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京都ひとり珍道中

「そうだ、京都に行こう」
私は大学で毎日デザイン漬けの日々を送っていたある日、ふとそんなことを思った。

というのも、そういえばまだ自分が中学生だか高校生だったころの修学旅行の時、京都の街を見てもどんな街だったのかあまり覚えていなかったからだった。
行ったはずなのに、どんな街だったかな。

不意にそんなことを思った私は、その一週間後くらいに人生初の夜行バスを新宿で待っていた。
思い出せないなら、行ってみよう。
カメラとリュックを持って京都に向かうことにした。

夜行バスに乗り込み、ぼんやりと過ぎ去っていく東京を眺めながら、気がつくと朝方になっていた。
京都に着いたのは、まだ街が寝静まっている朝の5時ごろだった。

早朝の京都はまだ薄暗く、ちょっと大きめのリュックを背負いながら、京都駅で3日間バスと電車が乗り放題のチケットを買い、ホテルまで向かった。

平日の朝の京都の電車は、通勤する人たちがちらほらと見えた。京都は通りがたくさんあって、前来た時はぼんやりとしか歩いてなかったし、早朝のために薄暗い辺りを見渡しながら、自分の予約したホテルにたどり着き、一息つく。あぁ、着いたんだなぁとぼんやりと窓の外を見ると日が昇り始めていた。「あ、行かなきゃ」
私は不意に何かに呼ばれるようにホテルを出て、早朝の京都の街に足を踏み出していた。


はじめに行ったのは、下鴨神社だ。

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下鴨神社は、まず大きな杉の木が綺麗に並ぶ森が出迎えてくれる。早朝で人もまばらにしかいない森を歩いていると、深々とお辞儀をしている地元の方がいた。

当時、私が住んでいた町にも、大きなお寺があった。お寺を通るときは、やっぱり背筋が伸びるような気持ちになっていた。そして毎朝そのお寺を通り通学していた私は、京都という町の生活の中にも、当たり前のようにこの場所があるんだと不思議でだけども優しいきもちになっていった。

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通学する子供たち、自転車に乗るお母さん、慌ただしく駅に向かうサラリーマン。
平日の、しかも観光客の少ない時期に行った京都は、あの頃の京都よりも、優しく日常を見せてくれた。それからは、まるでこの町に暮らしているかのような気持ちで気ままに京都を歩けた気がする。

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地元のパン屋さんで、焼きたてのパンを買い、鴨川沿いを歩いてみたり。
夜の先斗町をラムネを飲みながら歩いてみたり。
路地裏にはいってみたり、お寺にいって暫くそこで思いにふけってみたり。

銀閣寺では、丁度枯山水を綺麗に直している途中で、少しずつ石を綺麗に直していく職人さんの姿が、とても印象に残っている。
(話しかけると、決まった曜日に整えに来ているとおしえてくれた)

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京都では街中の路地にある手巻き寿司屋のお店「AWOMB」に(http://www.awomb.com)

人気だという話だったので、開店する15分前に店に向かうと、誰も並んでいなく「えっ?合ってる?」とそわそわしながらも並んでいると、続々人が並び始め、地元のおじちゃんに「なんの列なの?」と話しかけられたのを覚えている。しばらくその人と話していると、お店が開き、店内へ。
色とりどりのお寿司はとても綺麗で、店員さんの物腰の柔らかさにホッと息をついていた。

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(出展/http://www.awomb.com)

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何日目かの朝は雨の音で目が覚めた。
ふと、予定外だった嵐山の竹林に行ってみようと思った私は、朝の6時に傘とカメラと財布とパスだけ持って、嵐山行きのバスに乗り込んだ。

あの有名な橋も人はおらず、傘をさしながら雨の中を歩いていた。

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反対側に着くと、休憩所があり、温かいお茶を自販機で買い飲みながらカメラのシャッターを切っていると「雨すごい降ってきちゃったねぇ」「ひとり旅なの?」と地元のおじいさんとおばあさんに話しかけられた。
「ちょっと寒いよね」
「はい、でも人が少なくて、なんだか新鮮で…修学旅行できた時にはたくさん人がいたから…どちらかというとなんだか幸運だなぁと思っていました」
「あら、私もこの時間の渡月橋が好きなのよ」
「私は晴れの日がすきだけどなぁ」
「あら、でもついてくるじゃない、あなた」
2人と話していると、いつのまにか雨が止んでいた。

ではそろそろと、さよならを言うと
「今なら竹林にも人がいないはずだから、あなたは幸運ね、きっと」と笑いかけてくれた。

竹林に行くと、本当に誰も居なくて、思わず笑みがこぼれていた。

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何日目かのバスの中、京都の町にも慣れてきた私は、ぼんやりと気ままに旅をしていた。すると、旅行客の女性二人組に、道を聞かれた。
わたしはたまたま、2日前にその場所に行っていたので、道を教える
「わたしも旅をしてて、2日前にそこに行ったんです」と話すと、「地元の方かと思いました」ととても驚かれて、こちらがびっくりしてしまった。

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帰りの新幹線に乗り込む頃には、
私の中の京都へのイメージが、格式張ったような旅先から、人が生きている町に変わっていた。

それが、私の人生2回目の京都だった。

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