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【解説】エンジニアの受け入れ態勢-オンボーディングの設計方法とOJTの4ポイント

お久しぶりです!ポペヌです!

そろそろ4月の新卒受け入れに際してPCの購入であったり、研修用のホテルの準備だったりと、様々な準備をする時期になりましたね。

僕は転職初日に社内独自システムの使い方が分からず隣の人に質問していたらなぜか副社長にキレられた苦い経験があるのですが、今回はそんな入社にまつわるエンジニアさんの受け入れ態勢についてまとめていきたいと思います。

先日社内で「入社数カ月のエンジニアが活躍しているか、企業に馴染めているかわからない」という声が上がっていました。確かにここ最近はリモートは当たり前になり、入社してから一度も出社したことない方も珍しくないことを考えると、同じ悩みを抱えている人事さんは多そうだなと感じました。

※オンラインでの研修についてはゆいさんの記事を拝見ください。

事例も合わせて記載できればと思いますので、下記のような方は読んでいただけますと幸いです。

【このシリーズを読んでほしい人】
オンボーディングで悩んでいる人事さん
サポートしたいけどエンジニアに対して何をすればいいか分からない人事さん
早期離職に悩んでいる経営者・人事さん


1.入社後に行うオンボーディングとは?

まずは入社時に行う定番のオンボーディングについて考えていきたいと思います。

せっかくですので、オンボーディングについて調べてみると、もともとの意味としては「飛行機や船に新しに乗り込んだ乗務員や乗客が期待や船内に慣れるようにサポートする」という意味だそうです。

飛行機や船というのが運命共同体という感じで、すごく共感しやすいですね!

企業に置き換えると、新しく仲間になる方がスムーズに環境(企業)に慣れて活躍できるように支援していくことになります。

新卒では一般的にどこの企業でも行っている印象がありますが、中途ではOJTで現場に丸投げをしている企業が多い印象があります。OJTについては次の章でまとめますので、説明は省きますが、目的が違うとお考えいただき、オンボーディングの一環でOJTをすることもあるとご理解頂けますと良いと思います。

・オンボーディング
職場環境にいち早く慣れる
・OJT
実務を通して仕事を覚えてもらう

調べてみると、中途入社の方でも入社前に80%の方が不安を感じているそうです。

出典:パーソルキャリア:内定承諾後も不安だらけ? 転職者が入社前後に感じる不安と企業への要望を大調査

また、入社後も75%も不安を感じています。

出典:パーソルキャリア:内定承諾後も不安だらけ? 転職者が入社前後に感じる不安と企業への要望を大調査

そのため早期に会社に慣れていただき、心理的安全性を感じていただき100%の力で業務を行えるようになっていただくためには、新卒・中途関係なく実施することが必要になるかと思います。

ここまでは一般的なお話しでしたが、以後はエンジニアに特化した形で記載をしていきます。


エンジニアのオンボーディングの効果

・仕事に必要な情報を手に入れることができる

エンジニアの仕事に必要な知識とは何かを考えますと、使用技術やアーキテクチャなどが挙げられます。ですがこの点はOJTでも問題ないと考えており、もっと必要な情報としては【サービスそのものへの理解】だと思います。

どのようなステークホルダーが絡んでおり、どういう仕組みで収益が出ているのか、競合はどのような会社のサービスか、現状の課題と今後の方針、といったなかなか入社前のオープンな状況では公開できない情報はOJTで小出しにしていくのではなく、仕事始めの段階でお伝えするのが重要だと考えます。

これにより、すぐに業務に移れるだけではなく、会社に染まり切っていない人間の新しい発想などを得ることも期待できます。

・チームに馴染んでもらう

いきなり知らない人だらけの環境に投げ込まれて良い関係構築をできるほど世の中の人間全員がコミュニケーション能力があるわけではございません。現に僕は仕事であれば無理しますが、プライベートなどでは知らない人とは絶対話したくないと考えており、お店の方とさえ話すのに緊張します。まずは同じチームに馴染めるよう、選考過程などであった方がサポートをしてあげるなど、対策を取りましょう。

仕事のやり方は会社によって様々です。誰がどんな役割を担っているか、どのタイミングでどんな作業をするのかといったことも明示したり説明ができないと理解や慣れに時間がかかります。

・組織力の強化に繋がる

上記にも触れる話ですが、OJTなどでは同じ部署内の方や、限られたメンバーとの縦の交流がメインとなります。しかしオンボーディングを他部署を巻き込んだ設計をすることで、職種や所属部署に限らず、様々な方との横の交流が生まれます。

横の力というのはすぐには効果を発揮し難いですが、組織全体での情報共有が活発になったり、助け合う機会の創出、離職の防止などにも繋がるため、組織全体への効果は計り知れません。


