【SUISEI WORKS🪐】「QUEEN’S MOTEL」の舞台裏｜HOTEL SHE, × 泊まれる演劇で挑戦する唯一無二の宿泊体験づくり｜泊まれる演劇 特集Vol.1クリエイティブ編

株式会社水星のエンターテインメント事業部が展開するホテルに滞在しながら鑑賞・体験する没入型の演劇作品「泊まれる演劇」。日本で唯一無二の宿泊型イマーシブシアターとして、これまで、累計13作品、のべ10000人以上のゲストを動員。これまでの演劇や宿泊体験の枠に留まらない新しい体験として今、大きな注目を集めています。

水星の公式noteでは、過去にプロデューサーの花岡さんに、泊まれる演劇誕生の背景から、前作「Moonlit Academy」の見どころについてお話を聞いた記事を配信しました。

多くの反響を受けて、今回は全3回にわたって「泊まれる演劇」を特集。第1弾では、現在HOTEL SHE, KYOTOで上映中の作品「QUEEN'S MOTEL」(2024.5/17～8/31)を題材に、泊まれる演劇 プロデューサーの花岡さんと、HOTEL SHE, KYOTOの支配人岸さんの2人に、HOTEL SHE, ×泊まれる演劇のチームだからこそ実現できた唯一無二のこだわりポイントについてお話をうかがいました。

プロフィール

花岡直弥
エンターテイメント事業部マネージャー・泊まれる演劇プロデューサー
1993年奈良生まれ、慶應義塾大学SFC卒。 広告会社にてデジタルマーケティングに従事した後、2019年水星入社。同年「泊まれる演劇（現エンターテイメント事業部）」立ち上げ。以降事業マネージャーとして、全作品の統括プロデュース・クリエイティブディレクションを担当。原案制作や物販・料飲の企画開発、WEBからSNS運用まで一気通貫したマーケティングセールスなど、「作る」と「伝える」を緻密に計算した戦略的クリエイションを得意とする。

岸えりな
HOTEL SHE, 統括マネージャー・支配人(HOTEL SHE, KYOTO)
1994年、兵庫県丹波市生まれ。同志社大学文学部美学芸術学科卒業後、住宅設備メーカーで法人営業を行いながらフリーランスでデザイナーを経験。ホテルという手段を通して世の中に新しい選択肢を与える仕事に興味を持ち、水星に入社。現在はHOTEL SHE, KYOTOの支配人とHOTEL SHE, の統括ブランドマネージャーを兼務しながら、水星のインハウスデザイナーとして全社的なグラフィックデザイン業務までを幅広く手掛ける。

最新作「QUEEN’S MOTEL」は不思議の国のアリス×平成カルチャー
HOTEL SHE, の空間や世界観を活かした作品

ーまずは、「QUEEN’S MOTEL」の作品の概要について、プロデューサーの花岡さんからお話をうかがえたらと思います。

花岡
泊まれる演劇は年2回公演をやっていて、最新の公演が現在HOTEL SHE, KYOTOで上演中の「QUEEN’S MOTEL」となります。まず前提として、本作に限らず泊まれる演劇では、衣食住、五感を通した、ホテルだからこそ提供できる体験をつくりたいなと思っています。なので、演劇だけでなく、宿泊をふくめた全体の体験としてこだわっているということをお伝えしたいです。

ー今作は、「不思議の国のアリス」を元にした作品ですよね。この題材を選んだ理由や、泊まれる演劇ならではのオリジナルポイントについて教えてください。

花岡
ニュースの報道などを通して「イマーシブシアター」自体の認知度が上がる中で、
これまで以上にはじめてイマーシブシアターを体験するお客様が増えると考えました。その上で、取っ掛かりとして気軽に楽しんでもらえるように、多くの方が知っているであろう「不思議の国のアリス」を題材にした作品をつくりました。

また、泊まれる演劇では、常に自分たちがもっているリソースをどのように活かしていくかということを考えています。例えば、過去の作品「雨と花束」では、梅雨の時期に上演することが決まっていたので、雨という要素が活かせる作品にしました。また、前作の「Moonlit Academy」の場合は、同じ施設で連続して開催するという制約をプラスに変える工夫として、変わった学校が舞台のシリーズ作品にしました。

花岡
今回は、単に普通の「不思議の国のアリス」をやるのではなく、しっかり水星の強みが活きてくるような世界観にしたいと考え、平成カルチャーという要素を盛り込んでいます。

水星がこれまで手掛けてきたイベントやぼくたちが影響を受けて来たカルチャーをベースに、元々は中世ヨーロッパ的な世界観の「不思議の国のアリス」を現代版にアレンジしています。

QUEEN’S MOTEL ｜泊まれる演劇

ー今作では、HOTEL SHE, KYOTOの支配人を勤める岸さんが、様々なデザインを手掛けていると聞きました。現場のスタッフが運営だけでなく、制作から入るのは今作が初めてだと思うのですが、どのような経緯で、現在の体制になったのでしょうか？

