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予算編成期におけるマーケターのためのデータ主導の3つの指針(Grace Kite)

この記事について

Grace Kite(グレース・カイト)博士について

マーケターの予算編成期に役立つ指針として、Grace Kite(グレース・カイト)博士が執筆した「Three data-led pointers for marketers during budget season(予算編成期におけるマーケターのためのデータ主導の3つの指針)」を紹介します。

この内容は非常に参考になるものでしたので、和訳してポイントをお伝えしたいと思います。

グレース・カイト博士は、20年以上にわたり、多くの企業でマーケティング効果の分析を行ってきた実績を持つエキスパートです。

経済学の博士号を取得し、これまでに120を超えるエコノメトリクスプロジェクトに携わってきました。その成果として、12のIPAエフェクティブネス賞やカンヌライオンズのグランプリ受賞に貢献しています。

『戦略ごっこ―マーケティング以前の問題』でも引用されていた記事

今回和訳してご紹介する「Three data-led pointers for marketers during budget season(予算編成期におけるマーケターのためのデータ主導の3つの指針)」は『戦略ごっこ―マーケティング以前の問題』でも引用されていた記事。

同書9章の「事業成長に必要な広告量、および不況時の予算の考え方」というパートで考え方が参照されていました。

実は私が働いている会社が今まさに来年度の広告予算を策定する時期ということもあり、改めて読んでいました。

広告予算を考えるマーケター・事業企画・経営企画・経営者にとって有益な内容かと思いますので要点をまとめてみたいと思います。

予算編成期におけるマーケターのためのデータ主導の3つの指針(Grace Kite)

1.売上高に基づく予算設定

結論として、企業の売上高に対して5%から10%を広告費に充てることが、最適な投資対効果(ROI)を得るための一般的な目安になる。

上記はマーケティングや財務の分野で広く議論されてきた「経験則」に基づいている。

①経験的データと業界ベンチマーク
• この比率は、多くの企業や業界のデータ分析から導き出されています。特にB2C業界や消費財業界では、持続的な成長を支える広告費の適正水準として5%~10%が一般的とされている。

• 米国の財務・マーケティングデータベース(例えば、Deloitteの年次調査やKantarの広告支出データ)から得られる業界平均が基準になることが多い。

②売上高と広告費の相関性
• 売上高は広告活動の直接的な成果を反映する指標。広告費を一定の割合にすることで、売上に連動した柔軟な予算設定が可能になる。

• 特に成熟した市場では、5%未満の広告費では競争環境でのポジションを維持するのが難しく、10%を超えるとROIが減少するリスクが高まるとされている。

③バランスの取れた短期・長期投資
• 短期的なROI: 広告投資は短期的な売上増加をもたらす可能性が高いですが、過度な投資はROIを損ねる可能性がある。

• 長期的なブランド価値: 広告費を適正に設定することで、ブランド認知度や顧客ロイヤルティの向上など、長期的な利益を確保するための基盤が構築されます。

④経済学的根拠
• 広告の「収益逓減の法則」に基づき、一定の広告支出までは利益率が向上しますが、特定のライン(約10%)を超えると追加の広告投資の効果が減少することが知られている。

• Peter FieldやLes Binetの研究によると、適正な広告費割合は持続的な成長とROIの最大化のための平衡点(※)を示す。

※平衡点(へいこうてん)とは、ものごとが「ちょうどバランスが取れている状態」を表します。たとえば、シーソーを想像してください。シーソーが真ん中でピタッと止まっているとき、それが平衡点です。どちら側にも傾いていない状態。

⑤業界別の変動
• B2B企業やニッチ産業では、広告費割合は通常5%未満となります。一方、B2Cや競争の激しい業界(例えば、FMCG)では10%に近い割合が必要とされる場合がある。

ちなみに、この指標の妥当性はあくまで「目安」であり、企業の規模、成長ステージ、業界特性、競争環境に応じて柔軟に調整されるべきです。

2.長期的なブランド構築と短期的な販売促進の最適化

持続的な成長を実現するためには、ブランド構築と販売促進の両方に適切に投資する必要がある。

一般的なB2Cブランドでは、予算の約62%をブランド構築に、38%を販売促進に充てることが推奨されている。

3.適切な成果測定

短期的な販売促進活動のROIを測定することは重要ですが、長期的なブランド構築の効果を同じ指標で評価するのは適切ではない。

ブランド構築の成果は、ブランド認知度や顧客ロイヤルティなどの指標で評価することが望ましい。

これらのポイントを踏まえ、企業はマーケティング予算を効果的に配分し、持続的な成長を目指すことが求められる。

東洋経済オンラインで日本企業の売上高広告比率が公開されていました

2024年最新記事のリンクを貼っておきます。

上位1〜10位の企業を見てみるといずれも売上高広告比率は10%未満でGrace Kite博士が示した目安ラインを守っているように見えます。

一方でメルカリや住友ファーマ、ファータフーズ、RIZAPグループ、ビジョナルなどは同指標が13〜40%台と相対的に高い水準になっていました。

上記の企業群は業種特性・事業フェーズ・単年度の投資戦略から意図的に10%以上の売上高広告比率を維持しているのかなと想像しています。

ちなみに私は人材業界で働いているので、リクルートホールディングス(同比率6.2%)、パーソルホールディングス(同比率1.5%)、エン・ジャパン(同比率28.4%)なども気になりました。

以上です。引き続き勉強を続けます。

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