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つんく♂の原点、シャ乱Qに魅せられたあの頃

あれは25年前、1995年5月のこと。

派手な衣装にクセの強い眉毛、やたら耳にこびりつくホーンセクション。
ジャズ・ファンク系のアレンジなのにメロディは歌謡曲で、気付けば口ずさんでしまう名曲。

そう、シャ乱Qの「ズルい女」だ。

キャッチーさ、個性的なヴィジュアル、音楽番組全盛時代におけるトークの面白さ、これらは子供ながらに刺さるものがあり、ジワジワとハマっていった。

考えてみたらサビでは、Bye-Bye、ありがとう、さよなら、と幼稚園児でも理解できるシンプルなフレーズが3つも続いている。これは多くの人が口ずさんだ要因の一つだろう。
でも全体的には尽くしてきた女との別れを歌っていて、子供にしては難しい、背伸びした内容だ。僕は意味も分からず、音だけで歌っていた。
ちなみに小西康陽はこの曲をコンビニで聴いた時に、何でオリジナル・ラブをバックに長渕剛が歌ってるんだ?と思ったらしい。

以来ヒット曲を連発し、1年経ったタイミングでリリースされた初のベスト盤「シングルベスト10 おまけつき」。これが初めて買ったCDだ。

当時デビューから4年というタイミングで、最新シングル「いいわけ」が10枚目のシングルだった事から、1~10枚目のシングル表題曲を網羅。
更にデビューのきっかけになった「ラーメン大好き小池さんの唄」を"おまけ"として収録している。シングル10枚を並べたアートワークも含め入門編としてこの上なく分かりやすく、初めて手にするリスナーには最適だ。

ベスト盤と言えば、1997年リリースのGLAY「REVIEW~BEST OF GLAY~」がブームの先駆けとされる事が多い。それまではレコード会社移籍や解散などのタイミングで出す事が多かったベスト盤を、ブレイクし最も勢いのある時期に出すという施策は大成功。当時のアルバム歴代セールス記録を塗り替えた。

しかし考えてみたら、1年早い1996年リリースの今作も同様の試みだった。当時シャ乱Qは5枚のアルバムをリリースしていたが、子供には5枚もCDを買う金銭的余裕などない。無論、インターネットで聴ける時代でもない。

だから今作でシングル曲だけでも全て知る事ができたのは、とても大きかった。それも人気のピークを過ぎてからではなく、全盛期のうちに聴く事に確実に意味があったと思う。

シャ乱Qは時にユーモアを織り交ぜ、聴き手を常に驚かせながらヒット曲を重ねてきた。

「シングルベッド」「ズルい女」と男の女々しさを描いたかと思えば、次のシングルは「空を見なよ」。聴き手を優しく鼓舞するような穏やかな曲だ。

かと思えば次作「My Babe 君が眠るまで」は分かりやすくベッドの歌。そして「いいわけ」では卑屈な男の叫びをこれでもかと歌う。

シャ乱Qの歌詞に出てくる男は、どこが悲哀の漂う人物が多い。後にプロデュースするハロプロ作品では孤独や寂しさを抱える女性を描いて共感を呼ぶ事になるが、既にその片鱗は見せていたと言える。また「LOVEマシーン」をはじめとしたディスコサウンドの楽曲のルーツも、シャ乱Qで感じる事ができる。

つんく♂の才能ばかりに目がいきがちだが、「上・京・物・語」や「空を見なよ」のように、彼が作詞作曲に関わっていないヒット曲もある。またステージでの視覚的な面白さ、個々のキャラ立ちも優れたものがあり、米米CLUBなどの系譜に連なるエンターテインメント性の高いロックバンドだった。後のシーンにも少なくない影響を与えたと思われる。

その分、硬派な音楽ファンには軽視されたのかあまり支持されなかった印象がある。'10年代以降、つんく♂のハロプロ楽曲でのソングライティングは改めて見直されているが、原点となるシャ乱Qの再評価までは及んでいないように思う。当時は子供ゆえ全く意識せず感覚的に手にしたCDだが、なかなか悪くないセンスだったと思う。最近発売された「ズルい女」の7インチが既に完売した事もあり、今改めて聴かれるべきバンドだ。

あとはかなりの頻度で更新されているのに再生回数が伸び悩むはたけのYouTubeチャンネルを誰か何とかしてあげて下さい。。

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