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岩手の春に、ばっけとくるみを食べた 【宿 はこや】

岩手県・紫波町に移住して間もなく3週間。少しずつ暖かくなってきたが、日によっては気温は東京よりも十度くらい低く、こちらの桜はまだまだ咲かない。

こちらへきて、生まれて初めて魚をさばいたかと思えば、今度はふきのとうのオスとメスが見分けられるようになった。人間が知るべき一つ一つのことに、人生35年目にしてようやく触れているような気分。
岩手ではふきのとうのことを、「ばっけ」と呼ぶ。

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紫波旅行へ出発

新居や身の回りが少しずつ落ち着いて来たタイミングで、お友達がさっそく紫波町を訪ねて来てくれたので、まだ旅行者気分の抜けない私は、初めて地元の宿・「はこや」さんに宿泊してきました。

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(上記3枚の写真はHPより http://yado.sakura.ne.jp/index.html

【宿 はこや】さんは、紫波町・山屋地区にある、一棟貸し切りができる里山の自炊宿。箪笥工房を営むきどさんご夫妻が、すみずみまで手と愛をかけてセルフリノベーションしたこの場所は、もう宿という概念を超えて、畑あり箪笥工房あり、そして現在も製作中のワークスペースなど…ちょっとした村と呼べそうなくらいの充実ぶりです。

季節に合わせた体験もできるとのことだったので、宿泊と合わせて申し込んでみました。

そして今回私が参加したプログラムは、
・「ばっけ」(ふきのとう)摘み

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・「ばっけ味噌」作り

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・くるみを割って、ほじって、「くるみだれ」を作り

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・小麦粉と冷やご飯を混ぜた生地でたれを包み、茹で→炙った「かまやき」作り

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そして腹ごなしに、くるみの樹皮を編み込んでつくるストラップのワークショップまでおまけに!

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ってこの一連で、4時間くらい。間延びもせず、せかせかもせず、内容もりだくさん!おかみ・あきこさんの手際とばっちりとした準備が充実度120%の時間を私たちにもたらしてくれ、これもホスピタリティだな、としみじみ思うなど。

体験①:野山を歩き、ふきのとうを摘む

そもそも、ふきのとうを摘むのも、調理するのも食べるのも初体験な私。
あった!これがふきのとう(ばっけ)。これはメスなんだって。

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ちっちゃいレタスのような、カリフラワーのような、お花のような。なんだか可愛らしい存在をカゴの中に集めると、なんだか誇らしい気持ちになる。

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裏の野山を歩くと、ふっとい幹の大木が。あたりに落ちている葉も巨大だ。

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「この一帯の野草(ノカンゾウ)、ぜ〜〜んぶ食べれるよ!」と言われ、生で一口食べてみる。たしかにえぐみも感じず、茹でたり焼いたりして食べられる味だ。今日のお昼はラーメンに入れて食べたんだそう。

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春、この地域ではじめて咲くお花、福寿草。曇ると閉じちゃうシャイなお方。

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宿に戻り、摘んできたばっけを塩茹でして、はこやさん自家製の味噌と和えれば、「ばっけ味噌」の完成!味噌の塩気と、ばっけの苦味が混じって大人の味(完全に、酒もごはんも進むやつ)。

「春は苦味をとるといいのよ、デトックスになるから」と、あきこさんが、「ばっけ味噌」をつくりながらいう。味覚が子供の私は数年前だったら食べられなかったかもしれないが、ほどよい苦味と塩味をちょいちょいつまむのが美味しい。いつの間にか身も舌も大人になってきているようだ。

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酒にもコメにも合う〜〜〜〜この味。きどさん自家製の味噌も美味しすぎる。

体験②:くるみ割りとほじくり & くるみ味噌作り

岩手の料理やお菓子にはよくくるみが使われていて、美味しいものを食べたときに「くるみ味がする」という表現があるのだそう。そのくらい岩手県民に愛されている、くるみ。

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くるみは殻から出さなければ中身が腐らずに食べられる。これは一昨年のくるみだそう。割りやすいよう少しフライパンで煎ってから割り、ほじる。割るのもほじるのもなかなか手間もかかるけれど、くるみの殻も可愛いし美味しいから許そう。天然のハート形だ。

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『ほじくるみん』という道具が市販されてるの、知ってました? 壊れやすいので、使いやすい『ほじくるみん』を自作したよ、なんていう無敵さにも驚き。(写真は市販のもの)

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すり鉢をつかって、黒糖とお味噌とくるみをすり合わせます。

