猫のためがデザイン【日記】

長文になるため、あえて先に結論を書こう。
我々人間は、猫のための麻酔だ。



ウチの猫がエサやり機に腕を引っかからせた。

猫というのはそれはそれはよく深い生き物で、自動で餌が出てくる場所にはご飯が貯蓄されていると理解し、さらには出口の排出プロペラをちょいと動かせばカラカラがカラカラ出てくることをほんの数回で覚えてしまう。
故にこれまで奴は、なんどもなんども、そのつまみ食いを繰り返してきた。
飼い主的には太る原因になるからやめてほしいところだが、気がつくとついつい眺めてしまっているため結局放置状態
しかし結局、ようやく天罰が下ったのだ。
うちの猫は爪を引っかからせて前足を取るに取れなくなってパニックになってしまった。

最終的には人間が排出口のところに指を突っ込んで、猫の爪をピンっとはねさせることでなんとか救出成功。奴は一目散に机の下へ避難していった。(前足に障害が残ることもなかった)



さてここにきて思うのは、猫の前足の不自由さだ。

人間の手・腕と猫の前脚との骨を比較した時、どちらも回転させる機構はあっても、指の長さに圧倒的な差があることがわかる。
指骨が 短いので物をつかむことは難しい。
なので爪を使うのだが、柔軟に曲がるはずのない爪ではまだまだ人間のように色々と行えるわけではない。
特に爪を引っかからせたりした時の対処はなかなか大変そうだ。


しかし……人と住むことを数千年前からしているイエネコの種が、なぜ、これまでこの問題を放置してきた????


僕は生物の進化に関しては、

「種は多様な形のうちから今の環境にあったもののみが必然的に生き残ってしまうが、その形の生まれる背景には受けてきた刺激が影響を及ぼしてくる」

といった考えを持っているので、イエネコにも進化・変化する時間的余裕はあったはずだと捉えてるけれども、なに、全然進化してないよこれぜったい。

なんて考えていて自分の行動を振り返ると、その進化の阻害をしている原因がわかった。


僕だ。
飼い主だ。
人間だ。


布に爪が引っかかったり餌出し機に引っかかったりしたら、僕ら人間が駆けつけてくる。SECOMのように。
そこから餌出し機を撤去して「刺激を排除する」。
さらには、そもそも餌出し機に足が入らないように餌出し機が改良される。(実際に改良品があった)
すると猫の体に「爪を引っかからせないための影響」を与える刺激を受ける確率が、がくんと下がってしまうわけだ。
つまりは、猫に進化の隙を与えない。

ペットを守るということは、ペットを永遠に同じ形に留まらせる拘束行為なのだった。



そこに思い至った時、ふと、『are we human?』に書かれた言葉を思い出す。

「デザインは麻酔である。」

人間が発明してきたもの、デザインは人間自身の体から苦痛を逃がすように考えられている。
持ちやすい形に削ること然り、読みやすいようにまとめること然り、遠くまで早く行けるように乗り物を作ること然り……。

それは、猫の視点から見れば……苦痛を逃してくれる最高の存在というと……人間しかいないわけだ。

僕らは、知らず知らずのうちに猫にデザインされていた。

そして猫は、デザインした僕らによって知らず知らずのうちに進化の麻酔=デザインされていた。

人は人から輪郭を見出すのではなく周囲の道具によって規定される。

猫も然りである。



そうなると僕らは召使いであると言えて、
生き物を飼うことの責任は、彼ら彼女らの苦痛を一生かけて取り除いてあげることに捧げることなのだと再確認させられた。


だとしたら、太ることは苦痛につながるのだからご飯与えすぎないようにしたほうがいのでは?


そう思いつつ、僕は、奴がご飯を食う姿をただぼーっとみてるだけなんだけど。
麻酔……。
猫も麻酔……。

猫は、人間のための麻酔なんだ……。

人間は猫によって規定される……。








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