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ロックと接続した2010年代の終わりに出した答え - UVERworld 「UNSER」

今年は1年通してほとんどをストリーミングで音楽を聴いた1年になった。

もともと好きなロックバンドを遡って聴く機会も増えたし、これまでほとんど聴いてこなかった洋楽やバンド以外(というよりバンドサウンド以外)の音楽を好んで聴くようにもなり、楽しめる幅がかなり広がったと思う。


リスニング環境の変化に加えて、この10年間好んで聴いてきた日本のロックバンドも、音楽性が大きく変わったり海外志向を感じさせる作品を出すことが多くなってきた。この1~2年ぐらいは自分も音楽シーンも大きな変化の真っ只中にいるように感じる。



そんな中、今年よく聴いた音楽と、この10年間好んで聴いてきたバンド音楽の間に立って両者を繋げるような作品がリリースされた。


UVERworldの10枚目のアルバム「UNSER」


正直言うと、これまでUVERworldを好んで聴いていた経験は無いし、ライブはフェスでも最初から最後まで観たことが無い。それでも今作はとても楽しみだった。


ロックバンドらしいパワフルなバンドサウンドに、打ち込みを駆使したEDMやトラップビートなど、この時代のエキスとなっているサウンドが融合している。歌に関しても、最初の2曲を聴いたら譜割りがヒップホップに影響を受けているのが分かると思う。



そして、リリース前からかなり期待を寄せていたのも、先行してリリースされたシングル曲から変化の予兆が十分感じられたからこそ。


打ち込み中心のクールな展開から、曲のハイライトで生のギターとドラムが一気に前に躍り出るのがとてもダイナミックで聴いていて圧倒される。


生音も打ち込みも共に芯が太くて肉体的なサウンドだが、それぞれ盛り盛りにしているわけではなく、スタイリッシュに両者をまとまめている。身体を絞ったボクサーのような力強さ。


歌に関しては、個人的にTAKUYA∞さんの歌は時に暑過ぎて重たく感じることもあるけど、この現代的なサウンドにこの滾る日本語詞を違和感なく乗っけられるのは凄いことだと思っている。

UVERらしい歌の力強さも含め、時代の流れに乗ったというよりも、バンドのミクスチャーロックが正当に進化した延長線上にある作品だと感じた。

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それでも、以前と比べて生バンド感が失われたことをネガティブに捉えているリスナーも意外と多いようだ。

だが、UVERworldはこの10年間で日本のロックとしっかり接続していったことを忘れてはいけない。

その象徴が、今年のROCK IN JAPANのヘッドライナーだ。冒頭の数曲しか直接目撃出来なかったが、日没間近のGRASS STAGEは他のアーティストのステージとは全く異なる空気を纏っていた。ステージとオーディエンス共に1つの塊となってぶつかり合うような気迫がヒリヒリと伝わってきた。


作品を重ねるごとに、いわゆる「ロックバンドの音楽」からどんどん刷新されていくが、それとは裏腹にバンドは然るべきステージに立ってロックを体現しているのだ。

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最初にも書いたけど「UNSER」というアルバムは、時代の真ん中で鳴っているサウンドと骨太なバンドサウンド、そしてエモーショナルな日本語詞の歌が融合しているのが本当に凄い。UVERなりに日本のロックに接続した10年代のアンサーとして相応しいアルバムだと思う。


UVERworldだけに限らず、BUMP OF CHICKENもSEKAI NO OWARIもRADWIMPSも、いわゆる「邦楽」「バンドサウンド」の枠を飛び出すような(というよりアップデートするような)アルバムを提げてドームでワンマンライブをやるのだから本当に頼もしい。それを昨年の時点でやってのけたONE OK ROCKだっている。

やれ日本の音楽はガラパゴスだとか、バンドは過去の音楽だとか言われることもあるかもしれないけど、自分は日本のロックバンドは次の10年も進化していくと期待せずにはいられない。



そんなこんなで、10年代の終わりの終わりに、20年代の橋渡しになるアルバムがまた1つ誕生した。是非とも聴いて欲しい。

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