アートボード_1

NovelJam'2019、デザイナーの役割と評価と制作のヒントについて(上)

ノベルジャムは事前オリエンテーションも無事に終わり、いよいよチーム編成ドラフトのフェーズに入る。のだけど、オリエンテーションでは今回のルール説明が大半であったため、デザイナーに対する言及が少なかったので補足、というか過去大会のデザイナー参加者であり今回アートディレクター(らしいっすよ!)として運営スタッフに入った杉浦が思うところを書きます。ちなみにオリエンで受付をやっていたおっさんです。

チーム編成、そしてデザイナーの出番はいつか問題

ここでもう一度、ノベルジャムのチーム編成についてのおさらい。
チームは4人。著者2名、デザイナー1名、編集1名のフォーマンセル、すなわち1名のデザイナーが2名の著者の作品を手がけることになる。
今回特に大会のコンパクト化により、2日、という制作時間の割り振りが重要になってくると思う。特に初日。

初日、チームビルドが完成してのち、しばらくは著者と編集者による作品方針を練る時間になるだろう。この時間帯、デザイナーは正直ヒマだと思う。でも後ろは決まっている。で、どうするか。もちろんできることはある。

著者を理解する、作品方針のイメージボードを作る

ヒマだったら同じチームの著者さんの作品を読んでみるといいと思う。多くの著者は小説投稿サイトなど、何かしらウェブ上で作品を発表しているであろうから、読む。読んで、何となくでもいいので作風をつかみ、目の前の本人のパーソナリティと合わせながら「○○さんの作品、ってこんなイメージですよねー」みたいにデザイン資料を作ってしまうのは悪くない手だ。資料は手ずから描いてもいいし、pintarestなどを当たって幾つかイメージをピックしてもいい。

これは前回大会デザイナーのCarolさんが実際に描いて行った手法(藤宮ニア著:リトルホーム、ラストサマー)。僕もど頭でいきなりドラフトデザインを提示しデザイン先行で世界観の擦り合わせを行った(最堂四期著:みんな釘のせいだ)。これらは短期決戦のため最速でのゴールイメージ共有に有効だし、従来的な「内容が固まった時点でデザイナーに発注する」ルートでは不可能な制作スタイルと言える。この点、編集者にも従来の慣習を破る柔軟さが要求されていると思う。


このいきなりドラフトの時点で、プロットになる前であっても作品方針がある程度固まってきているのなら話はもっと早い。作品のまとうべき空気を早い段階から視覚化し、編集や著者に「いいねー」と言わせてしまえばなお良い。イメージ共有を提案できるのはデザイナーでなければできないし、ここを握れれば後はスムーズだ。人は「自分の言葉で良いといったものは否定しない」からだ。

小説とコール&レスポンスする

あとはプロットを咀嚼し、執筆の進捗に合わせてスケジュールを流動的に動かしながら定刻までに2作品を作ればいい。できれば小説の「読者役」を買って出て、途中原稿を読み、面白いところをどんどん誉めるといい。途中原稿を読むのは制作中のデザインにとって取材になるし、編集者が見落とすかもしれない作品のストロングポイントを読者目線で指摘できる可能性もある。

実はこの部分こそデザイナーがノベルジャムに参加する醍醐味なのだ。主役は「小説」であっても、本質を視覚化するという点でデザインは文章と相補関係にある。執筆中の作品にデザインの力で口出しできる、逆もある。通常の出版の枠組みではありえないスケジュールと制作環境がこの刺激的なコール&レスポンスを可能にしている。
小説家と同じ速度で本気で並走する経験など、普通できない。デザイナーとして新たな世界を拓く体験になると思う。

デザイナーの評価について

今年で4回目を数えるノベルジャムなのだけど、デザイナーの公募が始まったのは第2回から。デザイン評価については第2回より山田章博賞が設けらていた。山田先生からの授賞に多分に審査員賞の性格があったのは、おそらくノベルジャムとしてデザインという営為そのものを評するには時期尚早、との判断があってのことだと思う。
イベント発足当時は文芸ハッカソンとして評価を成立させるだけでいっぱいで(今だって毎日瀬戸際だけど)、デザインという、ある意味小説より評価の難しいジャンルに対してその評価軸の構築まで手が回らない、というのが実相だったんじゃなかろうか。発足当初の運営の努力には本当に頭が上がらないし、今回曲がりなりにもデザイン評価の体制を作れたのも先人の巨人の肩に乗ってのことだ。ようやくできました。

そのデザイナー評価、文芸評価と別軸となるデザインを制作するためのモチベーションの置き所については長くなるのでまた次回。

(続きます)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?