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2021ファジアーノ岡山にフォーカス29 J2:第25節:FC町田ゼルビアvsファジアーノ岡山(Away)「変幻自在の対応力」

1、 前置き(ピッチコンディション)

 雨の降る日々が続いているが、町田の地でもそれは同じで、試合は開催されるどうかという状況であったが、開催される事となった。岡山のシティライトスタジアムは、水はけが良く比較的晴れの多い地域ということもあって、ボールが止まる様なピッチコンディションの試合はほぼないが、今回はそういったピッチコンディションでの試合となった。

 当然ながら、このピッチコンディションでは普段のように自分達のサッカーができないのではないか。そういった心配があるが、大きく分けて3つの形で、町田に対して、ピッチコンディションとゲーム展開に応じた戦い方ができた。今回は、その3パターンの戦い方にフォーカスを当てて、文章にしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

2、 繋がないサッカー

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「ファジアーノ岡山」
・1トップ色の強い4-4-2。
・前節と同じスタメン。
・15山本→10宮崎にリザーブ変更。
・5井上と7白井のフル出場継続。

「FC町田ゼルビア」
・伝統の4-4-2スタイル。
・9鄭→30中島、5深津→17高橋にスタメン変更。
・3三鬼がと30デュークがリザーブ入り。
・42福井がフル出場、10平戸も全試合スタメン出場継続。

 前半の岡山は攻める時にボールが止まるエリアがあるピッチコンディションでの戦いとなる。岡山は、こういったピッチコンディションで、自分達のしたいサッカーをするのではなく、ある程度割り切って戦う事を選択。試合後の監督コメントでも、そういった趣旨のコメントを残しており、これが、前半における岡山の選択であった。

 一方で、町田が攻める方向は、ある程度繋ぐことが可能であった。町田には、技術に優れる選手が揃っており、前半は、基本的には、町田が持つ展開となった。一方で、岡山は、守勢に回ったが、ボールを奪ったら19ミッチェル・デュークという基本方針で、長いボールを中心に、パスを集めて、攻撃の形を探ったが、なかなか形はできない。

 また、同時にロングパスを狙って行く中で、ラインを押し上げて、少しでも危険なシーンを作らせない。リスクを小さくする戦い方を選択。町田としても自陣でのビルトアップする時に、ボールが止まる可能性があるので、自陣でボールを持つ時間を短くしたかったと思うが、岡山は、そこを狙う事で、攻守で活路を見出した。

 実際に、岡山の決定機は、ボールの扱いにもたついた町田選手から19ミッチェル・デュークが、ボール奪取し、そのままスピードに乗ってのドリブルからのシュートで、ゴールに迫るシーンを作る事ができた。得点こそならなかったが、こういった形が作れたという意味では、岡山の攻撃の狙いというか、勝利へのアプローチという点では、主張が通った形となった。

 町田としても、ボールを中盤以降に運んだ時に、高さや動き出しに特徴のある2トップに良いボールを配給して、攻撃の形を作れていたので、町田としても主張は通っていた。難しいピッチコンディションであったが、お互いにやりたいことがやれた前半であった。スコアこそ動かず、町田が主導権を握っていたが、意思統一は、両チームできていた。


「前半の攻防」
・19ミッチェルへのロング主体の構築(岡山)。
・2トップに良い形を入れて行くため繋ぐ構築(町田)。
・自陣でのプレー時間を短くしたい守備や攻撃(岡山)。
・自陣を越えてから主導権を掴み組み立てていく構築(町田)。

3、 前半と逆の形に

 ピッチコンディションが逆になった事で、岡山がしっかりボールを繋いで攻める攻撃ができるようになった。岡山は、繋ぐスタイル志向してきたという事もあって、違和感なく攻撃の形をフォームチェンジできたので、徐々に自分達の形ができるようになった。サイドから中央から14上門 知樹などの19ミッチェル・デューク以外の選手も目立つ様になってきた。

 対する町田は、繋ぐことを捨てきれず、中途半端になった事で、繋ぐ事やロングパスで活路を見出すことがなかなかできなかった。それでも高い個の力を持つ選手が、局面での攻防において優位に運ぶことで、ゴールに迫るシーンもあった。チームとしてやりたいことや目指すべきサッカーに差がある中で、五分に近い勝負にもっていく町田。