エンジニア向けオンボーディングの設計方法

次に設計方法ですが、こちらは他の職種と大きく変わることはないかと思います。

1)目標設定

入社した社員に何を理解してもらい、どのような状態で活躍をしてもらいたいかなどを設定します。

2)環境づくり

オンボーディングでは多くのステークホルダーと密なコミュニケーションをし、効果的な情報のやり取りができる環境が必要になります。1on1だけでなく普段の声かけなどの関わり、チャットツールなどを利用することで、コミュニケーションの促進につなげるなどの工夫をしましょう。

3)内容作成

設定した目標に対して、オンボーディング中にどのようなプロセスでその状態を作り出していくかを考えます。例えば、中途のエンジニアで複数サービスを扱っている企業でのオンボーディングを組むのであれば、

入社初日~1週間
社内ルールや自社のサービス理解をしつつ、代わる代わる多くの部署の責任者と同い年くらいの方とランチのセッティング

1週間~2週間
配属予定の部署での開発業務のOJT

2週間~3週間
配属予定以外の部署での開発業務のOJT

3週間~
現場配属・振り返り・1月単位でメンターの1on1

というような内容を設計することできます。
この例では会社や働く人に慣れるをゴールを置いたものになります。ゴールに沿って必要な内容を検討して盛り込んできましょう。また、盛り込む際の注意点ですが、盛り込みすぎるとオンボーディングだけで精一杯になってしまい、入社から日が経っていないのにも関わらず精神に負荷を与えてしまうので、心労への配慮を忘れないでください。


2.実務を通して仕事内容にいち早く慣れるOJT

オンボーディングの次はOJTについてですが、こちらはやっていないという企業はないのではないでしょうか。会社が主体でやらなくても必然的にOJTのような感じで運用されているケースは多くありそうですね。

OJTは基本的には実務を通して、現場の社員がサポートをしていきます。そのため、担当のメンターになる社員次第で良し悪しが決まるため、責任者はアサインから決めなければならず結構大変という声をお聞きします。

エンジニアのOJTによる効果

・開発環境への理解や慣れ

書面で伝わる開発環境であれば入社前の段階である程度理解することができますが、承認のフローや業務のアサインの仕方などは会社ごとに大きく違うので、書面では分かりにくい点を重点的にサポートする必要があります。

・メンター社員の成長へのきっかけ

普段の忙しい業務をこなしながら指導も担当することになるため、時間的にも精神的にも負担が増えます。ですが、時間の使い方を考えるきっかけになったり、人に教えることでマネジメントを意識するきっかけにもなりますので、次の会社の中核を担う人材には必要な負荷と考えて任せることをしましょう。

OJTの方法

メンター社員の成長も考えると、好きにやらせた方が良い気もしますが、それで新入社員が辞めてしまっては元も子もないので、簡単なロードマップを敷いていくのが良いと思います。

その際のロードマップでお勧めなのが、山本五十六の名言「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ」をこのまま実行するだけかと思います。

1)やってみせ
まずはその仕事をやって見せることで、仕事の全体像を理解してもらえ、その後の言葉での説明をする際に具体的なイメージができるようになります。このご時世であれば動画に残しておくなどもできますので、二度手間を防ぐ方法も考えつつ実施してみると良いと思います。

2)言って聞かせて
次に具体的な内容を説明していきます。その仕事の目的や背景を合わせて理解いただくことで、業務の質の向上に繋がっていきます。また、ここは動画だけで終わらせるのではなく、質疑応答ができる体制を作ることで、理解度が格段に上がるので効果的です。

3)させてみせ
その仕事を1人でやっていただくことで、理解度の確認にもなります。また、しっかりと見守ることで、安心感を与えることができるため、失敗した際は責めることはしないようにしましょう。

4)褒めてやらねば
まずやったことを褒めることは大事です。ですが、明日生きているかもわからない戦争の時代とは違うため、褒めるだけではなく指導することも合わせて行いましょう。フィードバックは具体的な内容にすることで、見ていたと感じてもらえ信頼や効果が上がりますので、丁寧に対応してください。

このような形で五十六先生をお手本にすることで、素晴らしいOJTを構築することができますので、実践してみてください。また、OJTは継続的に行うことが重要ですので、反復的に行うことができるようにしていく体制を整えることを意識してください。


3.1・2以外にできるエンジニアへの入社後サポート

今までに紹介したオンボーディングやOJTではなく、「もっと気軽に人事としてサポートをしていきたい!」や「現場へのお願いの方法がわからない」とお声を頂いておりますので、エンジニア想いの優しい人事さんができるアクションを考えていきます。

