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将棋ペンクラブ大賞『観戦記部門』の、観戦記って?  その1

 
 将棋ペンクラブ大賞は3部門ある。観戦記部門、文芸部門、技術部門だ。
 
 我々幹事は長く携わっているのでこの3部門にまったく違和感を持つことはないが、一歩引いて考えてみると、『観戦記部門』ってなんなのかと思ってしまう人が案外多いかもしれない。
 
 『観戦記部門』の観戦記とは、将棋の対局の記録だ。新聞の、生活面やスポーツ面などの下部に載っている、将棋の局面が1個か2個描かれている横長の記事と言えば分かるだろうか。大抵、囲碁とセットになっている。もっとも、そのようなものが載っていることを気づかない人も多いにちがいない。
 
 新聞はそのほとんどが、将棋のタイトル戦のスポンサーになっている。例えば名人戦なら毎日新聞が、竜王戦なら読売新聞が、といった具合だ。1紙が独自にスポンサーになれず、何紙か組んで棋戦を運営しているものもある。その、自分がスポンサーになっている棋戦の対局を、新聞に載せている。それが観戦記だ。
 
 観戦記はスポーツ欄と似ているが、いくつかちがうところがある。まず、1局(1つの試合)を数日にわたって、最初から最後まで載せる。もちろん、ひとりの書き手が通して書く。例えば野球であればポイントとなる回や最終回だけを載せる。1回からすべてを記すことなない。
 
 そしてもう一つは、その棋戦で行われるすべての対局を載せることがない。野球もサッカーも、休刊日に当たったとき以外はペナントレースの、Jリーグの、すべての試合を載せる。しかし棋戦は、野球やサッカーのように年単位で競い合うが、将棋欄にすべての対局を載せることはない。人気の棋士や注目を浴びる(将棋好きにとっての、だが)対局を載せるだけだ。ざっくり言って、観戦記が紙面に載るのは、その棋戦が行う全対局の5分の1から10分の1程度だ。他は将棋連盟のホームページや将棋雑誌に結果が載るだけ。その対局が如何に白熱したものでも、日の目を見ることはない。
 
 観戦記は、その新聞の記者が書くわけではなく、観戦記者という、これ専門の書き手が書く。ある程度のレベルで将棋が指せ、棋界や棋士のことを知っている人間でないと書けないのだ。もっとも、新聞が専属の観戦記者を持っていることはある。
 
 
つづく
 

書き物が好きな人間なので、リアクションはどれも捻ったお礼文ですが、本心は素直にうれしいです。具体的に頂き物がある「サポート」だけは真面目に書こうと思いましたが、すみません、やはり捻ってあります。でも本心は、心から感謝しています。