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2021ファジアーノ岡山にフォーカス15 J2:第12節:岡山vs町田(H) 「雰囲気がある町田のサッカー、若手の躍動、33阿部 海大を下げた判断への考察」

1、 前置き

怪我の選手及び体調不良の選手が10人出ている岡山。本職の選手の数が、スタメンで足りている内は、まだ戦える。と、信じたい。多くの方が指摘されている通り、本来ネガティブな状況と考えられる現状でこそあるものの、一方で、若手の成長や活躍が目立ち、ポジティブに取れる状況でもある。

中でも35山田 恭也のJ2でのリーグ戦でのプロデビュー。中でも特別な意味を持つ。正直な所、プロとして全く通用しないのではないかとも考えていたが、堂々たるプレーぶりで、非常に落ち着いてプレーできていた。トップレベルとまでは、行かないが、岡山の戦力の1人に成り得る選手であると思う。

今後J1を目指す上で、戦力と成り得る3年以上自チームの下部組織に所属した選手の保有数が、必要となる規定がある。また、A契約枠の25人から外れる事となる。つまり、下部組織で、大事に育てた選手が主軸として、活躍してくれれば、他チームより優位に立てる可能性がある。その逆もありえるという事である。

以下で、簡単に触れていく。間違いがあれば、指摘して頂けると助かります。

① ホームグロウン選手の定義
・自チームの下部組織所属が990日以上
・所属期間の年齢が満12歳~21歳の誕生日までの間
② ホームグロウン選手登録義務
2021:J1(3選手)・J2(0選手)
2022:J1(4選手)・J2(1選手)
2023:J2(4選手)・J2(2選手)
2024以降:別途定める
③ ホームグロウン制度の不遜守
・②の不足選手数が、翌シーズンに、プロA契約の選手の25人枠が減る。
プロA契約(B契約)移行の条件
・J1:450分(5試合フル出場相当のプレー時間)
・J2:900分(10試合フル出場相当のプレー時間)
・J3(JFL):1350分(15試合フル出場相当のプレー時間)
・プロC契約締結から3年経過
④ ホームグロウン制度の特記事項
(1)期限付き移籍は、保有元の期間としてカウントする。
(2)特別指定選手制度の場合は、保有元の期間とカウントしない。
(3)(2)のケースは、移籍先の期間としてカウントする。
⑤ その他
ホームグロウン制度に何か問題があった場合は、Jリーグ理事会によって、処分や対応は、決定する

以上になるが、要は、資金力があるチームが、スター選手を集めたチーム作りをしたチームだけが、勝てるリーグではなく、育成がしっかりしたチームも、そういったビッククラブに対抗できる可能性があるという事です。育成をしっかりして、そういった選手を保有できる一定の規模があれば、今の様に怪我人が出てもある程度、対応できるチーム作りができる可能性があるという事でもある。

育成型クラブを目指す事でもJ1を目指す事ができる可能性がある制度でもあり、両方を備えたチームには、なかなか対抗するのが難しい制度とも言える。しかしながら、岡山の35山田 恭也のデビューは、そういった準備であり、今季から来季には、ユースから1人以上は内定がでる可能性があり、J1を目指す上で、ユース生にとっては、大きなチャンスとなるだろう。

育成型のチームで、資金力のないチームは、良い選手を引き抜かれるだけという意見があるかもしれないが、全ての選手が上を目指して出て行く選手ばかりではなく、岡山が好きで、岡山に始まり、岡山で終わりたいと考えるプロ選手が出てくる可能性がある。これは、育成型クラブを目指すチームにとっては、夢のある話であると思います。

ファジアーノウェイで、チームの資金力の強化していく中で、スポーツを通じて、岡山を盛り上げて、元気にして行く中で、岡山が誇る選手をどんどん輩出していく。本当に時間がかかるが、育成をして行く中で、チームも地力をあげていきたい。制度が変わる可能性もあるが、自国選手の育成を狙いとした制度であると思いますので、根幹となる部分は変わらない筈です。

岡山が、上を目指して行く中で、歴史的な一歩を踏み出した日であったと思います。岡山に所属した選手でも応援したいという選手が多いと思いますが、今後は、岡山県出身の選手や岡山に縁のある選手が増えていき、岡山のトップチームに所属する事がなくても応援したい選手も出てくるかもしれません。夢のある話ですよね。ただ、そういった歴史的な一歩を歩んだ試合ではあったが、苦しい敗戦をした町田戦を振り返っていきたい。

メンバー:2021:J2:第12節vs町田(Home)

