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妊娠中もここちよく働くために必要な4つの対策

妊娠中、もしも運よく体調が安定していて、仕事がしたいと前向きに思った場合。フリーランスのわたしが気をつけたポイントは、この4つでした。

<1、取引先とのコミュニケーション>

お仕事とはいつだって、相手ありきのものだと思っています。働くことも妊娠することも、個人の権利。でも、お仕事を続けると決めた以上は、いっしょに働く方への配慮や敬意は必要です。私には「妊娠を理由に、取引先にご迷惑をかけたくない」という思いが強くありました。

そこで大切なのが、取引先に妊娠をいつ打ち明けるか
すべての妊娠の10~15%が流産し、その9割は「妊娠12週未満」に起きるといわれています。実際に私も、第一子と第二子のあいだに6週での化学流産を経験しました。
そして、自然流産の確率がぐっと下がる「妊娠16週」をこえると「安定期」と呼ばれる時期に入ります。一般的にはこの安定期以降に、周りへ妊娠を報告する方が多いようです。

でも、平均的なつわりは5週ごろからはじまり、8~9週にピークを迎えて、12週ごろから落ち着いてきます。そう、安定期の前なのです!!

細々とした単発の仕事なら、つわりや流産の不安の間でも、周りに黙って続けられるかもしれません。でも、もしも深刻な体調不良になったり、安静指示を受けたりしたら、すぐすぐで代わりがいないのがフリーランス。
責任が大きな仕事のときは、なるべく早く取引先に伝えておくと、あとあとのトラブルを避けられるのではないでしょうか。

私はいずれも8週(3か月に入ったころ)には、一緒に仕事をしている近しい取引先に妊娠を報告しました。ときどき単発でご一緒するような方々には、オファーをいただいたり現場に行ったりしたついででお話した感じです。

■ポイントは「状況と希望を正直に伝えること」

繰り返しますが、妊娠時の体調は、本当に人それぞれです。どれだけ優しい方にでも完璧に想像してもらうのは難しいし、優しいからこそ心配されすぎてしまうことがあります。

だから、とにかく具体的に話すこと。そうすれば、現場でも適切な対策を練ることができます。

「妊娠3ヶ月なので、立ちっぱなしだと貧血があります。でも、座っていれば大丈夫。だからロケは厳しいけど、普通の取材で納期1週間あれば問題ないです」「食べづわりがあるから、長丁場の取材では合間にグミを食べたいんですけど、いいですか?」

自分の状況と希望を伝えたら、あとの判断は取引先におまかせ。それでオファーがなくなれば仕方がないし、それでもご依頼いただけるのなら、現場では胸を張ってグミを食べればいいんです。

■オファーを断るときには、嘘も方便

とはいえ、微妙に体調が悪くていまいち働きたくなかったり、そもそも大ごとにしたくないなぁとか思うときもありますよね。

そんなときのオファーは「すみません、その日は別件がありまして……」で乗り切りましょう。そうしたら、元気なときはまたふつうに働けます。

ここで「妊娠していて体調がおもわしくなく……」と言ってしまうと、依頼側はどうしても気を遣うので、今後しばらくオファーがなくなる危険があります。なので「別件」が無難。受注する前には、嘘も方便です。

■予定日に近いタイミングのオファーは、どうする?

これはもう少し、話がシビアです。
デスクワークならある程度は前倒しで作業できるし、途中でうっかり生まれても、最悪巻き返せます。とはいえ、臨月近くはいよいよ何が起こるかわからないもの。外出の絡む予定は、いっそう注意が必要です。

ポイントは下記の3つ。

・健診時に医師と相談しつつ、取引先にはその状況を正直に伝える
私は健診のたびに「いま早産の兆候あります?」と医師に尋ねていました。臨月には「いつ頃になりそうですか?」とも。

もちろん、トラブルが起きるときは突然だから、それで100%安心ではないにしろ……取引先とほうれんそうするための情報にはなります。
「子宮口2㎝あいちゃってるので、もしかするともしかするかもしれません。だから、候補日のなかではなるべく前倒しにしたいです」などと交渉していました。

・臨月に入ったら、直近以外のスケジュールはひかえる
妊娠9か月くらいになると、3週間後のご依頼を受けることも微妙にためらわれます。なので、先々のオファーは「いまはあいていますが生まれるかもしれず、もし別のライターさんがいらっしゃらなくて私も生まれていなかったら……」などとお返事。そうやって慎重なスケジューリングをしていたため、逆に「明後日どうですか?」「いけそうでーす!」は結構あったように思います。

・どうしてものありがたいオファーは、念のためピンチヒッターを手配
ピンチヒッターをお願いするときは、勝手に頼まず、あらかじめクライアントに相談します。「私が万が一対応できなくなった場合は、こんな実績のあるライターさんに代理をお願いしてもいいでしょうか?」というように。
それでOKが出たら、ライターさんともお話し、緊急時の連絡ルートを整えて、ようやくひと安心です。

一人目のときは、予定日1週間ほど前まで、毎日作業しなければならないレギュラーワークがありました。一緒にやるメンバーには「異変があったら連絡するので、そのときは代打をお願いします」と連絡を徹底。
二人目は計画分娩だったこともあり、ピンチヒッターを押さえつつも、分娩日9日前に取材3件をこなしました。原稿は3日で全部納めた。トラブルがなくてよかったというのは、結果論です。

<2、ボリュームの調整>

これもまた難しいやつです。面白い仕事はやりたいし、ギャラのいい仕事もやりたいし、休んでいるとも思われたくない……。

自分の体調と相談しながら決めるのは、大前提です。
私は全期間とおしてかなり健康なほうでしたが、それでもつわり期の稼働は通常時の6割、中期以降も通常時の8割ほどになりました。なので、それくらいの稼働率が無理のない落としどころかな、と思っています。

