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2020配信ライブまとめ

7ヶ月半の間に

2020年と言えば、コロナに伴うライブ開催中止、そして配信ライブ元年とも言える年だった。

コロナ禍以降で初めて生のライブを観に行ったのは、10月8日のこと。2月25日のPerfume東京ドーム公演以来実に7ヶ月半振りで、季節は冬から春、夏を通り越し、もう秋になっていた。

ここまでライブのインターバルが空いたのは、2004年以来だ。同年後半からライブに行く回数が増え始め、2005年からは毎年夏フェスに行っていた。気付けば15年連続で行き続けたが、2020年に開催された夏フェスはごく僅かで、結局どこにも行かぬまま夏は過ぎてしまった。

あれほど行っていたのに日常からすっかりライブは消え、休日は部屋の片付け等をして地味に過ごしていた。緊急事態宣言時に様々なアーティストがYouTube等で限定公開したライブ映像はかなり観たが、それらは当然新規のコンテンツではない。

この間、急増したのが配信ライブだ。そもそも2月26日、コロナ感染拡大を受けて政府が大規模イベントの開催自粛を要請したのが配信ライブへのシフトのきっかけだった。Perfumeもその日ドームツアーのファイナルを行う予定だったが、当日になって急遽中止が決まった。

今から考えるとやや隔世の感があるが、自粛要請直後は観客を入れてのライブを中止する代わりに同じ会場で無観客ライブを行い、無料で配信する例が見られた。有料でライブ配信をするという概念が未だ浸透していなかったのもある。少しの間我慢すればリアルなライブも開催できるという、今思えば甘い見通しもあったのだと思う。

個人的には生で観たいもの=オンラインでも観たいという訳でもないので、あまり大量の視聴はしていないが、それでもやっぱり時々は観ていた。今回はそんな2020年の配信ライブについての備忘録。

①NUMBER GIRL(3/1@Zepp Tokyo)

中止になった復活ツアーの会場から無料配信されたライブ。今思えばチケット入手が困難な2時間超のワンマンライブを無料で楽しめるというのはかなり太っ腹な気がしてくる。

12月に行われた同ツアーの新木場公演を観ていたので前半特に驚きはなかったのだが、後半「OMOIDE IN MY HEAD」で突然森山未來が登場。フロアで踊り狂っていた。無観客ならではの演出、予想外の人選にネットは大きく湧いていた。

結局この日以降、ナンバーガールはフジテレビの特番出演があったもののライブを再開できていない。復活ツアーの前半で観ておいたのが後になってこんなに効くとは、ね。。夏フェスで観られるはずだった人も、いっぱいいたんだろうな。

②山下 達郎(7/30)

MUSIC/SLASHという新しいライブ映像配信サービスの第1弾として、初めて配信に挑戦した達郎さん。他の類似サービスに比べると特に音質にこだわっており、アーティストの権利を守るべく動画のダウンロードや録画が不可能となっているそうだ。それでも防げない部分はあると思うが。

今回は生ライブではなく、過去のライブ映像だ。そういう意味ではYouTubeで公開されるライブ映像と変わらないと言えなくもないが、アーカイブ配信がなかった事もあり、やはり特定の時刻にお金を払ってライブ体験をするのは気分が違うようだ。また視聴者の中には当日会場に行っていた人も多い訳で、「あのライブをもう一度観られる!」という興奮もあったように思われる。

リアルなライブのように開演前のBGMもしっかり達郎さんが監修していたうえ、場内アナウンスもあった。前半は京都・拾得でのアコースティックライブ、後半は氣志團万博出演時のライブをフルで公開した。氣志團万博は現地に行っており、大雨の中のパフォーマンスが非常に印象的だったので観られてよかった。ちなみにコーラス隊の中にはしれっと竹内まりやさんが混ざっていた。

全曲が終了し、事前にアナウンスされていた70分の尺も過ぎた後、サプライズで1986年のライブ映像が公開された。ロン毛の達郎さんがアカペラを歌い、更に「プラスティック・ラブ」まで!どちらも初公開の映像だったようだ。

初めてのライブ配信は蓋を開ければボリュームたっぷり、大満足の内容だった。ちなみに12月には池袋でスペシャルアコースティックライブ展と題したイベントも行われ、ライブ映像の上映やライブに関する展示を見る事ができた。

