見出し画像

秋田の未来をつくる人たちを繋ぐ連結装置になりたい〜UGO HUB村岡さん

「杉の雫」から辿る、今回の対談は、yado & kissa UGO HUB(読み方:うごはぶ)より村岡さんが登場します。羽後町で人々が集まり、交流する場としてカフェ兼ゲストハウス、レンタルスペースを運営する村岡さん。2021年の夏からは起業を支援するアドバイザーとしても活躍されています。

今回の対談のテーマは「秋田の未来を考える」。取り組み方は違えど、秋田の未来を見据えた取り組みを行っている点は同じ、ということで決まった今回の対談です。杉の雫を取り扱ってくださるUGO HUBに迫りました。(*対談記事内、敬称略)

UGO HUBにて(左:村岡さん、右:株式会社サノ高嶋)

対談相手を務める「杉の雫」開発担当者・高嶋とインターン生・三政の対談はこちらから!


UGO HUBを通して実現したいこと

高嶋
「UGO HUBのホームページを拝見すると『これからの地方都市の未来を担っていく子供達のやりたい挑戦したいを叶える』とありました。この商品(杉の雫)も『未来を見据える』という点では同じだなと…」

村岡
「最初は、今言ってくれたようなことを掲げて2020年4月にスタートしました。大元は変わっていないですが、それを実現するための手段は試行錯誤をしながら変わってきているなという感覚があります。

当初は、子供たちにたいしてダイレクトに関わっていくというイメージを持っていました。しかし、縁もゆかりもない大人の私が、街を歩く子供たちに声をかけるのは難しいなと思って。今は、行政やNPOと通して子供たちと関わるようになりました。先日も、図書館の出前講座の一環として小学校でお話させてもらう機会をいただきましたね」

村岡
「社会人生活や人生を楽しんでいる大人たちの姿を次の世代に見せることで、『あ、大人って楽しいんだな』って思ってもらいたくて。正直、自分が小中学生の時に(そのような感覚が)なかったという原体験がきっかけです。楽しんでいる大人を(子供たちに)見せることで前向きにもなってもらえるし、やりたいことをやって良いんだな、とこのレンタルスペースを使ってもらうことで感じてほしいです。それを通じて、最終的には(目標を)実現できればいいなと思います」

秋田県羽後町の魅力と課題

高嶋
「村岡さんは、羽後町を(事業を行う場所として)選んだ理由としては、羽後町の人に魅力を感じたから…でしょうか」

村岡
「前職で関わった回数が多かったのが、羽後町でした。羽後町の人に魅力を感じましたね。外国人旅行者を秋田に連れてくる、という仕事をしていて、羽後町は電車もないし、西馬音内盆踊りの際に外国人旅行者がいるか、いないか…くらいの町だったんです。そういう状況の町に対して外国人旅行者を連れてくる活動をすることになり、県内大学の留学生に参加してもらって、田植え・稲刈り体験やホームステイをやっていました。

これまで外国人と関わる機会が多くなかった方たちに『〇〇体験してくれませんか、ホームステイを受け入れてくれませんか』と交渉していく中で、もちろん断られることもありましたが、思っていたよりも受け入れてもらえたんです。『よく分からないけど、やってみるか』みたいな。分からないものが目の前にあった時に、やってみるか、と思う人もいれば、分からないからやめておこう、と思う人もいますよね。思ったよりも「やってみよう」と言ってくれる人が(羽後町に)多かったです。未知なものに対して、前に進むか、後ろに下がるか、となった時に前に進む人が多くて、羽後町のノリの良さを感じました

村岡
「UGO HUBをやる時も世間的には、ゲストハウスみたいなものをやる、というように見えていたし、外国人旅行者も歓迎する宿にしようと言えば、地元の角館でやった方がいいんじゃない?と言われることもありました。でも、やりたかったことは、先ほど言ったようなこと(これからの地方都市の未来を担っていく子供達のやりたい挑戦したいを叶える)だったので。

じゃあ、なぜ外国人も大歓迎する宿機能を持った場所を作りたかったかというと、羽後町みたいな外の人とのコミュニケーションを取る機会が少ない場所にいる子供たちに、町外、県外、海外のいろんな価値観を持った人とコミュニケーションを取ることで、自分の選択肢や考え方の幅を広げてほしいなと思ったから、ですね」

高嶋
「なるほど…。三政さんは、大学でいろんな人と出会って考え方が変わったり、影響を受けたりしましたか」

三政
「そうですね…私はお話を伺いながら、高校生の頃の経験を思い出していました。地元で、高校生としてまちおこしをしていたんです。その時に初めて地元の大人たちと町のことを話し合ったり、市役所の方たちと未来について語ったりしました。その活動を通じて、初めて『外の世界がある』ということを知りましたね。