目立ったトラブルがなくても、集中力がもたなかったり、机に向かうのがつらかったりするもの。取材と取材の合間にネカフェでいったん横にならなきゃもたない……みたいなこともしばしば。なので「取材は一日おき」「朝から晩までぶっ通しの現場は入れない」などの、地味な調整もしていました。

でも、たぶん当時の私といっしょに働いていた方々は、たぶん私がお仕事を抑えていたイメージってあんまりないと思うんですよね。
そう、こっそり稼働率を6割まで減らしたところで、大々的に止まってさえいなければ、周りは意外と気づきません。気づかなければ、オファーがあからさまに途絶えることもありません。

仕事の全貌が見えないフリーランスだからこそ「一件でも断ったら仕事が減っちゃう!」「妊娠で休んでいると思われたらマイナスだ……!」なんてことはない。こっそり自分のペースでいきましょう。

<3、セーフティネットの整備>

正直、生まれてからは子どもが熱を出しても家族や病児保育に頼めるし、自分が体調をくずしても薬を飲んでなんとか仕事ができるけれど、妊娠中は別。出血したり子宮口がひらいてきたりして安静指示が出たら、誰にも代わってもらえません。妊娠だけは自分がやらないといけないのです。だからこそ、あらゆるセーフティネットを整えたいところ。

■信頼できるピンチヒッターを確保

日ごろから「信頼できる同業者グループ」みたいなものをつくっておけたらいいなぁと思います。編集者の立場に立って「この案件をお願いするなら、〇〇さんかさくらさんだな」って思う、〇〇に当てはまる方々! スキルや実績はもちろんですが、さらに近いジャンル、近い年代、近いクラスタみたいなことでしょうか。あらかじめ、その方々が受けている仕事の相場や、忙しさなんかもなんとなく聞いておけるとさらにいい。

臨月でピンチヒッターをお願いしたときは、待機ギャラをお支払いして、取材日のスケジュールを押さえてもらったこともあります。もちろん案件の説明、クライアントとの取次もしておく。さいわい、稼働していただかずに済みました。

■なにかあったときの連絡ルートを決める

もしも万が一のトラブルが起きて、私が意識を失ったら。「SNSにその旨を書きつつ、この案件でこの人、この案件でこの人に連絡をしてほしい」といった話を、夫にしてありました。所属する会社にさえ連絡しておけばいい、というわけにはいかないので……。
しかし、臨月のときにやっていたことだけど、これって意外と平常時も必要だったりしますね。

■仕事で使うアイテムやデータを整理する

作業データはすべてDropboxにアップして、病院からでも作業ができるようにしていました。「急に入院したうえ、自宅のパソコンの自分にしかわからないところにあるデータが必要になる」という場面が、ないとは言い切れないから。緊急入院したら家族がさわれるように、パスも共有(このあたりは家族との関係性にもよりますが)。
そもそも健診でかなり時間を取られるから、どこでも作業できるようにしておいて損はありません

■できるだけ貯金しておく

会社員と違って、フリーランスに産休育休という制度はないし、みずから休業してもそのあいだの保証金はありません。だからこそ、切迫早産で長い入院などになろうものなら、収入に大打撃……。妊娠する前に女性特約などが充実した医療保険に加入しつつ、貯金も頑張っておくにこしたことはないなぁと思います。

<4、体調管理>

費用面では会社員の圧勝ですが、体調管理の面では、フリーランスはかなりのアドバンテージがあると思っています。1時間ごとに休むとか、メールの返信は寝っ転がってするとか、そういう小さな積み重ねができるだけで全然違う。フルタイムで出社していたら、きっとそうもいかないのではないでしょうか。

家ではそうやってこまめに休憩するとして、問題は外に出たとき。お仕事をいただいているという意識から、つい頑張りすぎてしまいがちです。
でも、妊娠していてもオファーをくださっているんだから、すこしくらいクライアントに甘えてもいいと思います。重いものを持ってもらったり、椅子が足りない場面で誰より先に座らせてもらったりしても、恐縮しすぎることはありません! お気遣いいただいたぶん、いい仕事でお返ししましょう。

ポイントは
・横になってできるタスクは横になってやる
・重い荷物を持たない
・とにかく座る
・ラッシュを避ける

私は家にいるとき、ほぼすべてのメールをベッドで返していたし、取材時間が選べるときは11~15時でラッシュを避けるようにしていました。シンプルだけど、本当に大事! ちゃんと休まないと絶対だめです。

<まとめるとポイントは2つ>

いろいろと細かいハウツーはあるけれど、どうやらすべての前提に、2つのポイントがあるみたいです。

★自分と赤ちゃんのことを優先する
★クライアントを信じる

不安定なフリーランスだからと、仕事を頑張りすぎてしまう気持ちは、本当に痛いほどわかります。

でも、自分と赤ちゃんを優先する。それは「やりたいこと全部あきらめて、毎日ただただ横になってろ」ということではありません。「自分なりに仕事や趣味を楽しみつつ、休めるときにはちゃんと思いっきり休もうね、身体をいたわろうね」ということです。

そして、思うように働けないときは、これまで自分を信じてくれたクライアントのことを信じる。当時は不安だったけれど、いまは真摯に向き合っていれば、妊娠・出産くらいで仕事は揺らがないと感じます。

というか、妊娠してなくてもいっしょ。自分のことをちゃんといたわって、クライアントを信じて、ここちよく働きたいですね。

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