2、 雰囲気がある町田のサッカー

町田と言えば、プレーエリアを限定して、攻守の切り替えが速くして、ショートカウンターで戦うイメージが強かったが、そのサッカーとは全く違うものとなっていた。最初こそロングパスを入れてきて、蹴り込むサッカーかと感じたが、試合が落ち着いて行く中で、変わった事をしない王道のサッカーと感じる様になった。

ある程度、プレスを受けても簡単にロングパスを蹴らない。使い分けが巧く、18長谷川 アーリアジャスールの高さを使う場面もあれば、町田の先制点の様にサイドから攻め上がってクロスを入れて、そこに合わせて行く攻撃。また、しっかり繋いで、中央から崩す攻撃。後半に多く見せた高速カウンターまでできる。人数もかける時はかける。

攻撃手段に関しては、本当に隙がないチームであった。ただ、強いチームにありがちな守備の隙があった。ある程度、攻めを受け止める守備スタイル。ある程度、岡山が自分達の攻撃をしてきても、受けきれますよ。受けて立ちますよ。そういった守り方をしていた。具体的には、プレスは、そこまできつくなく、対人守備を重視、最後の所は固めて自由にやらせない

岡山が、連動した攻撃を見せれば、比較的簡単に、攻撃の形を作る事ができた。ただ、あと一歩の所で、5深津 康太を中心に、フリーでプレーさせずに、体を寄せて、シュートのコースのズレや、シュートに対してのブロックの懸命な守備が目立った。こういった所で、粘り強く守る事を、自然にできる辺り町田が上位進出を狙える勝ち点を掴めているポイントである。

攻撃では、2列目の10平戸 太貴と28太田 修介のサイドを深く抉って、クロス入れる形の完成度の高さは、町田の伝統である。中へ飛び出す動きの練度も高く、この形で、やられてきたイメージが強い。この試合でもサイドからの崩しから中で決めるパターンでの2得点も決められてしまった。

シンプルな攻撃ではあるが、現状の町田のサッカーは、変に動きすぎない事で、攻守のバランスを保ち、攻撃でも守備でもあと一歩が届くプレーが出来ていると感じる。このサッカーは、自分達のサッカーをある程度できるが、個で負けてしまう部分があるが、この試合では、怪我人多発している岡山を尻目に、交代カードで、流れを引き寄せ勝利を手繰り寄せられてしまった事で、岡山は、町田に敗れてしまった。

3、 若手の躍動

前置きで触れた35山田 恭也、33阿部 海人、28疋田 優人、27木村 太哉といった若い選手の活躍が光った試合であった。有馬 賢二監督が、「総力戦」というワードを使っていたが、まさしく、そういった試合であった。特に28疋田 優人と27木村 太哉は、このままいくと、一年目にして、プロB契約もしくは、プロA契約は、ほぼ確実に近いくらい出場を重ねている。

プロB契約の待遇であれば、他チームに強奪される可能性もあるので、プロA契約を締結するのであれば、その分、必然的に出て行く選手も出てくるが、まずは、今季の事だけ考えて進めて行きたい。ちなみに3年目の33阿部 海人もプロB契約もしくは、A契約となるだろう。では、1人1人どうであったか進めていきたい。

まずは、既に主軸として活躍している27木村 太哉に関してだが、判断の向上が際立っている。仕掛ける時に一歩に力強さがあり、大きいランニングフォームにも見えるが、不思議と切り返し(ターン)で、突破して抜くシーンというのも増えて来た。最初の頃は、仕掛けて向かっていて力技で、抜くシーンが多かったが、最近は、緩急を使ったプレーが増えてきて、ドリブルにも工夫が見える様になってきた。

同時に、パスでの味方の使い方や、中に入っていく判断の向上も光る。思い切りの良いプレーも増えてきたことで、確かな手応えにより、自信を深めている事に加えて、チームメートの信頼も得ている事は間違いない。今後も
左SHや右SHの2列目のアタッカーとして、ゴールとアシスト両方での結果での貢献に期待したい。

次に28疋田 優人。デビュー戦で結果を残した事で、自分自身及びチームメートの信頼を一気に深めた28疋田 優人。過去のフォーカスで触れたが、やはり失敗の仕方が見ていて気持ちいい。この試合でもセットプレーの毀れ球であるセカンドボールを拾って、シュートを打ったが、ブロックされてカウンターを受けたが、41徳元 悠平の好守により、4対1の数的不利の失点の危機を逃れた。

