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企業再生メモランダム・第28回 第5回勉強会 マーケティング 前編

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

「企業再生メモランダム・第16回 勉強会について」に記載したとおり、私は、対象会社の中堅スタッフに言われて、希望するスタッフ向けに勉強会を開始しました。

メモの21枚目は9年前に作成した「第5回勉強会 マーケティング」と題したメモです。

今回は長くなってしまったので、前編後編の2つに分けて記載します。

メモの背景

「パワーバランス」という言葉がありますが、世の中がいかに微妙なバランスで成り立っているかを思い知らされることが多いです。

例えば株式会社もそうです。

一般的に株式会社では、もし株主が議決権総数の3分の2を一人で有していれば、その会社の定款を変更したり他社と合併したり、自由にすることができます。また、議決権総数の過半数を一人で有していれば、役員の選任を自由にすることができます。

大株主はオーナーと呼ばれ、役員である経営陣よりも、遥かに強い権限を持っています。

この株式会社が大きくなって、もし株式上場をすることになると、何千人という方が一つの会社の株主になります。さらに、この上場会社の規模が大きくなると、株主の数はもっと増える一方で、株式が分散してしまい、オーナーと言われる方や機関投資家ですら数%しか持っていない状態になります。この上場会社の時価総額が大きくなると、その時には株式を買い増すことすら難しくなります。例えば1兆円の1%は100億円です。

株主が散ってしまっているわけですから、株主一人で物事を決めることはできません。このような状況下で、会社における日々の経営は経営陣が担っています。旗を振るのも経営陣です。となると、少数株主はみな、その経営陣の顔色を見ることになります。

面白いことに、このように株主数が増えて株式が分散してしまうと、株主よりも、経営陣のほうが力を持つことになるのです。

会社の取引も同様です。

大口取引先がある会社は、売上比率が高ければ高いほど、その大口取引先の会社に合わせた会社経営をしなければなりません。

これに対して、例えば、飲食店やホテルのように、いわゆるB to Cのビジネスモデルで、一般顧客に向けて、サービス提供している会社があるとしましょう。

もしお客様の数が1万人、2万人とあるようでしたら、一人のお客様は1万分の1、2万分の1なわけです。

本来あるべき姿かはさておき、こうなるとお客様の会社の経営陣に対する発言力は弱くなってしまいます。

対象会社もB to Cのビジネスモデルで、一般顧客に向けて、サービス提供している会社でした。

そのため、赤字会社になって組織がおかしくなるにつれて、スタッフの多くは、一人のお客様ではなく、会社組織の中に気を遣うようになってしまっていたのです。

日々の活動の中で、お客様のことを本気で意識しない・考えないのであれば、マーケティングの発想はあり得ません。

メモ「第5回勉強会 マーケティング」の中身

1.マーケティングとは?

(1)マーケティングの定義

マーケティング研究の第一人者であるフィリップ・コトラーは、「マーケティングとは、個人や集団が、製品及び価値の創造と交換を通じて、そのニーズや欲求を満たす社会的・管理的プロセスである。」と定義しています。

今回の勉強会でのマーケティングとは、「生産と消費を結びつける経済活動を個別企業の視点から捉えるもの」と考えて欲しいです。

(2)コンセプトの変遷

① 生産志向

生産志向とは、需要が供給を上回っていた時代のマーケティング・コンセプトです。経営者は、まず製品(サービス)ありきで、いかに効率良く生産性を高めるかなど生産に経営努力することが中心でした。

② 販売志向

販売志向とは、標準化された製品を大量生産することが可能になった段階でのマーケティング・コンセプトです。会社の技術を生かした製品を生産し、市場でその是非を問うというプロダクトアウトといった考え方が基礎となります。

③ 顧客志向

顧客志向とは、供給が需要を上回り、企業間の競争が激化したいわゆる成熟市場におけるマーケティング・コンセプトです。消費者の集合である市場のニーズを探り、それに合致した製品を開発して市場に提供するというマーケットイン(ニーズ志向)といった考え方が必要となります。

④ 社会志向

社会志向とは、会社のマーケティング活動は、その企業の利潤の増大だけでなく、社会全体に与える影響までをも考慮したものでなければならないというマーケティング・コンセプトです。



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介

 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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