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変わらない者は

この国には奴隷制度があった。数年前、国王は奴隷を解放した。
当然、奴隷を使って利益を上げていた人々は奴隷解放を快く思わなかった。この国は工業が発達しており、多くの奴隷が向上で働いていたため工場経営者は奴隷解放に反対していたのである。
とある工場長の息子、ヨキムもそうだった。ヨキムは元奴隷の人々を見下しており、元奴隷は自分より劣った存在であるから支配されるべきだと考えていた。

政府が奴隷解放宣言したのにも関わらず、ヨキムは解放された奴隷を無理やり連れ戻し、昔のように働かせようとした。
しかし、ヨキムの父は息子を強く叱り、それを止めた。ヨキムの父は元奴隷の就職先や家の手配をした。元奴隷たちはヨキムの父を慕い、横暴なヨキムを憎んだ。
ヨキムは相変わらず差別主義者で、元奴隷が街を自由に歩くことさえ腹立たしく思った。
そんなヨキムに、自ら以前の奴隷のように働き、工場に尽くしたいと申し出る少年が来た。
ヨキムの父は奴隷のように働くことは既に法律違反であるし、自分を大切にできない人は働いてほしくないと少年に諭す。しかし、ヨキムの父は急死してしまう。

ヨキムは少年を表面上は従業員として雇い、政府にばれないように少年を奴隷としてこき使った。少年は、どんなきつい仕事でも文句ひとつも言わずこなし、廊下で寝かせられても「屋根のあるところで眠れて幸せだ」とヨキムに感謝した。
しかし、少年が懸命に働いても工場の従業員が少なすぎる。仕事が回らない。ヨキムは大金を出し、街の広場に求人広告を出した。

ヨキムは少年に命令した。就職の面接に来た人に「ここは働きやすい場所で、自分の意見を言ってもいいし、体調不良のときは休める。」と話せと伝えた。少年はヨキムの言うとおり、面接に来た者にそう話した。

数日後、政府の役人が来た。役人は少年と話があるといい、少年を連れていった。時代錯誤のヨキムは自分の財力とコネで上手くごまかせると高を括っていたが、三日後にヨキムの工場は閉鎖された。
少年は元奴隷で奴隷解放団体のメンバーだった。奴隷制を止めようとしない、ヨキムのような者をあぶり出し復讐するために活動していたのであった。
役所からでた、少年は本当の自由を手に入れ、街に消えていった。

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