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弱火でトロトロ書くように。

昨年のある暑い夏の日。額に汗がじんわりとにじむ夜。彼はうちの自宅へとやって来た。彼がいったい誰なのか、ぼくにはわからない。そんなぼくは顔に笑みを作っていたが、その仮面の奥はというと…自信がなかった。なんなら少し、困り気味だったかもしれない。それくらいに、ぼくには彼の存在の意味がとんとわからなかったのだ。

しかし、妻は彼のことを知っていたようで、快く我が家に招き入れていた。「うれしい!」と弾むように言って浮かべた彼女の笑顔は、ぼくのとは違ってまぎれもないほんもののように見える。名前を確認すると、どうやら外人のようだ。困り果てたぼくは、思い切って奥さんに彼のことを聞いてみることにした。それでやっと、ぼくは彼が誰なのかわかった。

そんな彼の外見を紹介しよう。

この写真を出した時点で擬人化して表現することに疲れを覚えてきたため、ここらへんでやめることにしよう。彼と呼んでいたのは、「ANOVA」という低温調理器具のことだ。

たとえばお肉などに火を通して一気に高温で調理するのではなくて、50〜70℃くらいの低温のお湯に長時間入れて調理する器具。奥さんが調理しているのを何度も見ているが、朝から晩までとか一晩中とか、ほんとにずーーーーーっと加熱している。これを使って作られたローストビーフを食べてみると、身が柔らかくて口に入れただけでとろけるようである。これは一気に火を通して加熱する方法では出せない味なのだろう。

このANOVAの調理方法に、ぼくはシンパシーみたいなものを感じた。ぼくのnoteの原稿って、低温でずーーーーーっと加熱するような書き方に近いかもと。超大作や派手な力作みたいなものを作らず( 作れず…かもしれないのだけれど )、毎日まいに来る日も来る日も、ある一定量を淡々と書き続ける書き方。

最高に美味しい味の絶品料理ができないじぶん、派手にドカーンと話題にならないじぶんに落ち込むことがたくさんある。

だけど、こんな低温調理みたいな書き方でも着実に読者さんがついてくださっている。その事実のほうに目を向けて、今日も弱火でトロトロ書くように。

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いつも読んでくださっているみなさん、ありがとうございます。ときどき遊びに来てくださっているみなさんも、ありがとうございます。今日はじめて読んでくださったみなさん、ありがとうございます。

やわらかいお肉ならぬ記事を調理して、また明日も明後日も明々後日もお待ちしていますね。

追伸、、、
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