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としま・えんどなんて言いたくない

『としま・えんど』。なんと悲しいキャッチコピーなのだろう。としまえんは1926年、大正15年に開園しているというから驚きだ。うちのおばあちゃんの生年に近い。その94年間の歴史を誇るとしまえんが、この八月に閉園する。これはおばあちゃんと会えなくなってしまう、くらい切ないニュースなのだ。

中野区出身の私にとって、としまえんは1時間もかからずにいける最寄りのテーマパーク。私には年の近いいとこがいて、彼女と一緒によく遊びに行ったことを覚えている。ちなみに中学生のときに西武園ゆうえんちでダブルデートをした記憶はうっすらあるのだが、としまえんには何も甘酸っぱい思い出がない。

甘酸っぱくないのにエモい

としまえんにいったのはもう先週のこと。
ラストに滑り込めてよかったぁ〜という気持ちでいっぱいだったのに、今になってものすごくエモい、っていうか寂しい。本当になくなっちゃうのかあ…マジで嫌だな…っていう気持ちが高まってる。

豊島園がなくなって、ハリポタになっちゃうのかよ…。本当ですか…ねえ……嘘って言ってよ………よ……(遠ざかる声)

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買ったグッズのミニトートバッグをみて、しばらくはこころがきしむかもしれない。案外すぐ忘れるだろうか。そこにあったものがなくなる瞬間って、どうしてこんなにも寂しいのだろうか。

というわけで、行ってきた

いったい何年ぶりだろう。よく一緒に行っていた同世代のいとこと、としまえんとの思い出を特に持たない20代の弟と一緒に三人で行った。仲良しか。

弟たっての希望で朝マック。2万年ぶりくらいにハッシュポテト食べたけど美味しい。

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豊島園駅に到着して早々、なんと門の前に行列ができている。
事前にネット決済で予約しているのだが、入場時に受付で紙の引換券に変える、という謎のステップがあり、それが30分ほどの行列を生んでいた。なかなかに過酷な私たちの「としま・えんど」はここから始まった…。

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10数年来ていないうちに、としまえんは乗り物がたくさん入れ替わっていた。あと、いつのまにかトム&ジェリーが公式キャラクターになっていた。
(チケットに載っているのはカルちゃんとエルちゃん)

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(園内MAPはとしまえんHPより引用)

懐かしのアトラクションたち

人の多さと暑さにさっそくやられかけていた私たちは、まずとしまえんの奥を目指した。乗ったのは行列が短めだった「オートスクーター」、いわゆるゴーカートだ。ブレーキはなくアクセルのみ、ハンドルを1回転半させると後進する。走る感じは結構リアルな車のようで、たまにハンドルの具合などで暴走しちゃって完全に道を塞いでいる人などもいた。平和に走る乗り物なんだけど、とりあえず弟には追突してみるよね。

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あと車体の色が経年の具合もあって一台持って帰りたいくらい好みだ。

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お次に並んだのは「コークスクリュー」。猛スピードでひねりがきいた、としまえん屈指のジェットコースター。アトラクションには基本的に「ここから○分待ち」の表示が一切なく、行列に並ぶのは基本的にいちかばちか。(ソーシャルディスタンスの観点で収容人数が減ったこともあり予測が立てづらくなったのだろうか)結局こちらには1時間半近く並ぶことに。
フジロッカーのいとこが、カチカチの保冷剤を恵んでくれた。みんな、真夏の遊園地には保冷剤が必須だぞ!と呼び掛けたくなった。

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(こちらの写真はとしまえんHPより)

カチカチだった保冷剤もすっかり溶けてぬるくなった頃、番が回ってきた。ジェットコースターというものが久しぶりすぎて、正味2分ほどの乗車時間は終始爆笑してしまった。汗水垂らして並んだ1時間半からの、あの2分の濃度ったら。あっという間なのだけれど、笑いすぎて泣いた。乗り物どうこうっていうよりも、「遊園地の楽しさ」の懐かしさの涙だったかもしれない。問答無用にぎゃーって叫んで笑っちゃう感じ、この遊園地の楽しさの記憶が、私にとっては=としまえん、なのだ。みんながこの瞬間のために並んでると思ったら、行列すらも愛しくなった。いや、うそ。暑いのは暑い。

乗り物はアメリカ製らしい。子供のときにはまったくなかった視点だけれどどの時代にどこからきたのか、っていう歴史がすごく興味深い。Wikipediaに事細かにまとめられている。

そしてとしまえんの花形、「フライング・パイレーツ」。こちらも例に漏れず、ソーシャルディスタンスの関係で1列おきの乗船体制。

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「ヒィヤァァァァァァァァ………!!!」

列に並んでいるとき、今叫んでいるのはこの人だ、ってはっきり特定できるくらいめっちゃくちゃ叫んでる中学生女子がいた。その後遠くから、別の乗り物から同じ声が聞こえて来た。

「あ、さっきの子、移動した」といとこ。
「あ、移動したね」と、弟。

昔乗った時は、もっと巨大な海賊船だと思っていたけれど、今みると意外と現実的なサイズに感じた。身長制限140cmに引っかかっていた私とは違って、大人になったのだな。(今も身長は150cmだけど)

