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それでも生き残る、「ロボットアニメ」の現在

■キッズ向けロボットアニメと玩具会社の関係
ネットを見ていたら「ロボットアニメ消滅の危機!」といった話題を目にしました。昨今、子どもたちを夢中にする新しいロボットアニメが生まれていないのだそうです。

10年ぐらい前に、知り合いのプロデューサーから「なぜいまロボットアニメの企画が成立しないか」のお話を伺ったことがあります。説明は、シンプルかつ明確でした。
ロボットアニメが成立しないのは、子どもたちからのニーズがなくなったというよりも、スポンサー側の問題だというのです。

ロボットアニメは70年代の『マジンガーZ』や『ゲッターロボ』の頃から、玩具会社の戦略と深く結びついています。テレビに登場するロボットを玩具化して、主に男の子たちに売ることで利益をだす仕組みです。
ところがこの作品をスポンサード出来る玩具会社が、いま国内にほぼ2つしかないといいます。バンダイとタカラトミーです

玩具会社は番組放送でキャラクターやロボットの認知を上げ、関連商品を販売します。作品の認知を上げるには、アニメ番組放送期間が1年ぐらい必要です。
また放送時間は子どもたちがテレビの前にいる夕方か週末午前中、さらに放送のスポンサー枠を自ら支えなければいけません。玩具開発や広告にもお金がかかります。ロボットアニメは、アニメ番組のなかでもとりわけ資金が必要なジャンルです。

■2強寡占の日本の玩具業界
日本の玩具業界は特異な市場で、年間売上高2400億円のバンダイナムコホールディングスのトイホビー事業と1700億円のタカラトミーが2強の寡占状態にあります。3位以下は、数十億~数百億円台といきなり売上の桁が変わります。
ロボットアニメが多かった70年代~80年代の高度成長期には、国内にはいくつもの玩具会社がひしめいていました。しかし統廃合や倒産などもあり、現在はテレビアニメの枠を維持して、おもちゃを開発して、流通に乗せ、大きな宣伝を打てる体力のある企業はほとんど2社に絞られます。

しかも最大手のバンダイナムコグループは、「ガンダム」という巨大なロボットアニメのフランチャイズを保有しています。ガンダムと競合する新たなロボットアニメブランドを築くより、ブランド力の高いガンダムを多角化、活性化させたほうがビジネスとして合理的です。
タカラトミーにも「トランスフォーマー」という長年続くロボットシリーズがあり、新たなロボットの入る余地は小さく見えます。定番玩具「プラレール」とアニメと結びつけた『新幹線変形ロボ シンカリオンは、そうしたなかで誕生した裏技的なアイディアが秀逸でした。

子ども人口の問題もあります。国内の子どもの数はかつてより随分少ないですから、玩具の売上げ見込みも小さくなります。中堅以下の玩具会社にとってロボットアニメはますますハードルが高くなっています。
こうした問題は、実はロボットアニメに限りません。女児向けの魔法少女アニメなど、子どもターゲット作品はいずれも同様の課題を持っています。

■ロボットアニメは玩具だけでない
と、ここまでロボットアニメの企画が成立しない理由を書いてきました。しかし多くのかたがすでに気づいているように、それでもロボットアニメはいまでも多く作られています。それはガンダムやエヴァンゲリオン、マクロスといったロングブランドの作品に限りません。
2000年代には、『コードギアス 反逆のルルーシュ』や『交響詩篇エウレカセブン』といった新たなロングシリーズは誕生しています。『天元突破グレンラガン』、『ゼーガペイン』といった傑作をいくつも挙げることが出来ます。2010年代も同様です。2019年にヒットした映画『プロメア』も、間違いなくロボットです。

「ロボットアニメ衰退」と言及されるのは、実は70年代、80年代に一世風靡したキッズ向け玩具展開の作品ばかりを考えがちです。確かに、そこに昔ほど沢山の新しい作品を作れる環境にありません。
しかしアニメ作品のなかのロボットは、いまでも健在です。ただそれはロボットばかりが前面に立つというより、世界観や映像、ドラマに密接に結びついたものです。作品を盛り上げる要素としてロボットの魅力はますます重要になっています。そして作品と共に、優れたロボットのデザインは多くの人の記憶に刻みつけられていくはずです。

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