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人間国宝をみせる 〜HOMO FABER 12 Stone Garden



H OMO FABER  深澤直人と12人の人間国宝」を見に、MOA美術館に行ってきました。観光客で賑々しい熱海の街中で、熱海銀座に向かう途中、ふと目にしたポスターにつられてです。

MOA美術館は、熱海の町の喧騒の反対側、急斜面の坂をぐいぐい登って行った頂上にあります。バスで5分程度、距離にして3キロ強。遊歩道も一応あります。でも、歩いているいる人はあまり見かけません。
山の上だけあって、美術館のある広場に降り立つと、視界が一気に広がります。海にうかぶ初島がアクセントになり水平線を感じられ、晴れた日にはそれは気持ちの良い眺望を独り占めできる場所です。

MOA美術館のエントランスに向かう

人間国宝とデザイン、映像の掛け算

目当ての展覧会は、イタリアのヴェネツィア・ビエンナーレに合わせて、ミケランジェロ財団が主催した「ホモ・ファーベル展」の企画の一つでした。
パンフレットによると、「世界中から集まった美術ファンを魅了し…」とあります。 興味を惹かれたのはそうしたことよりも、(デザイナーの深澤直人が人間国宝とどうコラボするの?)の方です。

日にちを間違えた?



会場に到着すると、この企画展の気配はなくて、「開館40周年記念名品展 第3部」が開かれていました。
MOA美術館を訪れると、美しい工芸品たちばかりで毎回圧倒されるのですが、今回は、色絵の入子茶碗、尾形光琳作の小ぶりの茶器だったり、志村ふくみさんの着物、他にも美しい工芸品や着物の数々、ため息が出るような良品ばかりが品よく(量も多すぎないところがいい)展示されています。

(あぁ、ポスターで見た企画は次回だったんだ。勘違い、まあでも来て良かった)と思いながら最後の部屋に入っていくと、そこが「ホモ・ファーベル展」でした。

手仕事のプロセスをみる

蒔絵螺鈿のお盆、竹細工、紙貼人形、着物…など作品が展示されていると同時に、壁に小さなモニターが置かれていて、写真家の川内凜子さんが人間国宝の手仕事を制作過程から追いかけた映像を見ることができるのです。この映像が素晴らしくて!!

蒔絵を描いていく様子、竹細工を編んでいく様子。完成した作品を鑑賞するのとこの映像を見ながら鑑賞するのとでは見て、感じる行為の広がりが全く変わります。 
モニターは小さなものでした。一昨年に工場の祭典(燕三条)でみた工場の職人がものづくりをする様子を示した、圧倒的に大きなスクリーンを見たときには「スクリーンは大いいものがいいんだ」と思っていたけれど、今回は精緻で美しい映像であれば大きさは関係ないんだな、と思い直しました。

おそらく大々的にはこの展示が伝えられていないのではないかと思うのです。でも、東京から離れて自然に囲まれた美しい空間の中で、わざわざこの展示をみにくる価値は大いにあると思いました。

MOA美術館のカフェより… マグカップは人間国宝の方の作品より同氏が監修したもの

都会のミュージアムと地域のミュージアム

ちょうど、このnoteを書いている昼間、人気の国立博物館150周年記念の「国宝展」の会場にいました。場内は時間制限があるにかかわらず大勢の人でごった返していました。後ろの方からふらふらと鑑賞しながら、MOA美術館の静かな空間に身を置いた贅沢な時間を思いださずにいられず。

どちらがいい、ということではないのです。ただ、都心から離れた場所で、自然とともに、同じように一流の作品を鑑賞できる稀有な場であることを思います。


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