臓が飛び出そうだ。

2年前の部長もこんな気持ちだったのかな。

音楽がかかる。始まる。

あの時の自分みたいな人に届くといいなと思う。

暗幕が少しずつ上がっていく。

さあ、始めよう。音に乗せて。

色づく世界の主役はあなただ。そう伝えるように。


「It's a Magic !」


MAGIC / sumika


読んで頂きありがとうございました。

外出自粛でなかなか外に出れない日々が続きますが、少しでもこの小説で楽しんで頂けると幸いです。

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