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みんな n=1 のせいだ?(続ターゲティング問題)

【手短に言うと】想定読者層をターゲティングして彼らに合わせていくよりも、いっそ「一人のエクストリーム」を捉えるn=1の考え方を応用してみる、という話です。

ひとつ前のnoteで「ノベルジャムという特殊な環境下で見込み購入者のペルソナまで踏み込んだターゲティングを行うことは難しいというか無理なので、購入者想定は『チームの認識共有を補強するため限定的に使う』のがいいかも」という主旨のことを書きました。
前のnote含めて何故このようなことを書いているかというと、話はNovelJam2018秋、初日の夜に遡ります。

著者がターゲット考察に引っ張られそうだった

初日の夜、最初の夕食を摂りに皆で食堂にいった際、チームの著者の一人である最堂四期さんが「誰に対して書けば良いのか」で悩んでいるようでした。
基調講演の最後の質疑で言及されたターゲティング考察をキッカケに、おそらくは流通商品として自分の作品を見つめることに多少の戸惑いを感じていたのかもしれない。しかしまだプロットの種もない、影も形も存在しない幻のような商品を誰に対して届けるのか、それを今考えるのは少々ナンセンスにも思えた。
いやそんなものは幻だから捨てておきなよ!と話題ごと置き去りにして楽しくごはんに戻るのが最適のように思えたものの、それで適当キャラのイメージがしょっぱなから自分に付いてしまうのも、ちょっと情けない。どうすりゃ納得できるか。

いっそn=1でいいんじゃないか

商品やサービスの購入動機、そのトリガーを探索するため定量のでかいデータを分析するのではなく、たった一人のエクストリームを捉え、それを全体に布衍させる、というインサイトマーケの考え方があります。サンプル数が一人なのでn=1とか言ったりしますが、ともあれそれを目下の夕食上の悩みとしてテーブルに上がっている「ターゲットどうしよう問題」にぶつけてみた。以下ざっと要約。

最堂さん聞いてください。どういう層に目を向けるのか悩むよりいっそ自分のためだけに書いたらどうっすか。自分をターゲットにしちゃうんですよ。自分が面白いと思うものを自分向けに、たった一人のために書くんすよ。最堂さんが「面白い」と思うなら、よほど友達が少ない人でない限り、多分周りに傾向の似た5〜6人くらいは「面白い」と思う人がいるでしょう。で、その5〜6人の周りには30人くらい「面白い」と思う人がいるでしょう、でその周りには、、、

と同心円のセンター爆心地波及方式とでもいいましょうか。「ただ一人のエクストリームを全体化する」というn=1の考え方をターゲティング問題の解決に応用できるとその時お話したのでした。いやマジで屁理屈極まる話ですが、あながち遠くない気が今でもしています。

というのも、これは商品やサービスのSPを設計する際の哲学なのですが「市場で買う人間が一人もいないのなら仕方がないが、一人でも買っているのなら、そこには必ず買う理由が存在している。それを見極めることでストロングポイントを見つけることができる」と。小説の制作も同じなんじゃないかなと勝手に思った次第です。
考えようによっては自己完結型の究極の駄サイクルなのだけど、そこは編集者がきっちりと手綱を引けばいいことだし、あまり外していないんじゃないかと思う。
よしんば的外れであったとしても、誰に向けて論に立ち止まらず、開き直り振り切って書いていただけた(と信じている)ので、嘘も方便、それだけでも役に立ったと思っています。

実際、結果として生み出された「みんな釘のせいだ」という作品は、そのいかれ具合、発想のバカっぽさ、コミュニケーション速度の素晴らしい速さなど迷いなく尖ったものになり、ありがたい事に審査員賞もいただけた。なのでその成果の5%くらいは、n=1で開き直った事が影響している、って事にしていいですよね。

そんなわけで我々いちばん堂(特にみん釘)は「誰に向けて作るか」についてはほぼ何も考えていませんという告白でした。

さて、そのようなわけで

ノベルジャムという超短期イベントの中にあって、マーケの作法をどのタイミングで、どのように取り入れるのか(あるいはしないか)、については今後回を重ねる毎に進化し洗練されると思います。
いまのところ執筆フェーズを終えた販促フェーズで顕著で、たとえば売価1,000円で実質短編集化した設定でのリリースやメディアミックスのぶちあげなど、今回も積極的なチャレンジが進んでいます。今回の施策の結果ももちろん楽しみだし、その結果を踏まえた次回戦士たちの出す答えもいまから楽しみです。

みん釘も、これからもっと仕込んでいきますよ!


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