岸
最初は、去年の年末に花岡さんからお話をいただきました。今作のテーマが平成カルチャーということで、私自身、レトロな雰囲気のあるキャッチーなデザインが得意ですし、私がこれまでHOTEL SHE, KYOTOのクリエイテイブを通して、培ってきたデザインのスキルを活かせたらいいなと思いました。

また、以前からホテルスタッフが泊まれる演劇の制作過程に関わっていけたらいいのにと考えていたので、泊まれる演劇チームとホテルチームの絆を深めるきっかけになればと思い、是非、デザインに挑戦したいと思いました。

泊まれる演劇×HOTEL SHE, 密な連携によって、細部までこだわりがつまった宿泊体験が実現

ー現場の運営を担っているホテルスタッフが制作段階から関わることによって、
効果を実感していることなどはありますか？

岸
普段のホテル営業では、私達がゲストと直接接点を持つのはチェックインの時にが多いのですが、泊まれる演劇の期間中は、チェックインは私たちスタッフは対応しないので、朝の時間のグッズ購入時にゲストとお話しする時間を取れることが多いんです。

その際に、作品の制作過程から携わっていることで、迷っているゲストにより深い視点からおすすめができると感じていました。グッズ制作に対するこだわりなどを、私から他のアルバイトさんにも伝えるようにしています。

水星には「愛せるものをつくろう」というVALUEがありますが、空間づくりからサービスの提供まで、全部自分たちでやっているから、施設に誇りを持っているというところがあります。今回の泊まれる演劇でも、私やデザイン出来るホテルスタッフの原さんがつくったものがあることで、他のスタッフもふくめて、より愛情深く作品に関わることが出来るようになっているかと思いました。

花岡
今回、会場でペイペイが使えるんですよ。高いニーズがあるので導入したいと思ったのですが、今回の物語の舞台は30年前という設定があるので、どのように整合性をつけるのかを考えなくてはなりません。通常だったら、「ペイペイがない時代なので～」と諦めるか、舞台の時代とズレていても「これはそういうものなんで～」と押し通すかだと思うのですが、今回は、岸さんがペイ放題というものを考えてくれました。

花岡
泊まれる演劇では、物語の設定に寄り添いながら、ユーモアのあるクリエイテイブがところどころにあって、それらによって物語の世界や体験全体の説得力が上がっていると感じます。

実際にお客様のアンケートを見ても、そうした細部の拘りに対して「良かったです！」と仰ってくださる方が多いんですよ。ただイケていてカッコいいだけではなく、ちょっとユーモアがあるのが水星らしさだと思うのですが、水星メンバーにも初期段階から企画や制作に入ってもらうことで、そうした細部の体験へのこだわりが実現出来ていると感じています。

ー泊まれる演劇×HOTEL SHE,の密な連携があるからこそ、細部へのこだわりが実現出来て、結果、全体の体験価値の向上に繋がっていると。

岸
そうですね。今回は制作過程からスタッフが関わっているので、細かい改善が、今までよりスピード感を持って取り組めている気がします。

例えば、泊まれる演劇では、舞台美術と一緒にお写真を撮ることを楽しみにされているゲストが多いのですが、館内は暗い場所が多いという課題がありました。
すると、現場から「リングライトを貸出したらいいのでは？」という意見が上がって、じゃあそのPOPを私がつくりましょうということですぐ実装出来たということもありました。

花岡
お客様からのご意見をお伝えしたら次の日には変わってるみたいなことが多くて感動しています。

泊まれる演劇の醍醐味は、「宿泊体験である」というところにあると思っています。演劇やエンタメが主役のコンテンツというよりは、クレイジーな宿泊プランをお客様に提供しているという感覚です。世の中で、温泉や豪華な料理など様々な宿泊体験を提供しているホテルがある中で、我々はエンターテインメントを提供していると。

通常、演劇を制作する時って、制作を丸っと外部ベンダーに委託することが多いんです。我々の場合は、企画の立ち上げから演目制作、運営まで、トータルプロデュースするというところが特徴なのですが、それはやっぱりホテルとして「宿泊体験をつくりたいから」なんです。

1泊2日の間だけではなく、お客様の人生に楽しみを提供出来るような宿泊体験をつくりたい

ー今回、岸さんが手掛けられたクリエイテイブについて、注目ポイントを教えてください。

花岡
今回、岸さんには、QUEEN'S MOTELのロゴとバーのメニュー表などのデザインをしてもらいました。レシートに印字してあったりして、意外とそういうところに、お客様が「ここまでやっているのか」と喜んでくださるんです。レシートをコレクションしているお客様もいるとかいないとか(笑)

岸
ロゴについては、今回ストーリーで時間を行き来するという設定があるのですが、ロゴは変えられないので、2024年でもいけて、30年前でもいけるテイストのロゴをつくりました。不思議の国のアリスだけど、中世のヨーロッパにも、アメリカのダイナーにも馴染むようなバランスの良いデザインを意識しました。

ー今回、グッズについてもこだわりがつまっているとか。

岸
今回、SNSで感想を見てる中では、使いやすいものが多いという意見を見ていました。花岡さんと打ち合わせをしている中で、今までのグッズの売れ行きや、どういうものが良さそうとか相談していて実生活で使ってもらえるものを考えていました。

