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慢性的な不具合は、なぜなぜ分析には向かない

 「なぜなぜ分析は、突発的な不具合には効果があるが、
  慢性的な不具合には向かない」

と言われます。それはなぜでしょうか。

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これは、突発的に大きな不良、あるいは問題が起きる図だと思ってください。上図のように、大きく品質を損ねてしまって、運用や業務に支障をきたすような不良、問題のことを「突発的」な不具合と呼んでいます。

これに対して

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このように、「品質」と一言でいっても幅があり、一時的なものではなく、頻繁に同レベルの支障が発生してしまうような不良や問題を「慢性的」な不具合と呼びます。

機械・設備に代表されるような品質トラブル、あるいは「人」が起こす業務トラブルなどを大別すると、基本的にはこの

 「突発的な不具合(ロス、ミス)」
 「慢性的な不具合(ロス、ミス)」

に大別することができます。そして、突発的な不具合には「なぜなぜ分析」が有効ですが、慢性的な不具合には向きません。慢性的な不具合には、たとえば「PM分析」が有効です。

なぜなぜ分析は、不具合(ロス、ミス)発生原因を特定化する帰納法のことです。個々の特殊な事実や命題の集まりから、そこに共通する性質や関係を取り出し、一般的な命題や法則を導き出す分析方法です。

帰納法は、ロジカルシンキングの1種で、さまざまな事実や事例から導き出される傾向をまとめあげて結論につなげる論理的推論方法となります。

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なんかこう…多数決的なニュアンスですが、「多くの人がそう言うなら、そうに違いない」という発想になりやすいのも、こうした思考傾向があるからなのかもしれません。

突発的な不具合の原因構造は、単一原因や複数原因に考えられますが、問題を起こしている原因は限定的であり、特定されたものとなります。

たとえば、

 「給油しないから(原因)、歯車が焼きついた(結果)」
 「安全装置がないため
(原因)、ケガをした(結果)
 「マニュアルの判断ミスで
(原因)、不適合品が発生した(結果)

と言ったような感じです。原因さえ取り除いてしまえば、突発的な不具合は解決することが可能となります。


PM分析は、不具合発生メカニズムを解明する演鐸法による分析方法となります。一般的原理から特殊な原理や結論を導き出す分析方法であり、なぜなぜ分析とは異なるものです。

演鐸法も、帰納法と同じくロジカルシンキングの1種で、一般的かつ普遍的な事実(ルール・セオリー)を前提として、そこから結論を導きだす論理的推論方法となります。

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演鐸法は、「三段論法」とも言われ、

 ①「ルール(または一般論)」
 ②「観察事項(または事実情報)」、そして
 ③「(必然的に導き出される)結論

で構成されており、非常に強い説得力を生み出します。

なぜなぜ分析の『原因を特定化する』とは、言い換えれば「犯人を特定する」と言うことです。一度特定し、解決すれば、二度と問題が起きないようになります。つまり、慢性的に問題を起こさない対策となるのです。

これに対して、PM分析の『メカニズムを解明する』とは、犯人を見つけることではなく、「犯行にいたる経緯(プロセス)を明らかにする」ことです。慢性的に起きている仕組みそのものを明確にするため、すでに慢性的に起きる根源的な原因を解決する時に使えると言っていいでしょう。

PM分析とは、予防保全や生産保全の意味のPMではなく、

Phenomena(現象)をPhysical(物理的)に解決し、
現象と設備のMechanism(メカニズム)を解析(理解)し、
4M(Man、Machine、Material、Method)との関連性を追究する

メカニズムの解明のことです。PとMの頭文字を取って「PM分析」と言います。慢性的な不具合では、原因と結果の因果関係が不明確な場合が多くあります。

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それは原因が複数であり、さらに複合的である場合が多いからです。したがって、慢性的な不具合では、原因と考えられる全ての不具合(要因)を洗い出し、全ての不具合(要因)に対して、適切な対策を取ることが必要になるのです。

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