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③RISING SUN ROCK FESTIVAL 2020 in EZO on YouTube(8/15)

22年目のライジングが初めてオンラインでの開催を決断。22時から翌朝5時まで、歴代のライブアーカイブスが5部に分けて放送され、合間には新撮トークパートやクッキングコーナー等が挟まれた。

解散したブランキーやミッシェル等の映像もあり、日本のロックの歴史すら感じる豪華ラインナップのライブを部屋で堪能しつつ、コメント欄でフェスを楽しむという新しい文化を感じた。怒髪天・増子さんが酔って本音をぶちまける場面にはヒヤヒヤしたけれど。笑

④FUJI ROCK FESTIVAL'20 LIVE ON YOUTUBE(8/21・22・23)

フジロックは本来の日程通りの3日間で配信を実施。ライブ映像のアーカイブでは海外レジェンド勢が続々登場。今では観る事のできないレジェンドアクトのパフォーマンスを含め、歴代の名シーンが多数公開された。ある意味では歴代で一番豪華なラインナップのフジロックだったと言えよう。

新人の登竜門的ステージ・ROOKIE A GO-GOも例年より数を減らして選出されたアーティストがパフォーマンスを披露した。またサンボマスターの新撮ライブや電気グルーヴの新曲PV初公開など、2020年の要素もきっちり入れてきたところに、今の空気を閉じ込めたいという意地を感じた。

⑤小泉今日子(8/21)

「唄うコイズミさん」というタイトルで初の無観客配信ライブを行ったキョンキョン。歴代のカタログがサブスク解禁されたのを機に行われたこのライブでは、'80年代から'10年代までキャリアを横断した幅広い選曲でパフォーマンスした。

そもそも公式なライブは2012年発売のアルバム「Koizumi Chansonnier」のタイミング以来行われておらず、恐らく2013年のリキッドルーム年越しイベントに飛び入り参加して「潮騒のメモリー」を歌って以来だ。このブランクの間には事務所退社・独立があり、歌手活動が今後行われるのかすら不透明な状況であった。

披露したのは以下の10曲。3人編成のアコースティックセットで、大好きな「優しい雨」が歌われたのも嬉しかった。

二人
夜明けのMew
連れてってファンタァジェン
赤い金魚
100%
渚のはいから人魚
あなたに会えてよかった
優しい雨
The Stardust Memory
三日月ストレッチ 背すじのばし編

⑥サンボマスター(9/12)

フジロックオンラインで公開された「フジロック イズ ノットデッド」に未公開部分を追加した完全版。個人的にサンボマスターは2011年の震災を機に更にライブが胸を打つようになったバンドだった。今回のコロナ禍でもサンボの楽曲の持つパワーは本当に切実に響いてきて、思わずウルっときてしまう。

これまであらゆるフェスを湧かせてきたであろう「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」「できっこないを やらなくちゃ」といった定番曲は言わずもがなだが、2020年リリースの「忘れないで 忘れないで」「花束」も、実に互角の輝きを放っている事に驚く。結成20年を迎えても、全く衰えの無いバンドだ。ステージだけでなく会場全体を使い、そこに苗場食堂やテントエリアがある体でパフォーマンスするのも、とてもよかった。

⑦SCOOBIE DO(12/27)

年末恒例の「あなたが決める!年忘れリクエスト・ベストテン!」企画を初のオンライン配信で行ったスクービー。これはファン投票でセットリストが決まるライブで、その年によって投票対象曲は異なるのだが、今回はカバー曲以外の持ち歌全てが対象となった。

しかし投票権があるのはファンクラブの会員。リード曲だけでなく、ライブであまり披露されないものの根強い人気を誇る曲が複数ランクインした。ちなみに本当は9位が他に3曲(「Private Lover」「路上のハードボイルド」「恋は魔法」)あったのだが、ベストテンという事で2曲に絞るためクジ引きを実施し、「イキガイ」「バンドワゴン・ア・ゴーゴー」が選ばれた。

9位ながら演奏されなかった曲を含めたランクイン13曲を収録アルバム別に見ると、最多ランクインしたのは2004年リリースの「Beautiful Days」(3曲)。1位の「また逢う日まで」も今作のラストを飾る楽曲だ。個人的にもずっと一番の名盤だと思っているので、今回の結果には大納得。クレイジーケンバンド・横山剣さんが褒めていたという「無敵のバカ」、大好きなので久々に披露されてよかった!

