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BUMP OF CHICKEN 魔法の料理で演技した組体操〜先生から君へ〜


小学生の運動会の目玉である組体操。皆さんは何の曲に合わせて演技をしたか覚えているだろうか。
私はこの曲を選んでくださった先生に心から感謝したい。

これは私が小学5年生のときのお話だ。私の学校は5年生と6年生が一緒に組体操をやるという伝統だった。

5年に進級し、そこそこ新しいクラスにも慣れてきたところで運動会練習が始まった。今日から組体操練習が始まるらしいが、集合場所は校庭でも体育館でもなく、視聴覚室だった。

全員が集合すると、今回組体操の構成を考えた、6年生担任のO先生(男性)が口を開いた。

「今から、今回の組体操で使う曲を聞いてもらいます。それでは今から流しますね」

組体操は何か音楽と一緒に演技するのが主流である。確か昨年は「銀の龍の背に乗って」が使われていたが、今回は何の曲だろうとドキドキしながら聴き始めた。

「♪叱られた後にある晩御飯の不思議議、、」

なんだかほんわかした曲調で、独特の言い回しが多いなあ、と感じた記憶がある。
しかし全く知らない曲だったので「へー、今回はこんな曲なんだ」ぐらいの気持ちだった。

曲を流し終わるとO先生は
「この曲知っている人?」と聞くと2人くらいしか手を挙げていなっかた。

それを確認すると先生は、この曲の歌詞が印刷された大きな紙を壁に貼り、一文ずつその独特の言い回しの歌詞の意味を小学生にもわかるように教えてくれた。

紙にはこの曲の題名「魔法の料理〜君から君へ〜」と書かれていた。

細かいことは、忘れてしまったが、冒頭部分は「叱られたはずなのに、ちゃんと自分の晩御飯を用意してくることに主人公が涙を流している」というような感じで教えてくれた。

先生の説明が終わると、この曲の意味をわかったつもりでいた。そしてこの曲で組体操を頑張ろうと思った。

組体操練習はほぼ毎日行われた。演技の順番や、移動位置覚えたり、集中してなくて怒られたり、裸足で校庭を走り回るのが痛かったりと色々ある中、あの曲はずっと共にいた。

正直途中から歌詞の意味などそっちのけで

「ひげじい」きっかけであそこに移動する!

というように、演技に必死で、歌詞やメロディーに浸りながらということはなかった。

あっという間に運動会当日になり、小学生初めての組体操は無事終わった。運動会が終わっても、練習で何度も聞いたこの曲のメロディーはずっと私の脳内に残った。

9年後

私は19歳の大学2年生になった。

「♪叱られた後にある晩御飯の不思議」

脳内でふとあの曲が流れた、電車の中だった。
今まで何回かあの曲を思い出したことはあったが、懐かしいなくらいですぐ忘れていた。

しかし、今回はあれって誰が歌ってる曲だったんだろうと疑問に思い検索した

題名は覚えていなかったので「叱られ後にある晩御飯の不思議」と検索した。するとスマホの画面には

魔法の料理〜君から君へ〜 BUMP OF CHICKEN の曲

とでた

私は衝撃が走った
「えっ、バンプの曲だったの?!」

確かBUMP OF CHICKENの曲を初めて聞いたのは、中学2年くらいで「天体観測」だった。
そして中3で所属していた吹奏楽部でその天体観測を演奏したりした。

その後、高3の秋にロックバンドにはまり、昨年、大1の夏にロックインジャパンフェスに行き、その日のトリがBUMP OF CHICKENだった。

いうまでもなくBUMP OF CHICKENは素晴らしいバンドだということは今までの経験で知っている。

しかし、そのバンドの曲がまさかあの組体操のときに使われていたとは思わなかった。

先生は、バンプの曲と紹介してくれていたと思う。しかし、嵐やAKB、KARAなどが流行っていた当時、バンプの存在は全く知らなかったし、英語で少し長めのバンド名は小学生の脳に留まらなかった。