外の世界を知って、活動を進めていく中で、自分の物足りなさに気付いて、勉強しないといけないな、もっとこんな知識があれば秋田に還元できるかな、と思って、大学進学を決めました。学校や家庭、塾の外にいる大人と関わる機会って今思えば貴重だったなって。私にとっては、それがまちおこしの活動だったけど、羽後町の子供たちにとってはUGO HUBという場所なのかもしれないなって思いましたね」

村岡
「おっしゃる通り。今の子供たちが絡むのは極端に言うと、親と先生だけ…みたいな。それが一概に悪いとは思いません。だけど、いろんな経験をして、これから見たことのない出来事や物が出てきた時に、自分が持つ経験を基に『私はこうする』って自分で選択して決断して、選んだ道を自分なりに納得するという意味で正解にしていく感覚の方が必要になってくるんじゃないかなと思いますね。だからこそ、答えを遠くから『こうなんじゃないか』と考えて弾き出すんじゃなくて、自分の体で身をもって体験することが大事だと考えています。そういう意味でも『やってみたいな』と思い立ったら、すぐに体験できる場所がここ。今は大人たちが(UGO HUBを)使ってくれていますが、これから下の世代にも広がってくれればいいなと思いますね」

高嶋
「いろんな人と出会って話を聞いて、自分で好きなものや楽しいこと、ほしいものを選択していくっていうのが大事なのかなと思いましたね」

村岡
「経験に勝るものはないと思っているので。自分で行動していくのみだと思います」

「”好き”や”得意”が集まる場所」を作る

高嶋
「ここ(UGO HUB)だと、いろんな人が集まるので、足りない部分を補ったり、他の人からアドバイスを受けたりする中で、(自分の行動や考え方の)シフトチェンジもできるかな…って試すこともできますよね」

村岡
「自分自身がUGO HUBの利用者(出店者)の方からのアドバイスで起業支援のサービスを始めたので。そういう意味では利用者さんや常連さんに本当に助けられているなと思いますね。自分一人では何もできないなって。全部を自分一人でやろうとしない。私は不器用なので、絵が描けないんですよ。店内のポップも全てお客さんが書いてくれたものなんです。装飾や配置も『どうやればいいですかね』ってお客さんに相談しています。日曜大工が得意なお客さんに棚の製作をお願いしたこともあります笑」

高嶋
「得意な人だと苦もなく楽しめますもんね」

村岡
「そうです、だからその力をありがたく借りています。実は、このテーブルももらいものです笑」

高嶋
「卓球台…ですよね?」

三政
「え!卓球台!かわいいなと思ったけれど、卓球台とは!」

村岡
「知り合いのお父さんが、取り壊す予定の集会所に残った卓球台を使わないか、と声をかけてくれて。卓球カフェなんて面白いかな、と思って引き取ったんですけど、あまりにもこのスペースには大きかった!一度は蔵に眠らせたんですが、カフェのテーブルをどうするか考えた時に卓球台が使えそうだと思って、日曜大工が得意な方に切っていただきました笑」

高嶋
「みなさんの愛情が詰まっていますね!」

村岡
「ここのほとんどみなさんからのお下がりですね」

高嶋
「そうすると、この場所に愛着が湧いて集まりやすいですよね」

村岡
「すごく大切にしたのは『作り手を増やす』という点です。大工さんだけが作り上げた場所よりも、一個でもいいから自分が携わって作った場所ができたらいいかなと思って」

三政
「素敵です!高嶋さんは、商品開発という別の角度から秋田の人たちに影響力を与えていらっしゃいますよね。商品開発を通じて、こんな秋田の未来を作っていきたい…などありますか」

高嶋
お客さんに良いものを届けたい、というのはもちろんですが、秋田の企業や地域の人たちと一緒になって盛り上げていきたいとは思っていますね。これまで企業同士のコラボなどを見ることが多くないイメージだったので、これから秋田の企業で手を取り合って、秋田を盛り上げていくことで、より良いものを届けられるんじゃないかって」

三政
「これまでも高嶋さんが開発されてきた商品は、公設試だったり、他社であったり、必ず外の人と関わって作っていらっしゃいますよね。うちの会社単独で作っていないっていうのは、強みであり、面白いところだなって思っていますね。巻き込み型の商品開発!」

高嶋
「うちの会社は製造業ではないので、製造機能がないですからね…」

三政
「でも、だからこそ他者を巻き込んでいけるんじゃないかなと思いますね」

高嶋
「そういう意味では、UGO HUBもいろんな人を巻き込んでできた場所ですよね

村岡
「そうですね」

三政
「UGO HUBもいろんな人を巻き込んで出来ている場所ですし、杉の雫もいろんな人や企業を巻き込んだからこそ完成した商品です。秋田に暮らす人は減っていますが、だからこそもっと手を握り合っていけたらいいなとは思いますね」

村岡
「それぞれの強みを持ち寄って、より良い商品やサービスをこれからも秋田で作っていけたら楽しいですよね」


というわけで、今回の対談はここまで。他者を巻き込んだ場所づくりから未来の世代を育てたいという村岡さんの熱い思いに触れることができました。改めて、村岡さんありがとうございました。