 岡山の時間が長く続いた中で、前節同様に先制点を期待する内容であったが、疲労なのかピッチコンディションなのか、抜群の安定感をみせていた11宮崎 智彦もまさかのクリアミスを突かれて、そのまま失点。31梅田 透吾が至近距離のシュートをまたしても防ぐも、やはり、そのセカンドボールを詰められて失点。ただ、反応する31梅田 透吾のGKとしての能力の高さを感じる。

 11宮崎 智彦は、この後すぐに下がったが、41徳元 悠平の前のパフォーマンスを考えると、同時起用が良いのは分かるが、ここを2人で回せないのかという点は、少し思うところではある。タイプが違うので、今のスタイルに41徳元 悠平が、どこまで適応できるのかという部分と、41徳元 悠平の攻撃センスを活かせる前での起用も捨てがたい。また、SBに交代を一枚割くという点も気になる。この辺り、今後、選手起用に動きがあっても不思議ではない。


「後半の変化」
・繋ぐスタイルにフォームチェンジ(岡山)。
・放り込みに舵を取れない中で中途半端に(町田)。
・チームとして良さが光るが決めきれなかった(岡山)。
・相手のミスを突き劣勢ながら先制に繋がった(町田)。

4、 進化した3バック

 遊撃に特化していた勝利の方程式が、ついにビハインドという状況でも有効な3バックへとバージョンアップされたと、言っても過言ではない。1トップに19ミッチェル・デュークを据えたという変更点と、18齊藤 和樹をシャドーもしくは、ウイング的な役割で起用したという変更点だけであるが、この3バックの攻め方は、非常にシンプルなものであった。

 端的に表現すると、27木村 太哉のドリブルと19ミッチェル・デュークの高さや速さをシンプルに活かすという単純明快な形である。しかし、これが、強力であった。五分五分の状況で競れば、勝率は5割を超えるのではないかという空中戦勝率を誇る19ミッチェル・デューク高さをシンプルに活かすという攻撃であるが、この形から実際に同点に追いつくことができた。

 このゴールの意味するものは、記録上でも大きな意味をもつ得点であった。今季の岡山の得点パターンにクロスでの得点は、非常に少なかった。この試合では、その形で得点できたという事で、得点力の向上は、大いに期待できる。得点パターンがセットプレーに偏っていたが、今後は4-4-2でもこういった得点が増える事も考えられるので、先制する試合も増えてくるだろう。

 そして、先制された時に何もできない試合が多かったが、この試合では、追いつくことができた。それも岡山より上位にいる町田からの得点であった事を考えると、自信に繋がる得点であった。27木村 太哉のドリブルは、J2では未だに完封された試合は無く、間違いなく岡山の武器となっており、19ミッチェル・デュークの空中戦も完封できるチームは、そこまで多くないだろう。そして、27木村 太哉もアシストを記録した事で、手応えを感じており、今後はスタメン起用も含め、活躍が期待される。

 19ミッチェル・デューク対策や3バック対策をしてくるチームもあると思うが、ここまでの継続的なチーム強化を見ても、岡山の攻撃を完封するチームは、そう出てこないと思っている。それは、やはりこの試合を見てもプレースタイルの幅が広いからである。秋田対策、新潟対策といった対策を講じることができるのは、相手チームが明確なスタイルを確立しているからである。

 岡山は、この試合だけでも3つのスタイルを見せており、チームとしての引き出しの多さと、岡山らしさを持っているチームとなった。19ミッチェル・デュークに2枚で対応するという試合もあると思うが、そうなれば、14上門 知樹もプレーし易くなるので、チームとして止めることが難しい攻撃ができるチームへと変貌しつつある。


「岡山の3バックの変化」
・19ミッチェルをターゲットにする事で2シャドーも活きる。
・27木村のドリブルを活かしてクロスから得点を狙う。
・後方は、3バックでしっかり守り良い攻撃に繋げる。
・攻守共に中央の厚みを大事にしたポジショニング。



5、 後書き(来季に向けて)

 後半戦4節目にして、来季に向けての後書き?そう感じた方もおられると思いますが、私は、このチームを主軸が残った来季を見てみたいと心より願っている。毎シーズン、主軸が抜けて行く中で、所属2シーズン目にブレークする選手が多く、その流れでチームとしてプレーオフに迫るチームとなるシーズンが来ている。

