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企業再生メモランダム・第27回 第4回勉強会 組織と戦略 後編

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

「企業再生メモランダム・第26回 第4回勉強会 組織と戦略 前編」では、「第4回勉強会 組織と戦略」と題したメモの背景とメモの中身の一部について記載しました。

後編では、残りのメモの中身について、ご紹介したいと思います。

メモ「第4回勉強会 組織と戦略」の中身

3.管理職に求められる役割

(1)戦略の策定

① 戦略の策定

管理職は、経営理念、ビジョンや経営戦略などをよく理解したうえで、事業を取り巻く様々な環境要因を把握し、戦略目的を設定し、戦略案を策定します。

その中から、リスクや期待効果に勘案して、最善の選択肢を選び、実行計画に落とし込みます。必要があれば、自ら陣頭指揮をとって戦略の実行支援を行います。

② 重要業績指標(Key Performance Indicator。以下「KPI」といいます。)の決定

管理職は、① 戦略の策定の中で、戦略実行の 成果であるKPIを決定します。戦略に適したKPIの設定をしなければ、後述する(6)オペレーションの監督ができなくなるため注意が必要です。

(2)資源の動員と配分

管理職は、戦略実行のために必要な予算(お金)と人を確保し、自らのコントロール下におけるように会社と交渉します。

予算は自分が策定した戦略案、あるいは投資計画が妥当だと承認された結果として与えられるものです。そのため(1)戦略の策定の明確さや的確さが重要となります。

戦略とそのための資源は自動的に与えられるものではないため、「会社が事業を運営するために自分を雇ったのであり、できる範囲で仕事を受ければよい」という心構えでは管理職は務まりません。

(3)人材開発(人の採用・育成・解雇)

管理職は、人材採用や解雇に関して権限のある人事部や総務部などの部署に対して一定の発言力を持っており、また、人材の育成を行います。

会社が人材を手当てするのではなく、自らの戦略を実行するための適材を選ぶという考え方が大事です。

海外の企業では管理職が採用や解雇の権限を持っていることが多いですが、日本の企業の場合は採用や解雇の権限がありません。

そのため、戦略実行のための人の頭数が確保されている場合は、人材の育成をどのように行うかを考えることが管理職の取り得る唯一の手段となります。

(4)組織作り

管理職は、自分の組織を自らの構想で作ります。役割の設計、分担を行うとともに、必要な人材を自分で調達する能力が不可欠です。事業が大きくなったり、仕事が複雑になったりすれば、それに対して、組織構造を変え、新たな役割を果たす人材を調達していきます。

(5)企業文化の形成(職場の環境)

管理職は、例えばチャレンジ精神を高揚させるような目標設定をしたり失敗を恐れない風土を根付かせたり、戦略実行を促進するような職場の意識や行動規範を形成していかなければなりません。

管理職は人間的魅力に加え、自分の管理する組織の方向性や目的を明確にすることが大事です。

(6)オペレーションの監督

管理職は、部下の日々の業務と進捗状況、成果を把握します。また、戦略実行によって構築するマネジメントサイクルを管理していかなければなりません。

管理職は、自身が不在の間の判断業務が滞ることがないように、オペレーションが仕組みとして機能するよう、設計していかねばなりません。

4.マネジメントサイクル

(1)マネジメントサイクルの要素

マネジメントサイクルは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(確認)、Action(修正)の頭文字をとってPDCAサイクルとも呼ばれ、一定のサイクルで管理のプロセスが行われることを示したものです。

管理職は、前述のとおり、目標を設定し、それを具体的な計画に落とし、組織の構造と役割を決めて人員を配置し、組織構成員の動機づけを図り、具体的な行動を指揮・命令し、部門間の矛盾や衝突を調整し、途中で成果を測定・評価し、必要に応じて修正するという統制活動を行います。

それに時間の概念が加わります。期が終わると、反省を踏まえて再計画のプロセスへ入り、次期もまた新たなマネジメントサイクルを進めていきます。

これを繰り返すことによって、戦略実行が目標に向かって、戦略と現実の問題点を適宜修正し、より効率的に達成されていきます。

(2)管理職にとってのマネジメントサイクル

管理職は、マネジメントサイクルをチェックリストとして活用することができ、自分の活動が組織内で十分な役割を果たしているか、もし問題があるとすればどこにあるかをプロセスの各段階で見直すことができます。

管理職は、大きな組織の歯車の一つとしての役割を無難に果たすのではなく、自らがこのサイクルを循環させる駆動力になることを忘れてはなりません。

創造性、リーダーシップ、変革の推進、組織の進化や部下の創意工夫・参画などを行って、マネジメントサイクルを回していかなければなりません。



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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