としまえんのパイレーツは、ほぼ地面と直角くらいの角度まで上がるのだけれど、「もうこれがてっぺんでしょ」っていう瞬間が五回くらいあって。気づけば私もあの女子中学生みたいな声を出してたかもしれない。
きゃーっていうより、「ヒィヤァァァァァ……!」なんだよな。

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さて、皆様は覚えているだろうか。入場してすぐにあった、蛍光ピンク色の、トップでひっくり返ってスピンしまくる『トップ・スピン』を。あとはぶら下がり式のコースターで高速で一回転して戻って来る『シャトルループ』(体感10秒)、内臓が飛び出るんじゃないかと思うくらいスリル満点な『フライングカーペット』など。私にとって思い出深かった乗り物は、どれも今はもうなかった。

しかし来園するまで存在は忘れていたものの、『ブレイク・ダンス』は現役だったので興奮した。

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背景の絵は昔から色あせていた印象があるけれど…それにしても褪せている。マイケルらしき人やジャネットらしき人などが描かれているがBGMはQUEENだった。

こんな滝のような汗をかいて修行みたいにして乗る乗り物じゃないのだけれど、こちらは列も短かったしですぐに乗れた。案の定ずっと爆笑した。富○急とかナ○スパの絶叫マシンを余裕でこなす弟は「これをアトラクションとは認めない」と言った。弟よ。としまえんの乗り物って、そういうんじゃないのよ。

魅惑のアーケードゲーム

そして実は一番楽しみにしていたのはアーケードゲームのコーナーだ。ミニゲームで高得点を獲得するとそれぞれ商品がもらえたりする魅力的なエリア。並ばずにすむし、なによりも涼しい!ので大人にも嬉しい。

私はとくに「スキーボール」というアトラクションに思い出が深かった。ビリヤードくらいの木の玉をコロコロ転がして目当ての穴に入れていく。こういうゲームって昔アメリカでもやった気がするのだけれど、こういう子供だましみたいなゲーム好きなんです。でも下手なの。

名称未設定のアートワーク 89

昔、クッキーモンスターが入ってるみたいなゴミ箱の蓋がパカパカあいて、そこに玉を投げ入れるみたいなゲームもかつてあった気がするんだけど、それはなくなっていたな。

はじめましてなゲームも多かったけれど、それはそれで楽しい。金の延べ棒をお皿に投げ入れるっていうワイルドなゲーム(ゴールド・ラッシュ)もよかった。金の延べ棒も二百円でガチャガチャで買えるし。あと「電流イライラ棒」って何歳くらいまでのひとには通じるのだろうか。

結局私はひとつも景品が取れなかったけれど、弟は、ミッキーマウスの鉛筆セットと、『笑ってはいけない』の「ダダーン、松本、アウトー!」などの音が鳴るボタン、というB級なおもちゃをもらっていた。そう。アーケードゲームは景品を全力で目指しているものの、もらった景品はたいていいらないのである。

としまえんにまつわるスケールの小さい思い出

何度も行ったはずのとしまえん。なのに私にとって一番の思い出のスケールは果てしなく小さい。

『インディアン』という、食パンみたいな形のゴンドラがぐるぐる回転するというとても目の回る乗り物が、かつてはあった。私は無性にこの乗り物が好きだった。ある日の混雑したとしまえんで行列に並んでいたとき、友達が柱を指差して興奮気味に声をあげた。

「みてみて、ここに、SMAPの電話番号書いてあるんだけど!!!」

当時小学生の私はSMAPが大好きで、そのときは中居くん推しだった。

「えーこれ、本当かなぁ」

「えー、でもここに書いてあるってことはさぁ…。誰が書いたんだろうねえ…。嘘だと思うけど、でもね…。」

心の中で小さく、「もしかして…」という期待がかすめる。
携帯なんてない時代、03ーではじまる根拠のない数字を、私はメモ帳に書き写した。「まぁ嘘だと思うけどね」って笑いながら、すごくドキドキしていた。

結局、電話をかけたのかどうかはあまり覚えていない。だけど、1時間ほど並んだあの時間をドキドキで彩ってくれたあの電話番号のことは、なんだか記憶に残っている。

としまえんが94年の歴史に幕を下ろす。94年。日本初、世界初を叩き出し、広告でも話題になったりと、その存在が日本・東京のエンタメに、地域活性化にと担ってきた役割は巨大だ。しかしそれ以前に、私にとってのSMAPの電話番号みたいなスケールの小さな思い出が一人数個あるはずて、それが94年間としまえんを訪れた人の数の分あると思ったら。そりゃ、元気玉みたいに集めたら地球破壊できるくらいのエモさが集まると思う。

そんなこんなで、今わたしはハリーポッターが嫌いだ。いや、それは嘘だけど。8月31日でとしまえんが閉園してしまうことは、本当にまだ寂しい。

おまけ

寂しいから、最後に、現在のとしまえんのなかでもっとも愛しい動きを見せていた「チャレンジトレイン」の動画を眺めて心を癒す。新型車両【Laview】だって運転できちゃうんだから。これはいったいどこに移設されるのだろうなあ。乗りたい。

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