悪いミスというのは、消極的なミスで、昨季だと、印象に残っているのが、試合終盤の得点が欲しい時間に、24下口 稚葉が、クロスを入れるのを躊躇して、ボールをキープして、何もできずにボールを奪われたシーンだ。28疋田 優人は、行けると判断したら思い切って、アクションを起こせる。そこが一番の武器で、後は、その失敗を糧に判断の質の向上ができるかどうか。

そして、33阿部 海人。まだまだ守備の判断の粗さは目立つ。危機察知能力というのは、やはり4濱田 水輝と比べて、どうしても甘く見えてしまう。それでも優れた身体能力を活かしての対応で、寸前で守って来たという試合であった。スピードがあるので、5井上 黎生人と共に高いライン設定をし易いのは強みで、前への守備の意識も非常に高い

ボールを持った選手への対応が優れる一方で、ボールを持ってない選手への対応力をどこまで高められるか。最初の失点シーンは、味方選手と連携した危機管理が出来たのではないか。間違いがあったポジショニングではないものの、ミスがない相手に対して、いつの間に勝ち筋に持っていく将棋の藤井 聡太の様な守備が出来る様になるかどうかが、今後の33阿部 海人の目指すべき目標である。

続いて、岡山の星と言える35山田 恭也。この試合では、FWでの登録ではあるもののチャンスメーカーとしての素養の方が高い選手と感じた。ただ、10宮崎 幾笑とは違い、背負ってもしっかり繋ぐ事ができていたし、相手の寄せを受けてもミスをしない冷静さとしっかりした技術があった。J2のレベルの前に、ミスをして、何もできない可能性もあるかもしれないとまで、考えていたが、良い意味で、予想を裏切ってくれた。

FWの選手が戻ってくれば、2列目の17関戸 健二みたいな役割を任せるのが一番かもしれないが、14上門 知樹、27木村 太哉、17関戸 健二、10宮崎 幾笑、25野口 竜彦といった強力なライバルが揃っており、出場機会を掴むのは、正直大変かもしれないが、バックアップや天皇杯といった大会では、貴重な戦力して期待できると思います。

最後に、期限付き移籍での加入している20川本 梨誉だが、もはや絶対的な選手になりつつある。基本的には、中央にポジションを取り、孤立して囲まれていても卓越した技術で、狭い所でキープして前を向く。FW登録ではあるが、トップ下適性が高く、この試合では、圧巻のミドルシュートを突き刺すなど、得点力の高さも証明した。

イメージ的には、赤嶺 真吾の様なポストプレーに加えて、ミドルシュートが打てて、狭い所を抜けるキープ力があって、運動量とスピードがある赤嶺 真吾の進化版の様な選手。20川本 梨誉が、出場するようになって、中央で時間が作れるようになったから、周りの選手が活きる様になった。これからの活躍が、非常に楽しみ。

4、33阿部 海人を下げた判断への考察

※お詫び:、33阿部 海人を下げた判断ですが、アクシデントによって仕方なくであったようです。それを込みで、この項を読んで頂けると嬉しいです。今後は、レビューの質をあげるために、ハイライトだけではなく、監督のコメント等の必要最低限の情報も可能な限りしっかり確認してから記事にしていこうと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします※

結果的に、混乱を生み出し、守備固めも攻撃的に出るにも中途半端な感が強い33阿部 海人を下げて、24下口 稚葉の投入。多くの人が11宮崎 智彦ではなく、24下口 稚葉?と感じた筈である。試合の流れを振り返りながら、その采配の経緯や理由など、推測して行く中で、私なりの結論をだしていこうと思いますので、よろしくお願いいたします。

やはり、怪我人が多い状況の中で、粘り強く守る中で、先行逃げ切りというのが、現実的な勝ち筋であったが、町田の武器である切れ味鋭いサイド攻撃により失点してしまった。20川本 梨誉の個人技で、同点に追いつくことができた。その後も15山本 大貴の惜しいヘディングシュートやセットプレーなどからチャンスを作るが、試合終盤まで、1対1で推移。

岡山は、試合が経過して行く中で、前半からハードワークしてきた選手をリザーブのメンバーを交代していき、持続的な攻撃の維持を狙っていったが、選手層やチーム状況の差で、徐々に質の部分で、町田との差が開いていった。岡山の質が落ちて行く中で、攻め切れない攻撃でも出てきて、町田のカウンターを受けてしまう様になってきた。シュート数でもいつの間にか逆転していた。

