マガジンのカバー画像

短歌

109
運営しているクリエイター

#短歌連作

お弁当

お弁当

わたし用の梅干しといもうと用のカリカリ梅と母からの愛

実家の卵焼きはしょっぱい味でいつもいちばん最後に食べた

昨日の夕飯がおでんだったから今日のお昼はおでん弁当

運動会 タッパーに敷き詰められたペンネとおにぎりをプラフォークで

いつからか変なふりかけが入ってて数少ない母のユーモアだった

母の作るおにぎりはいつも混ぜご飯で春の花畑のようだった

ランチバッグに季節の果物を入れる母 さくらん

もっとみる
短歌30首連作「あぶく」

短歌30首連作「あぶく」

朝日浴びふわりと風受けてなびく春色のAラインスカート

お味噌汁に浮かぶネギの小口切りみんな揃ってBの形

CCレモンとはしゃぐ声 いつの時も変わらぬ手遊びの形

「リモコンにDボタンが付く瞬間を見に行く時間旅行」¥30,000

子供の頃からスポーツはてんでダメですもちろんeスポーツもです

登校班君がぼくを呼びに来る声はいつもfff(フォルテッシシモ)

君の弾くひどくかすれて不安げな『G線上

もっとみる
短歌5首連作「武蔵」

短歌5首連作「武蔵」

西の空霧の向こうで禍々しい光を放つ武蔵の塔よ

知らぬ街一人で歩く心細さ 道標には武蔵の塔よ

君がまだ小さい頃から成長を見届けてきた武蔵の塔よ

君がそばにいることが当たり前だった 寂しくなるね武蔵の塔よ

雨の日も晴れてて死にたくなった日も変わらずにいて武蔵の塔よ