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切なさを心に貯める愛しさよ

普段よりよくない目覚めで迎えた今朝。
カーテンの隙間から、温度の低い光が入ってくる。それを、あたたかな布団と一緒にやさしく抱きしめた。

四季の中で、秋が一番好きだ。

外を歩くと鼻先に届く、金木犀の香り。
枯れた葉たちをさくさくと踏んで歩く、木の葉の道。
独特の香りに包まれながら、地面を一面黄色に染めるイチョウ。
少し冷たく、切ないのに清々しい風。
そしてこぞってTVで映す、赤やオレンジに衣替えした紅葉の木々たち。

目先のビルの景色も揺れるほどのむさ苦しい夏を抜け、一転して手先までも悴むほどの冬が訪れる。
秋は、そんな季節を超えていく私たちへの、少しの間のご褒美のような感じがする。

そうして暖かく誘う布団から抜け出すと、私は身体を起こそうと、音楽をかけた。

最初に流れてきたのは、菅田将暉さんの歌う、あいみょんさんの「ふたりの世界」。
女性目線なのに無骨に流れる声。それらが寝起きの耳に響いて心地よい。
次に、米津玄師さんの「馬と鹿」へと繋がっていく。最近ドラマの主題歌にもなっていた曲だ。
菅田さんの声で感じた切なさを、米津さんでもまた心に積み重ねていく。
今日も、YouTubeのランダムがとても良い仕事をするな…と、感嘆符が溢れながらも手は朝の準備を黙々と続けていた。

そして最後にクリープハイプの「バンド二〇一九」が流れた。
クリープハイプは好きなバンドだけれど、初めて聴いた曲だった。
MVに注目して見ると葬儀場で、バンドとの不釣り合いさに引き込まれた。すると、こんな歌詞を歌っていた。

「今はひとりで歌いたいから、少し静かにしてくれないか
こんなことを言える幸せ 消せるということはあるということ」

確かに、と、思った。
どうしても隣の芝が青く見え、得られていないものばかりに注目してしまうが、それができているのは、得ているものがあるからじゃないだろうか。
衣、食、住。親しい人と好きな音楽。心地よく、大好きな季節。
じゅうぶん、幸せじゃないか。

そうこうしつつも洋服を選んでいたのだが、鏡に写る自分が身につけていたのは、猫の顔で総柄になった柄シャツだった。
好きなシャツのだけれど、個性的故に中々着る場所を選ぶ服なのだ。
うーむ、盛大に影響されたな…。と思いながら、頭にこの言葉がふっと浮かんだ。

『エモい』
エモいは、英語の「emotional」を由来とした、「感情が動かされた状態」、「感情が高まって強く訴えかける心の動き」などを意味する日本のスラング。感情が揺さぶられたときや、気持ちをストレートに表現できないとき、「哀愁を帯びた様」、「趣がある」などに用いられる。(Wikipediaからの引用)

この、今の気持ちは『エモい』だな、と思った。
切なくも心地のよい秋に、無骨でざらざらした声で響くこいのうた、そして、それらの日々が幸せだということ。

気付いた幸せを大事にしつつ、きっとすぐに終わってしまうこの秋をぐっと噛み締めておこう。
そして、心地よいが風邪を引かないようにと、未来の自分と皆さんに言葉の魔法をかけて、この散文を終わることとしよう。

#エッセイ #秋 #邦ロック #みんなで作る秋アルバム   

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