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動かしてなんぼ

プレゼンに「きれいに話す」ことを求める人がいますが、それはそれとして有意義ではあっても、本来のプレゼンの目的には関係しません。いわば、自己満足の類でしかないからです。ただ、余韻に浸っていたいだけなのです。

別に悪いことではありませんが、それを目的とするのはいささかズレてきます。プレゼンの目的は「きれいに話して余韻に浸ること」ではなく、常に

 「伝えたいことを伝え、伝わるべき情報が伝わること」

そしてその結果として

 「相手を動かすこと」

です。

プレゼンというと、資料を作っ、人前で何かを話す、その局面だけを切り取って語られることが多いかもしれません。しかしそうやって人前で何かを伝えるのはただのコミュニケーション手段の1つでしかありません。

あくまでもゴール…すなわち目標は

 何かしらの形で「相手を動かす」

ことです。いくらきれいに資料が作れたとしても、いくら流暢に話ができたとしても、その結果褒められたとしても、相手が動いてくれなければまったく意味がありません。

なぜプレゼンをするのか?

現時点で、相手が「自分が望むゴール」にいないからです。
とにかくゴールに相手を動かしていく…それが求められているからです。

だから「動かしてなんぼ」「次のタスクにつなげてなんぼ」なのです。

そう考えると、たとえばプレゼンにいたる前の根回しとか、そもそも席配置をどうするかとか、直前の軽い挨拶、その後のフォローなど、前後のアクションとどうつなげるかとか、様々な点についてもトータルで設計していくことが大事だということがよくわかります。

とにかく「相手が動くために、できることすべてをやりきる」ことです。やれることは全部やる…くらいのつもりで努力しないと、たった1つでも欠けていたら相手は動いてくれないかもしれないわけですからね。

それが結果として動いてくれるであろう相手への誠意というものです。そしてそれがしっかりできていれば、予定調和のようにイメージした通りに進行していくと思います。

たとえば、私は人前でプレゼンや説明をする時、始める前に可能な限り聞き手の人たちとコミュニケーションをとり、聞き手との距離を縮めておくということをよくやっています。それができない時は、聞き手の人々の癖や感情などをまた聞きでもいいから把握するように努めています。

そういう意味では、プロジェクトチームがトラブルを起こしてしまった場合に、お客さまのもとで説明や対策を提示しなければならない時…と言うのは、さほど困りません。なぜなら、その時のお客さまの心情はシンプルで

 ・怒っている、または困っている
 ・ゴールは「解決してほしい」
 ・条件は「期限以内に」「お金をかけずに」
 ・責任を押し付けられたくない
 ・納得できる形で終えてほしい

のいずれか、または組合せになるのは目に見えているからです。
相手がイメージできて、おおよそのゴールが見えているので、あとは

 ・社内のスケジュールやコストとの調整
 ・各メンバーのスキルと疲弊度の分析と労働力の再分配

だけ気を付ければ、技術的にはさほど難しい対応にはなりません。

上記条件を満たしたうえで

 「真因の特定」
 「解決策の検討」
 「影響範囲や類似観点の網羅」
そしてその「対応」

この手順に進めば、確実に解決できるからです。できなかったら、「どこかが不足している」か「どこかが誤っている」だけの話です。まぁ、そうならないようにするために、とことん論理的に、筋道を立てて、時には反証を行いながら、検討するわけですが。

また、上司に何か提案する際には、事前に可能な限り「こういう話をするんだ」という情報を細切れで投げ続け、"心の準備"をしてもらうようにしていました。

レビュー方式でいうところの、インスペクションと同じ手順(あらかじめ、内容について合意を得ておく)を踏んでいたのです。インスペクションと言うと、大仰なレビュー手法と捉え、大抵の人が面倒で、負担が大きいと言って敬遠しがちですが、正しい手順を踏んでおけば、すべてがスムーズに進む、優れたコミュニケーション方式の1つとなります。

また、私は自らが思う"完璧"などは一切求めません。

むしろ、あえてプレゼンに複数の「ツッコミどころ」を用意しておき、プレゼン後の質疑応答が活発になるように準備することさえあります。漠然と

 「何かありませんか?」

と聞いても、藪蛇になる可能性があって、自分に自信のない人からは意見が出てきません。しかし、あえてツッコミどころを用意しておくことで、指摘する側の立場に立たせてあげると、流暢に話し出す人と言うのは案外多いものです。

そうやって主体的に参画している意識を植え付けることで、相手にとって動きやすいまたは動かなければならない環境を用意するのです。逆にいえば、プレゼンの本番その場だけで相手が動かなかったとしても、まだチャンスはあるということになります。

終了後に手を変え品を変え色々なことを行なって、最終的に相手が動けば、それでゴールは達成です。あえて完璧なプレゼンなんてものにこだわらず、

 「動かしてなんぼ。相手が動くためにできることすべてをやりきる」

そんな意識を持って臨んでみると、思った以上に周囲は動いてくれるようになるのではないでしょうか。


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