
企画から聞きたくなる「空間と作品」の楽しみ方
東京・京橋駅にあるアーティゾン美術館(旧ブリヂストン美術館)。知人のお勧めで「空間と作品」に閉幕間際に駆け込んだ。サブタイトルは「作品が見てきた景色をさぐる」。

会場に入ると、見覚えのある二体の木彫りの仏像、部屋にはそれ以外に何もない潔さ。親しみやすい笑顔の木彫りの作品は円空。「祈りの対象」という部屋だった。部屋の先には、赤で彩られた部屋が見えてくる。
数年前、魅力的な展示についてリサーチしていた頃、あるクリエイターの方に「入り口が大事だ。入った時の印象にどれだけインパクトがあるか。大きさでもなんでもいい」と教えてくれたのを思い出した。
My favorite place
….. 感じたものは人それぞれですし、それを日常にどう取り込むかも人それぞれですが、ここでは、かつての人たちが自分にとってのお気に入りの場所を作り上げたことに倣い、現代版お気に入りの場所をいくつか試みてみました。棚のほんの小さなひと区間でも、高価な美術品でなくても(美術館なのでここでは美術品を飾っていますが)、自分にとって心地よい空間であれば、よいのです。今日家に帰ってぐるりと部屋を見回してみると、いつもの空間に何かを見出すかもしれませんよ。
ピカソの絵が1枚だけ飾られた部屋では、絵を眺められる空間にはリビングにあるような白くどっしりとした椅子が置かれ、来場者がくつろいでいた。一瞬、絵のオーナーの気持ちになれる。このピカソの絵を買った人は、どんな部屋に絵を飾り、誰と、朝夕のひとときを過ごされたのだろう。

作品とその作品の所有者を明かしてくれる展示も面白かった。
こちらはブランクーシの「The Kiss」。見たかった作品!
想像していた以上に大きなオブジェは、ブランシェット・ロックフェラーがコレクションしていたそうだ。

額をメインテーマにした展示も、面白かった。額の起源は16世紀、カンヴァスが普及してからなのだそう。
それ以前、絵が描かれていたのは教会の壁や祭壇を飾る板で、建造物の一部でした….そして、えがかれている内容は神聖なものだったので、建物の中のそうでない部分と差別化する必要がありました。そこに設けられた境界線、つまり縁取りが額の起源と言われます
(アーティゾン美術館 展示説明より)
時代順に国ごとに額の説明がある。シンプルからデコラティブに、そしてより洗練されシンプルに戻るのが見て取れて、額と絵を交互に見比べる。
また、展示説明は驚くほどシンプルで軽やか。話しかけるような語り言葉のものもあった。もっとみたい方は「QRコードを見てね」とか。

6Fから3Fへ展示を見終わると、最後に
銅像が飾られている。創設者の石橋正二郎氏。「好きな絵を選んで買うのが何よりも楽しみであるが、もとよりこのような名品は個人で秘蔵すべきでなく、美術館を設け、文化の向上に寄与することが兼ねてからの願いであった」(同美術館 HPより)とある。美術館を設立以来70年。NYにMOMAがあるように、都心の真ん中に、人々のために余白のある豊かな空間を創られたことに感謝🙏
帰り道、年間パスポートがないのか調べてみた。今年は1月4日に発売で、すぐに完売したようだ。