記憶

夜、目を閉じれば明日に向けて眠りに落ちる。

朝起きると、少しの昨日を失くして目を覚ます。

それは人間にとって当たり前のことで、いままでのことを全て覚えている人なんてどこにもいないのだ。


僕は社会人三年目。

会社にもすっかり慣れて後輩もできた。

社会人になってから僕はうまく笑えず、写真に写るときは作り笑顔をするばかりで、こころから笑うことは少なくなっていた。

いろんなことをやっても本当に楽しいと思えることが見つからず、ただ仕事、仕事の毎日だ。


「あ~、なにもする気が起きないな。」

今日は会社も休みで特に予定はなかったのでテレビを見ながらゴロゴロしていた。

番組は再放送やニュース番組ばかりで面白くない。

ただ時間がゆっくりと流れていく。

「部屋の掃除でもするか。」

部屋は整理されている方ではあるのだが、最近仕事が忙しくていつもに比べて物が散乱していた。


洗濯物を回し、部屋の掃除をしていると懐かしい物が押し入れから出てきた。

「これ、いつのアルバムだろう...」

そのアルバムは大量のほこりを被っていて、表紙に書かれていたであろう文字は擦れて読めないほどだった。

宝箱を開けるような少しの高揚感を胸にアルバムを開く。

「懐かしい~、これ何歳の頃の写真だろう。」

そこには自分が幼稚園から小学校低学年の間に撮った写真が大量に収納してあった。


その中には自分がこころの中から笑っている写真があった。

写真のなかの自分は高さの違う左右の手に繋がれていた。

誰と手を繋いでるんだろう...

その後もブカブカの袖に手を通してにが笑う小学校入学当初の写真や、夏祭りで二匹の金魚が入った袋をもって無邪気に笑う自分の姿があった。

「こんな時期が自分にもあったのか~、今思えばよく分からないことばかりしていたな」

僕は自然と写真を見ながら、楽しかったあの頃を思い出し笑っていた。


アルバムの写真を見終えたところで

「久しぶりに声聞きたいな」

と僕は言葉をこぼした。


掃除を進めると他にもアルバムが出てきて、それを読んでいるといつの間にか登っていた太陽が沈んでいた。

いてもたってもいられない。

僕は携帯電話を手に取った。


あの頃の左右の影追い越して

僕はこんなに大きくなった。

日々減っていくあの頃の記憶は忘れないようにしないとな。

あの頃僕が笑えていたのは

左と右にいつも温もりが寄り添っていたから。

忘れないように思い出して。


僕は携帯電話に登録された番号を探す。

3秒後にその人は電話の向こうに現れた。

「あら、どうしたの。電話なんて珍しいじゃない。」

「うん、そうだね」

「なんか困ったことあったの?」

「いや困ったことはないよ。ただ言うことがあってさ。聞いてくれる?」

「なにさ~、そんな改まって。言ってみなさいよ。」

「じゃあ、言うよ...」


「愛してる」

忘れたら思い出そう。

無くさないように。

何度何度も

繰り返して。


リフレイン /sumika


読んで頂きありがとうございました。

母の日が近づいてきましたが皆さんはどのように過ごしていますか。一緒に住んでいる人もいれば、親元を離れて働いたり、学校に行ったりしているひともいるでしょう。

両親に感謝を伝えるのもこういう日じゃないと恥ずかしくて言えないと僕は思います。たまには電話で話すのもいいでしょう。昔のアルバムを引っ張り出して思い出話に花を咲かせるのもいいと思います。

僕も大人になって親の偉大さに気付きました。

これからも両親を大切に生きていこうと、この曲を聴いて思いました。

大切な人には伝えたいことはちゃんと伝えたいですね。

最後になりますが、改めて。


読んで頂きありがとうございました。他の作品も宜しくお願いします。

感想・コメントもお待ちしています。



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