 10年を超える岡山のJ2の戦いの中で、今季ほど、中断期間で劇的に強くなったシーズンはない。それだけにここからの劇的に勝ち点を伸ばしたとしてもプレーオフがない事で、昇格へのチャンスすらなく、ストーブリーグでの主軸の流出は、起こり得る事態である。岡山を支えて来た観客動員による強化資金が期待できない中で、チームとしての戦力の維持と増強を実行できるかは、昇格へのポイントである。

 今季であれば、19ミッチェル・デューク慰留と9李 勇載の再起に期待しての慰留。そして、14上門 知樹と7白井 永地、5井上 黎生人といった若き岡山の主軸の慰留。ここが、できれば来季への期待は必然的に大きくなる。20川本 梨誉、31梅田 透吾といった期限付き移籍の選手も残って欲しいが、岡山の選手ではなく、本人の意志だけではなく、所属元のチームのフロントやサポーターの気持ちを考えると、来季も残って欲しいとは軽々しく言えない。

 ただ、昇格という目標が一番であるが、選手としてもJ1でプレーするという目標にしている選手も少なくない。中には、その先の海外を見据えている選手もいるかもしれないが、過去の例を見ても岡山で、もう一年頑張って、このメンバーで昇格したいと気持ちを抱けるサッカーができるどうか。それが、今季の残りの試合の意味することである。

 具体的には、最終的に2位と勝ち点差5という数字を実現できれば、岡山でJ1という夢が現実を帯びてくるのではないか。もしくは、長い連勝や不敗を継続するという成功体験を残り試合でできるかどうか。少なくとも私は、2節みただけで時期早々かもしれないが、19ミッチェル・デュークを軸に据えた攻撃に岡山の堅守を支える後方の出場機会の掴んでいる選手が残れば、来季は、J1への挑戦権を得る事は、夢ではなく現実的な目標と言えると感じている。

 前回のフォーカスでも似た事を触れてきたが、中断前とは明らかに違う岡山のサッカーに膨らむ期待や希望といった夢がどんどん大きくなってきている。それは、私だけではなく、他の岡山のサポーターやファン、そして、ピッチで戦う選手や監督も感じている事であると思う。それを確信に変える事ができるかどうか、問われる残りの試合を選手と共に、1人のサポーターとして、楽しみたいと思っている。

 残り試合は、現状の勝ち点やオフシーズンでの流出の可能性を考えた時に厳しいシーズンだが、来季に繋がっている。そういった意識を共有する事で、岡山のサッカーの前進に繋がると考えている。もちろん、まだまだ足りない物も多いチームであるが、そこは、選手や監督が政田練習場で、しっかり修正を繰り返して行く中で良くなり、強化部も選手を獲得することで、補ってきている。ブロガーとして、そういったチームとしての努力をしっかり文章として発信する事で、少しでも期待や夢を、次の試合、次のシーズンに繋げることができると嬉しく思うので、今後も時間が許す限り、発信していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

文章・図版=杉野 雅昭
text・plate=Masaaki Sugino

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は、こちら(別サイト:SPORTERIA)
URL:https://sporteria.jp/blog/sugi8823/6834584140554178561


公式試合動画
【公式】ハイライト:FC町田ゼルビアvsファジアーノ岡山 明治安田生命J2リーグ 第25節 2021/8/14
は、こちら(別サイト:YouTube)。
URL:https://youtu.be/FsBNW9LeUBQ


公式コメント
選手コメント
は、こちら(別サイト:Jリーグ.jp)
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2021/081413/live/#player


監督コメント
は、こちら(別サイト:Jリーグ.jp)。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2021/081413/live/#coach


造語


「ファンタジスタシステム」
2トップに技術のある選手を据えて、中央にポジションをとる。中央を通そうとするパスコースを制限し、サイドへ出した所を狙う。そこを突破された後も、粘り強く守り、ボールを奪ったら2トップにボールを集め、技術のある選手が攻撃に移った時に、2トップの傍にいき、技術と創造性を活かして、ゴールに迫るやや攻撃よりの作戦。

「ミッチェルプレス」
速さ・高さ・強さ・巧さ・持続力によって、19ミッチェル・デュークがプレスを繰り返して行く中で、攻撃的なMFが追随する中で、相手のパス回しの自由を大きく制限する。また、後方の選手もハイライン、中盤もコンパクトに保つ事で、高い奪取力を発揮する。ただ、チームとしての消耗も大きく、19ミッチェル・デュークの1トップ時しかできない作戦。

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