花岡
今回は、靴下やピンバッチ、ギャザーバックなど、ファッションアイテムが多いんです。

これまで、Ｔシャツなどをつくっていたのですが、泊まれる演劇に来てくださるお客様はドレスアップしてくださる方が多いので、コーディネートの中に取り入れられるものを意識してつくりました。

お客様が泊まれる演劇を楽しむ際に、1泊2日の宿泊体験の時間だけでなく、「次はどんな服を来て行こうかな」とわくわくしながら、楽しみにしている時間も大きな価値だと考えているので、そのような点を意識した結果、今回の様な実用的なワインポイントアイテム中心のラインナップになりました。

ーフードはHOTEL SHE, OSAKAのOGの吉富さんのプロデュースと聞きました。
こちらはどのようなコンセプトになるのでしょうか？

岸
物語のテーマがお茶会ということで、ティータイムっぽいを世界観を演出できるように、メニュー表や、ライスグラタンの旗、カクテルのコースターなどをデザインしました。

私たちホテルのスタッフが、フードのデザインからオペレーション設計まで、全体に関わっているので、物語の世界観へのマッチなどを含めたクオリティをコントロールしながら、無理ないオペレーションで提供することが出来ていると感じています。クオリティとオペレーションの両立がうまくいっているのは、スタッフに制作面にも携わっている人がいるからこそかなと思います。

花岡
公演は夜まで続くので、夜は軽いものを食べたいというお客様もいらっしゃいます。そんなニーズを受けて、にんじんを使ったポタージュをつくっていたり、公演期間中、アンケートを見ながら、料金や盛り付けなどを絶妙に調整しています。お客様の満足をとことん追求していくというのはホテルならではのホスピタリティーなのではないかと。

ー様々な細かい体験の設計について、ゲストの意見を元に常にアップデートしているんですね。

花岡
そこは、日本一と自負しているくらいこだわっています(笑)
お客様からいただいたアンケートは、水星メンバー、出演キャスト、クリエイティブスタッフら全員ですべて目を通しています。週１でディスカッションもしていて、アルバイトスタッフも含む全員が「少しでもゲストに喜んで欲しい」という強いオーナーシップを持ちながら、ワンチームで取り組んでくれています。今ではそれが、泊まれる演劇全体に流れるカルチャーになっています。

今回から、ドリンクバーをはじめたのですが、それは現場のみなさまからご提案をいただいてはじまった取り組みになります。HOTEL SHE, KYOTOで導入して評判が良かったものを泊まれる演劇で導入していて、そうした点でも、泊まれる演劇とHOTEL SHE, KYOTOのシナジーが生まれていると感じます。

ー演劇チームとホテルチームの連携があって、はじめて、実現する企画なんですね。

花岡
そうですね。よく、他のホテルさんから、うちでもやりたいとお声がけいただくことがあるのですが、気持ちはありがたいと思いつつ、そう簡単に出来るものではないのだろうなと(笑)

岸
確かに、なかなか難しいと思いますね（笑）

ー公演も残りあと1ヶ月を切りましたが、現在の反響や手ごたえ、また、今後の意気込みなどあれば教えてください。

花岡
通常のホテル宿泊と、泊まれる演劇では、提供している体験は異なりますが、「旅情」を提供しているという点では共通していると思っています。

元々HOTEL SHE, など水星が手がけるホテルでは、「旅情」を提供している側面が強いのではないかと思うんです。つまり、ホテルに来ている時間だけが宿泊体験ではない、お客様の日常生活にも何かポジティブな価値が提供出来るサービスをつくろうという考えが水星にはある。

泊まれる演劇の考え方もこれに近くて、実際にお客様がお金を払ってくれているのは、1日/365日かもしれないけど、お客様目線で考えるとそれ以外の364日/365日こそが大切な日常です。そんな日々の生活シーンに対して、我々はいかに、ホテルという箱を通して、ワクワクする発見や楽しさを提供できるかに興味があります。

出来るだけお客様に良い写真を撮って欲しい。電車の帰りの時間に見返したりとか高校時代の友人と会った時に、「最近これに行ったんだよね」「めっちゃいいじゃん」と盛り上がる。そんなワンシーンにこそ我々が提供したい価値の本質があるのではないかと思っています。あくまで、ホテルやエンターテイメントはきっかけ、お客様の生活を良くするための装置である。その考えが、泊まれる演劇のチームも、ホテルチームも共通していると感じます。

だから、現場から「もっといい写真が撮れるアイディア」が自然と出てくる。カタチは違えど、届けたいものは一緒だから。

岸
HOTEL SHE, には「ホテルはメディアである」という考えがあります。私達はホテルを旅行先のただの寝床ではなく、お客様の人生の目的になるような場所にしたいと思っています。今回、泊まれる演劇「QUEEN'S MOTEL」の制作、運営をご一緒させていただく中で、泊まれる演劇は、まさに「ホテルはメディアである」の体現だと思いました。

だから、HOTEL SHE, がHOTEL SHE, であるためにも、年に1回泊まれる演劇をやっていることはすごく重要なことだと感じています。

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QUEEN'S MOTEL　※チケットは全日程完売となっております

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