企業再生メモランダム・第55回　皆さんへの感謝と今やるべきことについて

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

メモの44枚目は７年前に作成した「皆さんへの感謝と今やるべきことについて」と題したメモです。

メモの背景

私は、対象会社の企業再生において、共に会社の改革に尽力してくれた仲間たちのことを、今でも本当に尊敬しています。

幾度となく記載をしてきましたが、対象会社は社内政治の激しい会社でした。

所詮、私は株主から落下傘部隊として送り込まれた外様です。対象会社のある地元出身でもなく、転々と企業再生をして回る傭兵です。

しかし、経営改革に尽力してくれた人たちの多くは地元出身で、自分のキャリアをかけて、この会社を良くすることに努力をしてくれました。

もちろん、彼らが、社内政治において、私に与したということはありません。

純粋に良かれと思って、私は、会社のため、所属するスタッフのためになることをした。それに彼らが共感し、賛同して、共に行動をしてくれたに過ぎません。

当時、私は若く、進め方が下手な部分も多分にあったと思いますし、改革を急ぐあまりに厳しいコミュニケーションになってしまったこともあったと思います。

そういう中でも、彼らは、しっかりと周囲の人をサポートしてくれました。陰に陽に、そういった行動ができるのは、彼らが高いリーダーシップと能力を有していたからだと思います。

私は企業再生という仕事が好きなのですが、それはこの仲間たちのおかげだと思います。

司馬遼太郎の「坂の上の雲」のように（違う作品だと、テレビドラマ「ＲＯＯＫＩＥＳ」や「スクールウォーズ」のように）、全員が一丸となって、一つのことに向かって努力をすることは素晴らしいことだと思います。

私はこの貴重な経験は人生で忘れることはないでしょうし、今も私を次の仕事へと駆り立てる動機となっているように思います。

メモ「皆さんへの感謝と今やるべきことについて」の中身

先日、幹部社員の一人から「対象会社はまともになった。」という言葉をもらいました。この言葉は嬉しかったです。

この言葉をきっかけに、今回、経営陣及び幹部社員に対して、改めてメールすることにしました。以下は、私なりに誠実に考えて、記載しています。

１．皆さんへの感謝

対象会社が新体制になってから、早いもので約４カ月が経過しました。

対象会社を「まとも」にしたのは皆さんの努力の成果です。経営陣及び幹部社員の皆さんのおかげで新体制になってから業績も良いですし、企業文化も少しずつですが前向きな変化が見られるようになってきたと思います。

この会社を本当に良くしたいと考える「スタッフの一人」として、皆さんには本当に感謝をしています。ありがとうございます。

スタッフ一人ひとりがリーダーシップを発揮して、会社を取り巻く全ての人たちに対して、一緒に会社を良くしようと語りかけて、実行していけば、この会社は必ず良い会社になると思います。

２．今やるべきことについて

私は、将来が分からないからこそ、今を一生懸命に生きるべきだと思っています。

もしかすると明日になったら急に病に伏せてしまうかもしれませんし、事故に巻き込まれてしまうかもしれません。

だからこそ、一日一日を大事に、悔いのない人生を送りたいと考えています。

もっと言うと、今を一生懸命生きていれば、明るい未来が切り開かれると信じています。

対象会社は今も様々な問題を抱えています。問題解決はできるものと思いますが、必ずしも将来の”確実”があるわけではありません。

このような状況下で、しばらく私たちは会社経営をしなければなりません。

しかし、私たちが今、会社のために行わなければならないことは、問題があろうがなかろうが、経営陣が誰であれ株主が誰であれ関係ありません。

実は「会社を良くするため」にやらなければならないことは、会社を取り巻く周辺の状況が変わっても同じなのです。

お客様と向き合うことが会社経営です。正しい経営とはそういうものだと思います。

前述の問題に限定せず、もし少しでも将来に不安を感じる人がいるならば、今、一緒に、会社のために、最大限、一生懸命出来る限りのことをやりましょう！

私はこの会社を本当に良くしたいと考えています。対象会社は社会的にも価値ある素晴らしい事業をしていると思います。私の経営者人生において、この事業に関われたことを誇りに思っています。

経営陣及び幹部社員の皆さんが、会社を良くしたいと願い、実行していけば、会社は今よりもっと良い会社になり、明るい未来があると思います。

今できることは、一生懸命に、今やりましょう！

※ 本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ　代表取締役　小松　裕介
　2013年３月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社（現社名：伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業）の代表取締役社長に就任。同社グループを７年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年４月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年６月より国土交通省PPPサポーター。