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現在バイアス対策で”アリ”の5つの幸せ(健康)をつかむ

現在バイアスとは、将来の大きな価値よりも目の前の小さな価値を優先してしまう人間の心理のことです。

わかりやすく言うと、イソップ寓話として古くから知られる「アリのキリギリス」におけるキリギリスの心理のことですね。

夏のうちから冬に向けて食べ物を蓄えていたアリに対して、ギリギリスは冬のことはその時に考えればよいと先延ばしにして歌って過ごし、後から後悔するというあの寓話です。

プライベートの生活でも会社での仕事でも、この現在バイアスに陥る局面は多数あるので、対策を立てておくと、アリ同様にその後の生活、仕事で幸せ(健康)を感じやすくなりそうです。

結論から言うと、以下の対策が有用ではないでしょうか。

  • まずは現在バイアスに包まれた自分の認識構造を自覚する

  • 何かの誘因を目の前にした行動や、仕事での短期効果を狙った施策実行前に、一呼吸おいて失うことがないか考えることを習慣づける

  • 自分の双曲割引の傾きの相対的特性を予め把握しておく

  • 常に数年先のビジョンをもって、その達成のため今からやるべきことに対して適切なコミットメントを設定し、少しずつ実行していく

目の前の小さなベネフィットを優先してしまう現在バイアスとは

このように将来の大きな価値よりも短期の小さな価値を優先してしまう人間の心理は、行動経済学の分野で現在バイアスと呼ばれています。

Google Scholarにて”Present Bias”で検索すると2022年以降でも多数の研究論文がヒットすることがわかります。

いかに人間の認識が危ういものか――そのポンコツぶりがわかりますね。

この人間心理は、下図のような双曲線(双曲割引)で表されることが知られています。

人による双曲線の違い

将来のベネフィットのための理性的思考や忍耐力が強い人と、目の前の誘惑に飛びつきやすい人ではこの双曲線の傾きが異なるということになります。

iCAREマーケティングチームのKPIと現在バイアス対策

弊社のマーケティングチームでは有効リード数※を主要KPIとして日々の業務を推進しています。

(※「有効」とは弊社のビジネス特性上、労働安全衛生法上で産業医選任などの義務が発生する50人以上の企業様で、健康管理に関わる人事労務系の部署のことを指しています。)

このKPIの最大化に向け、オーガニック、Google・Yahoo・Facebookなどでの運用型広告、人事労務系メディアでのメルマガ広告、イベント・セミナーなどを主要チャンネルとして、日々の有効リード獲得数、有効リードCPA、商談化状況を睨みながら、クリエイティブ要素や費用のメディア配分などを最適化しています。

組織として目標と評価のPDCAサイクルは、四半期を基本として、更に月次、週次、日次とより細かい時間軸でも有効リード数をはじめとする各種KPIを見ています。

ただ、こうしたKPIマネジメントで気をつけるべき点として、短期視点偏重になりやすい現在バイアスの問題があります。

中長期視点でのブランディング活動などのための費用などの合理性は、費用を投下するタイミングと効果が現れてくるタイミングにズレがあるため、上記の短期視点とは異なる時間軸かつ別のKPIを設定する必要があります。

また、新規獲得有効リード数だけでなく、既存リードを商談につなげるナーチャリング活動におけるKPIも合わせてチェックすることが重要になります。

働くひとの健康と現在バイアス、その対策

この現在バイアスの問題は、働くひとの健康とも大いに関連すると思うので、もう少し深堀りしてみたいと思います。

弊社ではCarelyファイブリングスという独自のフレームワークに基づいて、カンパニーケア(働くひとの健康づくりに対する企業の取り組み)を推進しています。

このフレームワークでは、事業成長を目的とした働くひとの健康づくりに対する企業の取り組みを以下の5つに分類しています。

①安全と衛生とは、労働安全衛生法や労働基準法といった労働環境における法令上の義務に関わる領域なのですが、ここばかり気にしていると、働くひとそれぞれの長期的キャリアを含む働きがいや生きがいという個人の価値観への依存度が高い視点が疎かになる可能性があります。

Carelyファイブリングスでは5つのリングを順番や重要度で一律に評価せず、企業の戦略を合わせて重みづけを調整するというスタンスをとっているのですが、別の言葉で言うと、カンパニーケアにおける現在バイアスを防ぐ考え方とも言えます。


左から二つ目の②健康増進には、働くひとの食生活や運動習慣の改善への取り組みがあります。

ここでは、個人の現在バイアスからもたらされる様々は問題を含んでいます。

頭で糖質制限しないといけないことはわかっちゃいるけれども、目の前にある美味しそうなスイーツを見ると、今日は仕事を頑張った自分へのご褒美ということでいいでしょ!と都合のよい理由で自分を納得させてしまいがちです。

このように後から自分の言動の辻褄を合わせて正当化する心理は行動経済学で一貫性の原理とも呼ばれています。

思い当たるフシはありませんかね?