電車から降り、帰宅してすぐ、YouTubeで魔法の料理を再生した。

https://youtu.be/MVVQynaCOYg

歌:BUMP OF CHICKEN
作詞:藤原基央
作曲:藤原基央
叱られた後にある 晩御飯の不思議
あれは魔法だろうか 目の前が滲む正義のロボットの剣で 引っ掻いたピアノ
見事に傷だらけ こんな筈じゃなかっ               大きくなるんだ 伝えたいから 上手に話して 知って欲しいから
何て言えばいい 何もわからない                     君の願いはちゃんと叶うよ 楽しみにしておくといい
これから出会う宝物は 宝物のままで 古びていく確か赤だった筈だ 三輪車 どこまでだって行けた
ひげじいがくれた熊は よく見たら犬だった        プラスチックのナントカ剣で 傷付けたピアノ
模様のつもりだった 好きになろうとした         大きくなるんだ 仲間が欲しい
わかり合うために 本気を出せる様な
基地が出来るまで 帰らない様な                     期待以上のものに出会うよ でも覚悟しておくといい
言えないから連れてきた思いは 育たないままで しまってある                                               更に 増えてもいく                                       怖かったパパが 本当は優しかった事
面白いママが 実は泣く時もある事                   おばあちゃんが 君の顔を忘れたりする事
ひげじい あれは犬だって 伝え様がない事         いつか全部わかる ずっと先の事
疑いたいのもわかる 君だからわかる               メソメソすんなって                                       君の願いはちゃんと叶うよ 怖くても よく見て欲しい
これから失くす宝物が くれたものが今 宝物     君の願いはちゃんと叶うよ 大人になった君が言う
言えないから連れてきた思いは 育てないままで 唄にする                                                     叱られた後にある 晩御飯の不思議
その謎は 僕より大きい 君が解くのかな
こんな風に 君に説くのかな

9年ぶりにちゃんと魔法の料理を聞いた。

涙が滲んだ。
あのとき理解していたつもりの歌詞が本当に理解できた気がした。散文のように思えた歌詞が全て自分のなかで繋がり、使われていた比喩の言いたかったことが説明されずともわかった。

そして私は大きくなり、大人になったのだと思った。

そのあと私はすぐにO先生のことを思い出した。O先生はあのとき、小学校の先生になって初めて組体操の構成を考えることになったと言っていた。そして今年初めて6年生の担任をすることになった、教員歴5年の先生だった。

初めての組体操、初めて見送ることになる教え子ということで、並々ならぬ思いで、組体操の大事な一部である曲を選曲したであろう。

きっと、先生は大人になった君の立場から、そして生徒はまだわからないことだらけの君として曲に重ね合わせたのだろうと思うと、さらに感慨深い。

6年生になった時も組体操をしたが、O先生のような曲の説明はなかった。それほどO先生はこの曲を大切に、そしてリスペクトしていて、まだ幼い私達に、曲の意味を理解した上で演技してほしいと思ったのだろう。

本番の日、魔法の料理に合わせてみんなが、一生懸命演技をする姿を見てO先生はどう思っただろうか。きっと過去の自分に見せてあげたいと思ったのではないだろうか。

物語や小説、ドラマなどで伏線という手法が使われるが、まさか自分の人生においても伏線が仕掛けられているとは思わなかった。

そして同級生達はこの伏線に気づいているだろうか。

まだ成人を迎えていない中で、大人になったというのは早すぎるかもしれない。しかし5年生の私と比べこの9年間で大きく成長した。

自分の気持ちを、しっかりと表現できるようになった。

自分のことをわかってくれる仲間もできた。

たくさん願いも叶った

叶わない物もあるという現実も知った。

大人になりたくないと嘆いていたが期待以上に人生は楽しい。

だってこんな壮大な伏線が仕掛けられていたのだもの。

そして、今後、今抱いている様々な葛藤や悩みは、僕より大きい君が解くだろう。こんなふうに。

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