入社間もないエンジニアとの話題

鉄板:PC関係の話

業務は会社が用意したPCで仕事をするケースが多いですが、プライベートで使用しているPCはこだわっている方が多いので、僕は初見のネタとして多用します。また、なんでこだわるようになったのか?など、話を広げやすい点でもお勧めです。

安牌:食の話

食べない人間はこの世にいないため、話題としてまず成立します。いままでの個人的経験としてはカレーかラーメンと答える方が多いですが、新卒などでは焼肉も結構多い印象です。食に関しての質問のいいところはそのままランチのセッティングに促しやすいという点です。「カレー好きなんだ!coco壱って言う知る人ぞ知る名店があるから、カレー好きなエンジニア誘っとくから一緒に行こうよ!」という感じで誘えるのがいいですね。

若手エンジニアさん向け:情報集の話

若手で入社間もない方は直接困りごとを聞いても話してくれないので、やんわり遠回しに聞き出しに行きましょう。僕が良くする質問としては業務中に困った時の情報収集の仕方についてです。「どういうサイトが情報取得しやすいとかあるの?」とそれっぽく聞いていきつつ、お勧めサイト聞いたり、その後「そういうのは社内の先輩とかに聞いたらもっと早く解決できそうだけどやっぱり聞きづらいことあったりするの?」みたいなアプローチで困りごとの核心に迫っていきます。技術的な話ではなく、サイトの話がメインなので、技術に明るくなくても話せるという点がお勧めです。

歴戦のエンジニアさん向け:修羅場の話

今までの会社での修羅場の話や不健康自慢は経験が長いエンジニアの方には響きます。とにかく昔のエンジニアの働く環境は劣悪でしたので、これでもかというくらい出てきます!

「それと比べて今はどうですか?困っていることなどはありますか?」という感じでサポートするための話に進めることができますので、経験長い方が活躍できていない時はやってみると良いかもしれません。現場には言えなくても人事には言えるかもしれないこともありますしね。

番外編:アニメ・ゲーム

エンジニアさんへの偏見かもしれませんが、今までの経験上93%くらいこれでなんとかなります。この領域の問題は業務に関係しない・自身が知らないとそこまで話せないので、アニメやゲームが好きなら話してみてもいいですね。


現場責任者(上司にあたる方)などへのお願いする方法や意識改善

新入社員が上司のそばで業務を行っていたとしても、コミュニケーションや関わりの頻度が少ないと、新入社員が頑張って取り組んだ業務が、組織やチームとしての方向性や上司の考えと、いつの間にかズレてしまうことがあります。新入社員が一生懸命取り組んだのに、上司の考えや思いとズレていて評価されない。これほど不幸なことはないでしょうし、お互い萎えてしまうこともあるでしょう。

そのため、人事の方が現場の上司にあたる方にお願いすることとして有効なのは、まずは1週間に10分程度で構いませんので、新入社員と1on1などの対話機会をつくっていただくよう、こまめな関わりを意識し実行していただくことです。それを上司の考えと新入社員との認識をすり合わせる機会とし、目標に向かう共通ストーリーをつくり、そのストーリーに沿って日々の業務に取り組むことができる関係性をつくることです。

もし、彼らの業務が滞るようであれば、上司にフォローしていただける状態をつくるなど、組織として成果を出せるようサポートすることも、人事の役割なのではないでしょうか。本来、上司が新入社員を活躍させるためにサポートするのは当たり前だとは思いますが、上司が新入社員のことを気にかけられるような環境をつくることも、人事の方の役割でもありますので、敬意と誠意をもった対応をしましょう。さらに、人事側から新入社員と上司との日々のコミュニケーションや関わりなどを分析し、共有できていくといいですね!

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4.まとめ

今回は受け入れ態勢についてまとめさせていただきましたが、会社ごとに正解の形は違いますので、根気強く人事と現場で良い環境を共創してください。

ライター:ポペヌ
エンジニア歴約10年、人事歴約3年。中学時代からエンジニアとしてお小遣い稼ぎを始め、エンジニア経験を活かしながら、大手IT企業にて人事に転身。
「プログラミングができる人事」として、主に経営陣をカウンターパートに経営視点の人事戦略設計〜実行、検証まで従事。
即戦力エンジニアをオフライン・オンライン施策をベースに採用単価0円で採用実現するなど、特に新卒採用、およびエンジニア採用に強みを持つ。

「すごい人事」情報局運営元:株式会社Crepe 
Crepeでは、ESG観点からみた人的資本における企業価値向上支援を行っています。具体的には、採用CX(候補者体験)向上ための採用戦略コンサルティング、採用ストーリーブック制作、研修トレーニング、EX(従業員体験)向上のための組織コンサルティング、エンゲージメント向上 HRtech「ミライチズ」などを通して、より良い個人と企業の関係の質向上支援を行っています。
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