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プロットとヌルい大浴場

●ノベルジャム2018参加記録 4 [1日目 夜]

三木さんのありがたい言葉も頂戴し豚ソテー的な飯も食い、持っていよいよプロット作りに入るのだが、デザイナーの出番はまだ来ない。そりゃそうだ、まだどんな話かも決まっていないのだ。けれどもやることはある。とりあえずデザインの方向性のタネにしようと、著者の話を聞き出す。作風や、好きなものとか。平成と聞いて何を思い浮かべるか、とか。場が緩くなってきたらバカみたいなアイディアを投入してさっとかき回しつつ、並行して著者ふたりの過去作品を読んだりする。しかしなんだ、森山さんのweb小説面白いぞ。

というようなわけで再びブレスト。講演の間は一心不乱に何かに集中していた根木珠さんもいろいろとお話ししてくれたし、森山さんもアイディアをテーブルに乗せ早くも米田さんとガシガシ話をしている。
その米田さんが提案してくれた、二人の小説をシリーズみたいな統一感あるデザインでまとめたい、というアイディアはデザイナー権限でやんわり却下させていただいた。
すまない米田さん。着想はわかるし楽しい視点と思うのだけど、二人の個性をどう引き出すか、という段階において上位のレイヤーにある情報に手をつけるのは避けたほうが無難だ。このケースでそのアイディアを実行すると「Cチームとはどうあるべきか」という議論の枠内で二人の個性が決定されてしまう可能性があるのだ。
二人の著者が彼らの作品で何を問うのかが見えないうちに上位のブランディングを行うことを不可能、とは言わないが2泊3日では難しい課題と言える。それでも米田さんの思いは最後の最後に「Cチームとしてのナニカ」というコミュニケーションを考える契機になった。それが「理不尽と不条理」という表現であったのだけど、なんというか今思うと何ひとつ無駄ではなかったです初日から。

てなわけで議論は続くのだが、よくやる「会議の作法」のスタンスで僕はいく。ざっくりエッセンスだけいうと
1、意見は、まずは否定しない
2、そのアイディアがどんなコミュニケーションを生むのか、という視点で考える
この2点に留意して意見を交換する。場の浮き沈みはあるが、小さいことでも何かを決定する局面ではやはり米田さんがボールを受け持つのはさすがの編集。

基本方針は、やはり二人の描きたいものを書いてもらうことに変わりはない。森山さんのアイディアはどれも面白く、できればみんな書いて欲しいが無理なので、時間的制約を考慮し、森山さんが「最も知っている世界」を選んでいただくことになった。それは天皇崩御の自粛ムードの中、劇団員が自粛の嵐とどう向きあうか、というものだ。劇団出身の森山さんならではの話で、冒頭昭和64年を持ってきたセンスも素晴らしい。またその筋のオーソリティであればモノ探しの手間も考証の不安も省ける。
んで根木珠さんの場合は、えーっと、もう<了>って書いてあるんだが。

その根木珠さんには米田さんがしっかりフォローしていろいろ聞いてあげている。いや困惑してもいるようだが、ともあれムードはいいな! でGoogleDriveにアップされた根木珠さんのアイディアノートを見てみると、、うん、ちっともわからなーい♥
わかる、いやわからないんだけどわかる。わからないという事が、わからなくもなくもなくわかる。わかる、多分わかると思う、わかるんじゃないかな、まちょと覚悟はしておけ、みたいな。だがこれだけは言える。最終日にプレゼンした米田さんの気持ちが、この時すでにわかっていたんだ僕らは。

その、プロットみたいで会話みたいな、ちょっとあらすじみたいなプロット、と食べるラー油のような言い方になってしまったがともあれ、それでもデザインの手がかりはある。作風にまとった、どこか印象派の絵のような独特の曖昧さ、磨りガラスのような淡い光のイメージ、この絵画的な雰囲気はデザインのキーになるだろうな、というのが初見の感想。初日は思いついたことをスケッチしながら、それ以降は夜、自室でもう少し読み込んで練っていこう。イメージを詰める時はなるべく一人がいい。意見は聞いても練り込むフェーズでは一人でゆっくりやりたいのだ。
とそんな訳で初日は上がって風呂に行くことにした。幸い夕方からの雨はもうほとんど止んでいる。

えーっとその大浴場なんだけど、これが素晴らしくヌルかった。体温より温度の低い風呂を風呂と呼称してよいのか、これは風呂というものの定義を脅かす事態な訳だが、あまりのヌルさにむしろ風呂上りの着替えの方が暖かく文明を感じたほどだった。いやー服って本っ当に、あったかいですね。おまけに帰りにビールを1本買い求めたらそれがラスト1本で、赤い「販売休止」の灯火に打ちひしがれながら、それでも最後に1本残った「一番搾り」を大事に抱えて帰途についたのだった。

(5へ続きます)

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デザイン会社の中間管理職

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