セットリストと順位は以下の通り。
イキガイ(9位)
バンドワゴン・ア・ゴーゴー(9位)
新しい夜明け(8位)
無敵のバカ(7位)
ensemble(6位)
Sugar(5位)
アフィルグ(4位)
だめだこりゃ(14位/もうすぐベストテン)
同じ風に吹かれて(新曲/期待のニューカマー)
エイリアンズ(3位)
Cold Dancer(2位)
また逢う日まで(1位)
[EN]
また会いましょう

その他、トークイベント等も見てるけど、今回は割愛。小沢健二が歌無しでひたすら朗読するイベントもあったなあ。

[総括:ライブにおける価値観の変化]

配信ライブでは特に、リアルなライブに比べると開始までに踏む手順の少なさを実感した。時間までに用事を済ませてパソコンを開けてログインするだけなのだ。

逆に生のライブに行く事がいかに面倒なステップを必要としていたのか、まざまざと実感させられた。先行予約などでチケットを取る、当日会場まで行けるように予定を空ける、コンビニで発券する、ライブに向けて予習する、グッズをチェックする...今まで当たり前にやっていたが、よく考えるとタスクがとても多いのだ。

その点、配信ライブはアーカイブもあり、開演までに気合いを入れる要素があまりにも少ない。ライブの予定を忘れそうになるほどだ。

黎明期ならではの問題としては、適正価格だろうか。規模や知名度にもよるものの、メジャーアーティストがしっかりと作り込んだライブを提供する場合、3000円台が今のところ多い。
前述の山下達郎に関しては4,500円
で、配信ライブにおける現在の平均的な価格に比べると高かったが、ただ満足度は総じて高かった。それは+αの金額を払ってもよいと思えるような付加価値があったからだ。

第一に、まず音質がよい。そもそもこのサービス自体、音質に人一倍の神経を使う達郎さんのお眼鏡に適うように開発したものらしい。その達郎さんがGOサインを出した、という事がクオリティの高さの何よりの証明だ。視聴してみてそれは本当だったし、オンエアを見ていた達郎さんも満足したんだそう。

次に、達郎さんのライブ映像自体のレアさだ。これまでライブに関してはテレビ放送もDVD化もされておらず、会場以外でライブを観る機会は、映画館でパフォーマンスを上映した時ぐらいしかなかった。今回初めて演奏する姿を見た人もいたと思う。

また、達郎さんのライブは普段のチケットがそもそも取りづらい。年々ライブの評判が広がっていくにも関わらずアリーナクラスの会場で演奏する事は一切無く、チケット入手の難易度が上がってきているのが現状である。

フェスで観ておくというのも手だが、達郎さんが出演するのは2~3年に1回程度なのでその機会も多くはない。今回はチケット争奪戦に心を砕く事なくライブを楽しめる機会でもあった。

ただ、今回のところは、達郎さんのライブを観られる!というレアさも含めての4,500円だった気もする。これが、ちっともレアではない大多数の他のアーティストだったらどう思うのか。このあたりは配信ライブの数を重ねてノウハウが積み上がっていく事でクオリティが上がり、価値観が変わっていく可能性もある。

とは言え、そもそも「高音質で聴く事に意味がある」タイプのアーティストでないと、このサービスには適さないだろう。例えばオケに合わせて歌うようなアイドルだったら、むしろ違うサービスを使った方がよさそうだ。

また配信ライブは、同じ内容で数を打ち過ぎるとマンネリ化してしまうのが難しい。ツアーのように同じ事を何度も行う訳にはいかないのだ。

コロナ禍が長引く今、配信ライブも2回目以降に入ってきているアーティストは多い。そこでどうマンネリを防ぐのか?キャリアが長く持ち曲が多いアーティストほど変化をつけやすく有利とも言えるが、ライブの工夫はセットリストだけではないはず。今こそ他のアーティストでは味わえないようなライブを配信で行い、次の有観客ライブに来たいと思ってもらえるようなパフォーマンスが必要になってきている。

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