こうした五感刺激に対する自分の反応パターンは家族や友人など身近な人と比べてみると、自分を客観視しやすくなるかもしれません。


働きやすさという観点では、日本でもようやくダイバーシティ(多様性)の重要性がさかんに取り上げられてきています。

ただ、実態はというと、下記の世界経済フォーラム(World Economic Forum)によるジェンダーギャップ指数2021(Global Gender Gap Report 2021)を見ると、調査対象である156カ国中120位という先進国の中で最低レベル、ASEAN諸国よりも低いレベルです。

Global Gender Gap Report 2021

採用面接の現場になると、性別だけでなく年齢、価値観、アピアランスなどで直感的に自分と似たタイプを選びがちで、長期視点での組織のイノベーションやリスク検知力を低下させてしまうという現在バイアスが働きがちです。

現在マーケティングチームでは事業の急成長を受けて下記の多数のポジションを募集していることもあって、僕の稼働時間の多くを面接含む採用活動に割いていますが、改めて欲しい人材像がぶれないように面接を進めないといけないと考えているしだいです。

自分の中だけでなく、最終面接者となる役員とも欲しい人材像を擦り合わせておくことが大事ですね。

  • マネージャー

  • コンテンツマーケティング

  • メールマーケティング

  • 広報・PR

  • アシスタント


働きがいという点では、多くの企業で従業員のスキルアップ支援に取り組んでいるかと思います。

スキルアップというとまずは自分が直接的に取り組んでいる業務領域で足りていないスキルを補おうとする傾向がありますが、すぐに役立つ知識・スキルは時代の変化とともに陳腐化しやすい面も持ち合わせています。

マーケティング領域では例えばGoogle Analyticsなどの分析ツールやHubspotなどのMAツールの活用スキルなどですね。

逆にクリティカルシンキングや具体・抽象思考などの本質的思考力や、対人関係スキルなどは習得するのに時間はかかるものの、どの会社でも通用するポータブルなスキルといえます。

ここにも現在バイアスの罠が潜んでいますね。

弊社の各部署部長以上では持ち寄りの本の輪読会を隔週で開催しているのですが、業務から少し離れた領域の本が推奨されることもしばしばです。

これはまさにスキルアップにおける現在バイアスを防ぐ対策とも言えます。

要は、直接・間接、短期・長期という両面でスキルアップをはかることが大事だということです。


Carelyファイブリングの図で一番右側に位置づけられている⑤生きがい領域は、個人の価値観が最も色濃く反映される領域ということもあり、多種多様な現在バイアスに気をつける必要があります。

社会的地位を得るために日々家で仕事ばかりしてしまい、家族との会話時間をなおざりにしていてある日迎える悲劇。

家族の家計のやりくりのため、日々の買い物における数百円の節約に目を奪われ、駐車場費用、保険料、通信費といった大きな固定費削減、ふるさと納税活用、NISAや米国インデックス投資などを「よくわからない」、「面倒そう」という理由で放棄してしまう人間心理。

運動や睡眠の大事さはわかっているものの、ついつい深夜までゲーム三昧の時間を過ごしてしまう心理。

これらはまさに現在バイアスがもたらすマイナス面と考えられますね。

最後に

記事冒頭にも記載しましたが、こうした現在バイアスに陥らないように、以下のような対策をとってみてはいかがでしょうか。

  • まずは現在バイアスに包まれた自分の認識構造を自覚する

  • 何かの誘因を目の前にした行動や、仕事での短期効果を狙った施策実行前に、一呼吸おいて失うことがないか考えることを習慣づける

  • 自分の双曲割引の傾きの相対的特性を予め把握しておく

  • 常に数年先のビジョンをもって、その達成のため今からやるべきことに対して適切なコミットメントを設定し、少しずつ実行していく

ただし、短期思考がすべてだめだというつもりは毛頭ありません。

長期的なリターンのために我慢ばかりしてストレスをためてしまうようでは本末転倒とも言えます。

先に記載した双曲割引のカーブは人によって異なるので、短期思考と長期思考のバランスは一律の正解はないはずです。

「健康」と同様に、思考の最適な「時間軸」は人によって異なる価値観の問題といえると思います。

しかし、人間心理にはこうした非合理的なバイアスがあることを把握しておくことは、多くの人にとって有益であると思うしだいです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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