岡山としては、いつも通り、後を固めて、腰を据えた攻撃をするか。実際の起用の様に、何処かで、攻撃の質を高める采配をするかの2択であったと思う。後は、運動量を維持するぐらいでが、時間の短さを考えると、前者のどちらかであった。有馬 賢二監督は、少しでも質を上げようと、33阿部 海人を下げて、24下口 稚葉を投入した。

度重なるカウンターで33阿部 海人も消耗していたと思うが、24下口 稚葉をCBの位置に、残しておくのであれば、本職33阿部 海人を残していた方が、連携の部分や試合への集中力を考えると、リスクは小さかったと思う。仮に、24下口 稚葉を前目で起用して、後を5井上 黎生人と41徳元 悠平だけで守って、攻撃にかけるとまでしていれば、まだ、理解できる采配であったが、33阿部 海人の所へ、そのまま入っただけであった。

33阿部 海人は、足下の技術もしっかりしているので、それであれば、一枚残して、そのまま戦うか、11宮崎 智彦を投入し、守備固めした方が、勝機はあったかもしれない。ただ、有馬 賢二監督は、チームの質の低下や、連戦による33阿部 海人の消耗を恐れていたと、考えることもできる。有馬 賢二監督が、どういった意図を持っての投入であったかで、評価は別れる。

勝利だけを考えるのであれば、33阿部 海人をそのままで、一枚交代カードを余らせるか、布陣変更を含めて、守備固めで11宮崎 智彦の投入が良かった。消耗を恐れて下げたのであれば、悪くないが、それであればもう少し早い段階での交代でも良かった。もし、双方のバランスを取ったとするのであれば、リスクが高くなってしまった事を考えると、まさに二兎を追う者は一兎をも得ずという采配であった。

※追記:一言だけ、チェックしていたら「6喜山 康平をCBにスライドさせる選択肢はなかったのか」で、考察していたと思います。育成やら経験やら語れなかったのは、悔いは残りますが、次から、可能な限りしっかりチェックします。この項を飛ばさず、読んで下さり有難うございました。※

5、 総評(後書き)

中位に位置するが、降格枠が、4つある関係で、残留争いの真っ只中の岡山。安全圏には、程遠く終盤戦まで、残留を強く意識していく事となる。上を目指すにしても、上位は連敗どころか、引き分けすらしないチームが数チームいるので、ついていく事は、上位に深刻なアクシデントやシステム的な脆弱性が見つからない限りは、止まる事はなく、岡山が連勝を重ねるしかないが、厳しい。

そうなると、勝ち点を1つでも多く積み重ねて行く必要があるが、チームとして、サッカーの成熟度を高めて行く観点でチーム作りを進めていかないと、長澤 徹監督時代の最後の辺りみたいに、打開策がなく、停滞するチームとなってしまう事がある。誰が出てもある程度戦えるサッカー。それを今の岡山が出来ている。

そう考えると、チームとしての最大値を高く設定した戦術の採用ができるうちに少しでも若い世代でも試し、浸透させる事は来季に繋がる。有馬 賢二監督が、J3に落ちても覚悟を持って、J2に帰って来る。それを許せるサッカーを実行し、それをフロントも後押し、サポーターが、この降格は、前進であったと後から考えるだけのチーム作りができるかどうか。

このまま行くと、夏場にCBやFWに若い選手などの、安く燻ぶっている選手の緊急補強の可能性はあるかもしれない。この試合では健闘及ばず敗れてしまったが、粘り強く戦って、総力戦で戦って行くしかない。幸い10宮崎 幾笑が、前線へ飛び出し、惜しい形を作ったので、そういったチームで巧く機能していない選手を活用し、中位を最低でも維持していって欲しい。

苦しい時期ではあるが、若い選手の活躍と成長に期待して、来季もJ2で戦うためにも最後まで粘り強く戦って欲しいと思う。若手が、プロA契約もしくはプロB契約になる編成上のリスクがあり、別れもあるかもしれないが、27木村 太哉や28疋田 優人の様にチームの顔に成り得る活躍を24下口 稚葉や33阿部 海人、35山田 恭也といった高卒ルーキーにも期待したい。

文章・図版=杉野 雅昭
text・plate=Masaaki Sugino

レビューは、以上になります。別サイトになりますが、関連記事で、16河野 諒祐にデータでフォーカスを当てた記事がありますので、興味あれば、一読して頂けると嬉しいです。

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2021ファジにデータでフォーカス7「2021 J2第12節 岡山 1-2 町田 レビュー」
は、こちら(別サイト:SPORTERIA)。
URL:https://sporteria.jp/blog/sugi8823/6796836812917575681

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