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日記

6月19日(火) 天気 雨のち晴れ

日記なんて、小学校以来書いた記憶がない。今日妻から、
「日記でもつけてみれば? ボケ防止になるわよ。」
と皮肉られたので、おそらく50年ぶりに日記というものを、かの有名な坊さんのようにつれづれなるままに書いてみようと思う。

今日は朝7時に起床。朝から雨が降っていたので部屋に朝日が差し込まず、少し寝覚めは悪かった。のそのそとベッドから出てリビングに向かうと、とんとんとリズミカルに包丁を動かしている妻と軽く言葉を交わす。

「もうすぐで出来るからちょっと待ってて。」
妻に促され、私は家の中での定位置に座り今日の朝刊を眺めた。ほかほかのご飯の匂い。出来立ての味噌汁の匂い。私は食事前のあの時間が好きだ。どれだけ機嫌が悪くても、おいしそうな匂いを嗅ぐとたちまち幸せに満ち溢れてくる。

食事が終わった後は、いつも食後の運動を兼ねて散歩することに決めているのだが、今朝は雨が降っていたので断念。

私は幼少期から雨の日が嫌いだった。湿度が高くなると体調を崩すし、濡れることが何よりも嫌いだった。だから今でも風呂が嫌いで、入ってもすぐ出てしまう。逆に妻は風呂が好きなようで時に3時間ほど入っている。私からしてみれば到底考えられない行動だ。今も妻は長風呂の最中で後小一時間は出てこないだろう。

さて、もうおおよそ日記とは言い難い文章になってきているが、妻が風呂から出るまでの時間つぶしだ。それにこの日記はつれづれなるままに書くことを決めていたのでこのまま書き進めていこうと思う。

その後、昼食を食べ終えたときには雨が上がっていたので、妻と食後の散歩に出た。

そういえば、妻と出会って今年で40年になるが、一緒に散歩したのは久しぶりだった。以前、私たちは共働きで互いに忙しく、そもそも一緒に過ごす時間があまり持てていなかったので、私たちの仲は次第に冷めていった。しかし、定年を迎えて二人でいる時間が急激に増えてから、私たちの仲は良くなったように思う。これまでは、互いの職種が異なり家を出る時間や休日がばらばらだったこともあって、別々にしていた寝室を一緒にしたし、度々連れ立って買い物に行くこともある。正直付き合っていた当時より仲が親密になっていると思う。

そして散歩から帰ってきた後、妻が夕食を作っている間、私は書斎にこもり本を読んだ。学生時代は本の虫で一日一冊以上は本を読んでいた私だが、社会人になってからは読書の時間があまりとれず、読みたいと思い買った本は積読状態だった。だが、定年後にたくさんの時間ができたことでここ最近は毎日、本の世界に没頭するようになった。

そうして小一時間経った頃、妻からの「ごはんよ」という呼びかけがあったのでリビングに。どうやら本に没頭しすぎていて、数分間気付いていなかったようで妻に少したしなめられた。小さい頃から本を読んでいるときには周りが見えなくなるようで、よく両親に叱られていた。妻からお小言をもらうたびにそれを思い出し改めなければと思うのだが、毎日懲りずにやってしまう。

夕食を食べ終わった後、ぼーっとテレビを見ていたらうとうととしてきたので必死に力を振り絞って風呂と歯磨きを済ませた。最近活動時間がどんどんと短くなっていて、本を読んでいたりテレビを見ていたりすると、気付かぬうちに寝てしまっていることが多くなってきた。

そして、今現在に至る。これを書いている現在も眠気が少しずつ襲ってきている。とりあえず思ったことをひたすら書き、手の動きを止めないことで、眠気と戦っている。しかし、そろそろ書くこともなくなり、眠気に負けそうになってきた。これはまずい。ここで、ドアの向こうに人の気配が戻ってきた。どうやら妻が風呂から上がってきたようだ。そろそろ日記はここで切り上げて寝るとするか。

日記を書き終えた彼はペンを置き、少し伸びをした後にベッドに入って、コードをコンセントに差した後耳たぶのボタンを押して眠りについた。


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