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体験③:農作業の合間のおやつ「かまやき」作り

そのくるみだれやばっけ味噌も包んで、ぎょうざみたいな形の「かまやき」もつくります。

紫波町産の南部小麦粉(中力粉)と、冷やご飯を混ぜて、こねこね。食べ出があって、なおかつ余ったごはんを美味しく食べる工夫も兼ねているのですね。

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できたくるみだれや、ばっけ味噌も、生地を平らに広げ、餃子のように包んでいきます。

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それを茹でる。蒸してもいいそうです。

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そのまま食べてもいいけど、ちょっとおこげがつくと美味しいのよね〜と、ここでは網焼き。

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「く、くるみ味がする〜〜〜!」

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〜かまやき・後日談〜
「かまやき」
と教わったこれを、後日岩手県・宮古出身の子にこれを見せたら、「ひゅうず」だと言われた。県内でも呼び方が違うらしい。
さらに別の紫波出身の30代の方は「こんびり」と呼んでいた。これは名称は「小昼(こんびる)」という、農作業の合間のおやつとしての総称のよう。
(「うちは実家が兼業農家だけど、稲刈りのときのこんびりはリポ◯タンDとかだけどね」と補足あり)

体験④:くるみの樹皮・ストラップ作り

そしてストラップ作り。ハサミで切れるくらい柔らかくなっています。

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むか〜〜し作ったミサンガ作りの要領で、編み編み。

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でも素材が違えば仕上がりが違う。やっぱり、自然物の愛おしさ、美しさ、チカラってすごいな。

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普段、消しゴムはんこをベースにものづくりをしている私には、天然素材を使って、材料も道具も(!)自作されたりする、はこやさんで出会う文化すべてにはっとさせられる。

愛と、軽やかなホスピタリティ

お引越し記念でサービスしていただいた、かまど炊きごはん。ほっくほくで、やわらかでした。(有料で頼めます)

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3月という季節柄、部屋に飾ってあったひな人形は、代々受け継がれてきたものを大切に補修されています。

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はこやさんの至るところに散りばめられた気遣いをもとに、宿のすべてが整えられている。昔ながらの古民家の良さを保ちながら、断熱もしっかりと。寝具もふわっふわ、こたつもぬくぬく。ストーブからこたつの暖をとるのは、寒冷地ではあるあるのようですね。

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里山での半自給自足的生活を実現している生活には、ちょっと憧れる。だけど軟弱な東京モンにそうそう真似できるものではないし、それをはこやさんは決して強いてこない。ここは高級温泉旅館とは違うけれど、ゲストハウスとも違う気がする。ピカピカに保たれていて、ぬくぬくとゆったり、豊かに過ごせる。家のいたるところに手書きのメッセージがあって、「こんな風に暮らすのも楽しいよ!」という、アドバイスとも呼びたくない、押し付けがましくない軽やかなおもてなしに溢れている。

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あ、これは生活の中に取り入れられるかもなあ、という工夫と出会えるのがうれしい。(実際、後日ダイソーでこれは購入しました。めちゃ便利)

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紅茶だって淹れ方ひとつで豊かさが変わるよね。

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肝心な部屋の写真が少ないのは、ふわふわの布団を敷いたら寝すぎて、寝過ごしてしまったから…。

敷地内にある、今後みんなで使えるワークスペースにしたい!いう製作中のスペースにもワクワク。ご夫妻で楽しみながら作り上げている暮らしが、たった1日の滞在でも伝わってくる。

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素晴らしい写真や、宿のリノベーションの過程もホームページでたくさん見られるので是非。

宿 はこやへのアクセス

箪笥工房・宿 はこや
〒028-3531 岩手県紫波郡紫波町山屋字外村259-1
JR東北本線・紫波中央駅よりオンデマンドタクシー「しわまる号」で約30分
料金1人300円又は500円、毎日8:00~17:30運行 (要予約)
宿泊の予約はホームページまたはairbnbのサイトからできます。
http://yado.sakura.ne.jp/index.html

箪笥工房 はこや

そもそもはこやさんは長年、箪笥工房を営まれています。「船箪笥」という、江戸から明治時代にかけ日本各地で作られた箪笥を再現され、木地作り、漆塗り、金具作り、手打ち釘鍛造までのすべてを完全に手作業(!!)で行っています。

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こちらの工房も本当に本当に素晴らしいので、また改めてご紹介します。

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私は、紫波町でどんどん大切なことを学べる気がする。
地域おこし協力隊着任前から、そんな予感しかしてこない毎日です。

おまけ

「これ使ってもいいよ」と出してくれたおちょこセット。え、おちょこ…?
サイコロで出た目のものを使って飲めるらしいけど、ひょっとこの口は穴が空いてるし、天狗さんは立てることができません。注いだら最後、卓上に置くことなく全部飲めってことですね。唯一小さいおかめだけは安心して飲ませてくれそう。

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そして案の定、飲みすぎて、おかめのような顔して寝ました。

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