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パクることこそが、全ての創作活動の始まりである

『パクりだよね、それ』

この言葉に深く傷ついた少年がどれほど多いだろう。
サッカー少年はメッシを、バスケットボール少年はレブロン・ジェームズを、ギター少年はエリッククラプトンを、お笑い好き少年は松本人志をパクって成長するものだろう。
そもそもパクらずに成長するなど、ありえないのではないか。

『学ぶ』という言葉の語源は、『真似ぶ(まねぶ)』であるという話を聞いたことがある。

何かを身につけるために学んでいる段階では、誰であっても真似ることから始めざるを得ない。
全く真似をしてはいけないとすれば、学生で習う三平方の定理も、解の公式も、フレミング左手の法則も、オームの法則も、真似してはいけないということになるだろう。先人が血と涙と汗を流して培ってきた人間の英知の結晶を、活用してはならないなどという馬鹿げた話はない。

また、これは勉強やスポーツに限った話ではない。
日本が誇る伝説的ロックバンド(だと私は思っている)、BOOWYの名曲Marionette(マリオネット)は、ポリスのMessage In A Bottleのイントロのコードを少しアレンジしてできていると布袋さんも話していらっしゃる。

ほらね。伝説の人もパクってるじゃん。

布袋寅泰

失礼、これは言い方が良くなかった。
パクったのではない、アレンジしたのだ。
明らかなパクりであると素人にはバレないよう、アレンジを高いレベルで行うと、本当に素晴らしいものが生まれる。高次元のパクりを追求すればいいということだ。

今回は、この『パクる』について、少し深堀して考えてみたい。そもそもパクるという行為には、3つのSTEPが存在している。これらを分けて考えてこそ、パクリの達人(響きが悪い)になることができるのだ。
日本の茶道や武道の考え方である『守破離』に通じる、パクリの3STEPについて、順番に見ていこう。

Level.1:徹底的にパクる(TTP)

初心者は、まずはこのレベルを徹底的に追及することから始める。
真似る対象の一挙手一投足、全てを写すように完璧にコピーする。

ここでは、オリジナリティーなど一切必要ない。

守破離の『守』は、四の五の言わずにとにかく師匠を徹底的にパクることにのみ専念する。
例えばプレゼンテーション。上手な人のプレゼンを生き写しの如くコピーして演じたとすれば、間違いなくこれまでの自分を遥かに上回るアウトプットにつながっているはずである。
1点注意することとして、当然だが著作権があるものをそのままパクった場合、法的な問題が発生する。ミッ〇ーマ〇スをTTPしようという危険な発想だけは止めていただきたい。当局では一切関知しない。

Level.2:ちょっと変えてパクる(TKP)

勘違いしないようにお伝えすると、これはTTPを完全にマスターした中級者のみが足を踏み入れることの許される領域である。間違っても最初にこのレベルからパクリをスタートしてはならない。
TTPを通じて、その取り組みの中の核となるエッセンスや、本質に触れることが可能となる。その後で、『ちょっとだけ』自分の色を加えてみるのだ。この『ちょっと』の加減が難しい。

料理で最後にひとつまみ加えた塩のように、入れなければ美味しかったものが入れて台無しになるという事件

が起こる危険性をはらんでいる。
本質・エッセンスが失われないように、注意深くちょっと変える。
これが最大のポイントである。
失敗したと感じたら、すぐにTTPに戻る勇気を持ってほしい。
TKPのいい所としては、TTPと比べて『パクっていることがバレにくい』という点がある。
真似するのは素晴らしいことなので私は何とも思わないが、例えばそれを良くないと考える人たちに囲まれている場合には、あからさまな真似よりもちょっと変えてパクる方が納得してもらえる可能性は高くなる。

パクリではなく、『アレンジ』、『インスパイア』、『オマージュ』など

といった表現にしておけば、もはやこれはパクリではないと言い張ることも不可能ではなくなる。確かに、全く同じではない。

Level.3:思い切り替えてパクる(OKP)

いよいよ守破離の『離』の領域に突入する。
先に言っておくが、誰もがこのOKPの領域にたどりつけるわけではないし、たどりつく必要もない。
ほとんどの人は、TTP、TKPでうまくいくからだ。
では、OKPとは何なのか?

■思い切り替えて → 全然違うものにして
■パクる     → 模倣する

おや、全く別のことを言っている。
しかし、ベースはあくまでもパクることにある。
では何をパクっているのか。
実は、

構造(システム)をパクっている

かなりレベルの高いパクリのため、素人が見てもピンとこない。
アナロジーともいえる。

似ているようで、似ていない。でも、本質は同じ。

例えば、バイオミメティクス(生物模倣)が例としてわかりやすい。
バイオミメティクスとは、生物の構造や機能を観察し、そこから着想を得て新しい技術の開発やモノづくりに生かす科学技術のことを指す。

オナモミ(ひっつきむし) → マジックテープ
マグロの皮膚 → 船舶用塗料
ハチドリ → ドローン(ホバリング)
コウモリ → 視覚障害サポート装置
オジギソウ → 高分子アクチュエーター

言われてみれば確かに似ているような気もするが、パクったのかどうかは本人から聞かないかぎりわからない。
このようなアナロジーを効かせたレベルの高い模倣が、OKPである。

全く違うように見えて、本質的には同じ部分でつながっているという点はTKPと同じではある。
一方で、参考にしたものと、成果物の直接的なつながりがわかりにくいというのがOKPである。

以上が、パクリの3STEPである。
是非パクリの仕組みを活用し、あなたの人生に彩りを与えるパクリを行っていただきたい。



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